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36. 本格結成

「イーシュトライン観光組合(ギルド)本格結成するよ。」


サムエルが突然、転移鏡の向こうから話しかけてきた。

もう直ぐチェックインの時間であったため

ユーリとてて手が離せず

サムエルももう直ぐどこかへ出発するとかで

転移の鏡越しの立ち話となってしまった。


「やっぱり、例のゴブリン合宿の提携宿屋は

一社独占て訳にはいかないから

せめて公平に選んだってポーズが必要らしいよ。

それで、イーシュトライン観光組合(ギルド)を結成して

特に、最初はリトルウィングの宿屋を一斉に集めようって寸法らしい。」


・・・役所仕事とは実にめんどくさく

こう言う組織を作るのがほんと好きだよなと

ユーリは複雑な思いでいた。


「だから、この第一回会合は来週行われるんだけど

僕が代理で出て良いかな?

良い様に話は進めるから。」


「急な話ですね、それ人集まるんですか?」

来週なんて手紙のやり取りだけで終わってしまいそうだ。


「それが狙いじゃないか。」

サムエルはニヤッとする。


「追々人を集めれば良いのさ、こう言うのは。

今回は小羽屋はなんとしてでも参加しなきゃならないから

僕に任せてくれない?」


どちらにしろユーリが行って

できることなど何も無い。

お願いできるなら是非ともお願いしたい。



・・・・


記念すべきイーシュトライン観光組合(ギルド)

第一回会合が終わったサムエルが

転移の鏡から出てきた。

時刻は夜の11時である。


「大変だったよ、ファインツ会長も人はいいけど

流されやすいからさ!!」


サムエルはイライラしていた。


「あのアーバンウィングインとかいう宿屋のオーナーが

ファインツ会長の幼馴染だとかで、しゃしゃってた。

小羽屋なんかに対応できるか、みたいな事言ってきたんだよ。

お宅の宿屋ゴブリンが侵入したみたいじゃ無いですか

合宿には良いイベントですね。

って言ってやった!!

そしたら黙っちゃってたけどね。」


バカにした様に笑うと

もう今日は飲みたい!と行って

スパークリングワインを開け始めた。

ユーリも飲めば?と勧めてくる。


キュポンッと言うコルクが開く良い音が

控え室に響く。


「確かに、ゴブリン退治合宿はゴブリンが出る宿って。

良いイベントになるかも知れませんね。」


ユーリはフッと笑いが込み上げてきた。


「笑い事じゃないよ?

流石に安全性が低い宿には泊まらせられないよ。

だって、お育ちの良い人たちの魔法学校とか、軍隊訓練とか

そう言う人たちを狙った招致なんだからさ。

後に小羽屋のお客様になりそうな、ね。

暗殺者を招致したいわけじゃ無いんだから!」


サムエルはイーシュトラインで買ってきたと言う

バケットサンドイッチを開け始める。

ユーリの分も買ってきてくれていた。

生ハムとカマンベールチーズが入っている。


ユーリは久しぶりにお店の物を食べた気がした。


「公正な選考の上

"リトルウイング村ゴブリン討伐訓練合宿

~冒険者育成プロジェクト~"の公式提携宿に決まったのは

小羽屋、アーバンウィングイン、あと、ルミナス高原牧場の3つです。

リトルウィング村長の友達とか言ってた・・・

なんて名前だっけあの爺さん。

やっぱり20人キャパくらいの宿屋らしいよ。

牧場兼宿屋、知り合いでしょ?」


ユーリはよく知っていた。

フェリクス・キングストンお爺さん。

ルミナス高原牧場の主こそが

高速馬車のアリーナを譲ってくれて

ハチを治療してくれた

家畜農家のお爺さんであった。


「いくつかの安全基準と

合宿期間中は食事三食提供可能ってことで決まってたけど

ユーリもその期間はちょっと頑張る必要あるけどね

まあ、あのアーバンウィングインがどうやって

オペレーションするのかが見ものだね。」


ユーリとてこれはついこの間までやっていた事なので

短期間ならいける気はした。


「ついでにこれ、提案してきたよ。」

紙をぺらっと出してきた。


それはユーリがいつか

観光ギルドができたら、張り紙に人々の感想を貼り付けて

お客様が他の宿泊客の忌憚のない感想を見ながら

宿選びができるといものを説明した時の紙と付箋であった。


「もちろんうちの支配人の発案ですって言って来たから安心してね。

アーバンウィングインのオーナーとか

その他のいくつかはなんかギャーギャー言ってたけど。

牧場の爺さんはかなり乗り気だったよ。

”イーシュトライン宿屋番付か”って、感心してた。

ユーリのことも、“あの子は視点が違うな”って褒めてたよ。

あの爺さんは話のわかりそうな人だね。

これもそのうち採用されるんじゃないかな。」


ユーリも何度会ってもあのフェリクス爺ちゃんは

只者ではない雰囲気がある。

サムエルも同じ見立てであった。


サムエルはスパークリングワインをグッと仰いだ。

ユーリも飲んでみた。

今日のはワインのボトルを見るに

やはり自分の普段飲んでいるものよりも

数段高級品であった。


「しかもその後、アーバンリトルウィングインのオーナーが

急に俺におべんちゃら使ってきてさ。

この間は小羽屋さんには

ゴブリン退治までしていただいてありがとうございます〜

なんて言ってきて

しかも色々聞き出そうとしてきてさ。」


ユーリの眉がピクッと動いた。

サムエルはそれに気がついて付け足す。


「もちろん、当たり障りないことしか話してないけどね。

例え、話したとしても、理屈がついてこないと

本当の意味で真似なんて出来ないよ。

特にあのタイプの奴には無理無理。

お礼とお詫びなら支配人に直接言えって

言って来たからね。」


サムエルはグーっとスパークリングワインを飲んだ。

どことなく目がトロンとしている。

眠くなっているのでは無いか。

サムエルは多忙な自分の仕事もこなして

疲れているだろうに

小羽屋の事もやってくれているのだ。

ユーリはそこはかとなく感謝の気持ちが湧いてくる。


「あの、本当にありがとうございました。

今日のところは遅いですし

お休みになられては?

お疲れみたいですし・・・」


今度はサムエルがピクッとした。


「疲れてないって!

そうそう、これ!朝食のお粥につけ合わせるの

これピクルスが美味しいんじゃないかと思って

買って来たんだよ!

なんとかウリとかいうの酢漬けで美味しいんだよ。

厨房で実験するよ!」


元気よく、ピクルスの瓶と

スパークリングワインを持って厨房に向かってしまった。


よく思い出せ無いのだが

以前もこんなことがあった様な気がしてきた。


"疲れてる"と言う言葉が

サムエルは嫌いなのだろう。

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