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23. ユーリ、王都へ

ここ1ヶ月、サムエル自身は勿論来ていないし

あれほど煩いくらいに届いていた手紙も

この1週間、1通も届いていない事に

ユーリは気がついた。


忙しい人なので仕方がない。

そんなことは分かる。

しかし、あれ程の頻度で届いていた手紙が

イーリスが来るタイミングで

パタと、止まった。


イーリスには怒っている。


しかし、サムエルの方も

やましい気持ちがあるから

こうして連絡もしてこないのでは?


イーリスに期待させて

上手く利用しているのでは?


それを踏まえると色々

ユーリにも上手く表現ができないのだが

舞踏家の弟子達の態度には納得できる気がする。


そんな者達をここに送って来るなんて・・・


不意に、書類棚の中からサムエルの声がした。

気のせいではない、はっきり聞こえる。

声のする引き出しを開けると

魔法契約書が出てきた。


“甲は、乙に定期的な報告義務を負う!

売り上げ、仕入れ状況などの開示請求があれば

直ちにこれを実行する!“


“はい。“


“言っておくけど君、連絡不精そうだもの!“


“・・・分かりました。気をつけます。“



契約書の文言が聞こえてきたのである。

文言は赤く光っていた。


そうか、いつもサムエルに

返信する形でしか手紙を送らないから・・・


私から報告をし損ねていたんだ。

契約が実行されていないから

契約書がアラームを発したのだな。


しかし、今回の件はユーリも上手く

文章にできる自信がなかった。

正直のところ、契約を後悔するレベルで

サムエルに穿った感情を向けている自分がいた・・・


“甲乙は、本契約に定めの有る無いに関わらず、

業務について問題が生じた際、

まずは、真摯な協議の基

これを解決する義務を双方が負う”


“君言葉足らずそうだもの!”


“・・・はい。承知しました。”


今度はこれが読み上げられ

文言は赤く光っている。


そうだ、考えてみれば

ユーリは、サムエルに借金を返済する義務がある。

サムエルは、借金を肩代わりしてくれたとはいえ

この宿を発展させる義務を負っているのだ。


この感情に振り回されないで

一度この問題を共有しなければならない。


契約書の言うとおりだ。

・・・と言うのも少々おかしいが。


ユーリは、考えを改めることにした。


悩んだ末

サムエルが置いていった転移の巻物を

自分から発動させることにした。


転移の巻物を発動させるには

転移先の媒体の個体識別呪文と

暗証呪文の様なものが必要だ。

それを提携の発動魔法に組み合わせて詠唱する。


場所は、人間王国王都にあると言う

サムエルの自宅と繋がっていると聞いた。


・・・会えなければメモでもおいて来よう。


と言う覚悟で、転移の巻物を発動させた。

ユーリの周りに魔法陣が現れる。

そして浮遊感にも似た気持ち悪さが

胃の奥から込み上げてくる。

転移術特有のこの気持ち悪さがユーリは苦手であった。


出てきた先は

丸いテーブルと椅子が置いてあるだけの小さな部屋である。

テーブルの上には卓上カレンダー、時計、メモ帳とペン。


そして、アーチ状の掃き出し窓と、普通の扉が一つ。

この部屋に入ってきたところを振り返ると

ユーリはどうやら転移の鏡を通ってきた様だった。


しかも転移の姿見鏡である。


これはかなり高価なもの、と言うより

ユーリも滅多に見たことがない。

大手魔法道具店時代商品として扱ったとがあったが

これ一枚手に入れるのに、小羽屋の借金を全額返済した上

しばらく遊んで暮らせるくらいの金銭が飛ぶ。

やはりサムエルがえらくお金持ちだと言うことを確信する。


掃き出し窓の外を見ると

ここは半年ほど前までユーリが暮らしていた景色に近かった。

やはり王都なのであろう。

ただし、特徴的な建物が一つも無い。

住宅街である様だ。

しかも1階。場所を特定できない景色である。


この窓も、唯一の扉も魔法で鍵がかかっている。


ここは、サムエルの家の所謂ウェイティングルームのようなところ

なのでは無いかとユーリは考えた。

差し詰めあの転移の鏡は呼び鈴か。・・・高い呼び鈴だな。


少々冷静になり、この転移が無駄足になったことを悟る。

メモ書くか・・・

と考えだした矢先。


扉がガチャっと開いた。


サムエルのご登場であった。


サムエルは少々驚いた顔をしていた。

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