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45.5. 他種族のお客様

時は第150回収穫祭が開催される一週間前である。

収穫祭まであと一週間という所であった。

街へ出かければところどころに装飾が施されていた。


人々もどこか浮き足立っていた。

舞台で演奏するのであろう楽器を練習している人も多かった。

街は少々吹かれモードへと移行していた。

・・・その頃に遡る。


この収穫祭に参加するべくこの地域出身であり

地方に散らばっていった者たちが

帰ってくる時期でもある。


小羽屋はサムエルが代行している

事前予約のシステムは人間のお客様が中心であり

そしてやはり、ここは人間の領土中なので

飛び込みのお客様にも人間のお客様が多い。


しかし、この時期は別である様だ。

エルフ、ドワーフ、トロル・・・

しかも飛び込みのお客様がとても多かった。


一応、この世界には多人種共通語というものが存在していて

少なくとも、光の民・・・

多数派の種族で構成される同盟をそう呼ぶが

多種族連盟に所属している種族であれば話せるものと

ユーリは思っていた。


その常識の反証が目の前に現れてしまった。


「★→∞◎≠∵◇≡?」

「お客様・・・共通語はお話しになれませんか?」


「⟁⩚∂⧖⇶☍∡、★→∞◎≠∵◇≡?」


かなり、怒っている様に見える。


実は、ユーリは多少ドワーフ語も心得があった。

しかし、何にも聞き取れない。

ギリギリ最初の「2泊したい、いくら?」

は聞き取れたのに、その後からは

ユーリの知識の何にも引っかからない言語が

このドワーフのご夫婦から発されていた。

・・・ユーリは絶望していた。


そこへ現れる救世主。

明るい女性の声が聞こえる。


「あ、ドワーフのお客様だ!

コンニチハ!」


奥から荷物を運び入れるザイカが声をかけてきた。

その“こんにちは”は

ユーリも知っているドワーフ語であった。


「⌘※⟁⇝✶╱⇪!⟁⩚∂⧖⇶☍∡!★→∞◎≠∵◇≡?」


そのドワーフのお客様は、ザイカがドワーフであると認めると

一層ペラペラと喋り始める。


ユーリはザイカの方を不安そうに見ると

意外にもザイカは、うんうん、と頷いている。


「あー・・・ユーリ・・・支配人?

こちらのお客様、朝食は何時から何時の間かと聞いています。」


ユーリは、その程度のドワーフ語なら聞き取れるはずである。

しかし、このドワーフのお客様からは

全くその1パーセントも聞き取れなかった。

諸々納得はいかないが

兎に角お客様の疑問に答えるのが最優先だ。

この救世主の力を頼ることにした。


「ザイカ、通訳をお願いします。」


ここからはザイカの通訳の元、円滑に言葉が通じ

最終的にドワーフご夫婦お客様は

無事にニコニコとお部屋に向かわれた。


ユーリとザイカはやはりニコニコとそれを見送った。

その夫婦が見えなくなると

ザイカはやっとネタバラシしをてくれた。


「あの人たち、すんごい南部訛りだった・・・!

ちょっと高齢の夫婦だし。

私はギリギリ南部出身だから知ってたけど

同じドワーフでもわかんないよ、あれは。」


宿泊台帳にはお客様情報を書いていただいている。

改めてそれを確認する。

文字はギリギリ読めた。

南部ドロレーヌ山自治区・鍛冶屋・ベルリ(430歳)、シレロ(399歳)


ザイカも一緒に顧客情報を眺めながら続ける。

「しかもドロレーヌ山自治区の訛りって

ちょっと強いっていうか

喧嘩してる様に聞こえるで有名でもある。

独特の言い回しもあるし。

ユーリも驚いたと思うけど

あれ怒ってないよ、普通だからね。」


所違えば文化も違う・・・

散々多種族交流で味わってきたがまだまだ知らないことばかりだ。

ユーリはまた新たな発見に好奇心が湧き起こるのを感じた。


またザイカの存在のありがたさを思い知ったユーリは

また改めて

いかにさりげなく、ザイカにも負担にならない様な

引き留め文句を考え始めた。


・・・


日は変わって収穫祭が終わった日の翌日である。

収穫祭目当てのお客様は本日一斉に

チェックアウトされた。


その日は幸か不幸か、チェックインがほとんど無く

ユーリも小休止、といった具合であった。


しかし、午後3時を回っても

ヒーロの清掃が完了していない様子であった。


以前の実験の結果と、ヒーロの聴取によれば

チェックアウトからチェックインの4時間で

10室の清掃が可能ということであったし

実際清掃が遅れたことは

今までに無かった。


普段はあまり邪魔をしてはならぬと思い

清掃の様子を覗いたりしないのだが

まだゴソゴソ音のする客室をノックしてみたのである。


「ヒーロ、お疲れ様。

お掃除・・・終わらないの?」


“手伝う”が地雷ワードかどうかわからなかったが

なんとなく避けた方が良い気がして

あえて言わなかった。


「申し訳ありません、ユーリ。

ちょうど良いので、これを見て欲しいのですわ。」


客室の中からそう聞こえてきた。

ユーリは扉を開けると

大方、掃除が終わっている様に見えたが


部屋から惣菜の匂いがすることに気づく。

そして床には大量の木箱が置いてある。


木箱の中には大量の酒瓶、そして生ごみが

入り混じった状態になっていた。


「うわ・・・なにこれ。

ここで飲んで食べてたってことかな?」


ヒーロは小さく頷く。

「ここの今の産廃業者様は

引き取ってくださらないと思いますわ。」


小羽屋のゴミは、イーシュトラインにある産業廃棄物業者に

回収を委託している。


週に2回の回収があるのだが

多少分別が必要で

このゴミはヒーロの言う通り

回収してくれる気がしなかった。


「ヒーロ、このゴミは私が分別するよ。」


流石にユーリが引き取ることにした。

一旦ゴミを全て庭に出して

瓶を、魔法を用いながら洗う。


ハチも様子を見にきてくれた。

ユーリは文字通りの猫の手を期待したが

一緒にやってくれる気配も無く


クワッと大欠伸をしたかと思うと

日向で居眠りを始めてしまった。

猫は気まぐれなので仕方がない。


ここのお客様は確か王都の方だった。

ユーリも王都暮らしが長かったので

これが何故起こったのか理由は分かる。


王都のゴミ処理施設は

それはそれは大きく

人員もたくさんいるので

何でもかんでも

まとめて捨てることができるのだ。


対してリトルウイングの様な

田舎の人口が少ない地域は

ゴミ処理施設が小さく

小規模運営のため

捨てる側が、ある程度

分別する必要がある。


時々分別を失敗すると

ゴミは容赦無く置いていかれる。


「こんなところでも地方格差を痛感するとは・・・」


もちろん、産業廃棄物費用は

王都より高いお金を払っている。

インフラのせいとはいえ、納得がいかない。

今度、イーシュトライン侯爵に

進言できる機会がないものかと思いつく。


思えば、人間でも住んでいるところで

全く生活習慣が異なる。

ましてや、他種族間の交流はもっと難しい。


今はそう多くないが

やがて他種族間のお客様が増えることがあるとすれば

もっと、カオスなことになるはずだ。


ユーリはぐるぐると思考をめぐらせていた














挿絵(By みてみん)





挿絵(By みてみん)

ヒーロキャラデザ

AIさんと一緒に考えました。

個人的に最推しのキャラです。


ケットシーハチのキャラデザ。

実家の猫がモデル。

流石に八時半と言う名前ではありませんがw

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