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21. 真夜中のクッキング

ユーリは、ハッと目覚めた。

朝食の準備!?お客様に手紙送ったっけ?


慌てて時計を見ると

いつも起きている時間の

未だ30分前であった。

少々ホッとする。


逆に言えばあと30分もすればまた宿でお仕事だ。


これを今まではエミルと分担できていたから

まだ休める日もあったのだが


これからのことを考えねばならない。

人材は募集するとして・・・


朝から様々な思考が巡っていた。


幸いもう少しでここ周辺は雨季に入る。

そうすると観光のお客様は一気にいなくなる

考える暇ができるだろう。

・・・幸いではないな。


ごちゃごちゃと思考が止まらないままに

30分が経過した。


ユーリはお客様の朝食準備に入る。


その前に体力回復ポーションをグッと飲み干す。

体には良くないとわかってはいたが

眠気と戦うにはこれが一番であった。


しばらくすると、サムエルが食堂に入ってくる。

サムエルも疲れているだろうに随分と早起きだ。


「それで、人手はどうする?」


挨拶もそこそこに話し始める。

サムエルの目の下に

クマがあるのが気になった。


「私はまずはヒーロと一緒にやっていきたいです。

ここを20年以上も支えてくれているので

うまく付き合うことができると思うのです。

それに今ヒーロにまで辞められたら・・・」


本格的に誰もいなくなってしまう。


サムエルはごちゃごちゃと

今はやむを得ないか・・・

などと言っていた。


「食堂運営は?いっそ休業にしちゃえば?」


「ここ周辺は飲食店が少ないため

ここに来たお客様がご飯食べられないですよ。

ゴンゴルドインパクトの時にできた新規の飲食店も

ショック後は

あっという間に撤退してしまいましたし。

それだけでリトルウイングに来てくれなくなさそうです。」


実際朝食は特に

他の宿泊施設に泊まっている観光客も来るくらいだ。


「でも、ユーリ、君

こんな早起きして、夜も遅いし絶対体に悪いよ。

何より君は本来

宿屋のオペレーションに入るべきじゃないんだ。

マネージメントをする必要があるんだから。」


サムエルの言うことには耳が痛い。

実際の手作業に気を取られ

肝心の仕組みづくりが疎かになっているのを感じている。


「一度システムを作っちゃえば楽だし

僕は食堂一旦、休むべきだと思うけど。」


一人分の朝食ができたのでサムエルに出す。

今日のメニューは、オムレツ、ハム、トースト、トマトのサラダ

自家製プリンであった。


「豪華だよね、これ王都なら2500マルくらい取れるからね。」


ユーリは料理人じゃないんだから!

と言いつつ美味しそうに食べている。


「やはりサービス業ですし、ここはお客様に評判の良いオペレーションを・・・」


「その他が疎かになっても?」


ユーリは黙る。


「近い将来必ず無理が来て、何か起きるよ。

宿の基本て、信用、安全、衛生、だからさ。

食事に気を取られてこれがおざなりになったら

終わりだよ。」


ご最もすぎてユーリは何も言えなかった。

サムエルは「美味しいんだけどね」

と言いながらデザートのプリンを食べている。


「無料でついてくるものなら

もう少し簡素なものでもいい気がする。

ピザ一枚と紅茶とかでもいいと思うんだ。」


巷には

今夜の夕食は簡単にシチューで良いよ!

と宣う旦那様を責める傾向がある。


シチューを作るのがどれだけめんどくさいか。

誰が材料を調達する?その鍋や皿は誰が洗う?


ユーリもそれには納得してしまうのだが


その論点を呼び起こす前に


このサムエルの発言は的を射ているとユーリは思ってしまった。

ピザは楽な料理であるのだ。


生地を作って具を乗せたところで

氷結魔法をかける。

それを冷凍の棚に入れれば、保存が可能なのである。

そしてその凍ったピザを窯に入れるだけで

熱々のピザが出来上がる。


サムエルはこの間一緒に料理した時

大容量の冷凍冷蔵機能付き食品棚(パントリー)(自動温度調節機能付)を

ひとしきり見ていたので

氷結保存しているピザを見て思いついたのだろう。


・・・ユーリはある意味での感動を覚えつつも


根本的な問題が一つ。


「朝からピザって、大丈夫ですかね?」


「なんか朝食っぽいピザ作ればいいじゃん。

僕も考えとくよ。

でもこう言うのはユーリの方が得意でしょ。」


と言ってオムレツを食べる。


「オムレツとかは美味しいけどさ。

楽に作れるってことは

他の人でもできるてことだから

君は誰かに任せるハードルが

一気に下がるだろ?」


現実にユーリは

朝食準備のために

料理上手な人を探さなければならならない。

と考えていた。


小羽屋の厨房には大きなピザ窯がある。

ドワーフ製最新式のもので容量も大きい。

ボタン操作で

魔力がなくても簡単に自動で温度調節が可能なのである。

基本的にピザ以外のものでも

なんでも火を通すことが可能だ。

活用できるのであれば活用したい。


この氷結ピザとピザ窯さえあれば

最初の仕組みさえ作って仕舞えば

簡単そうである。


「その方向でメニュー開発してみます。」


「僕は、明日の馬車で帰るよ。

今日はこれからリトルウイングの村長と

例のゴブリン討伐合宿について話してくるから

その後、早速今夜メニュー開発ね。」


サムエルの提案である。


思い立ったらすぐ行動がサムエルのモットーであるらしい。

素晴らしいことだが

ユーリはここ最近ほとんど眠れていなかった。

しかしそれは、断る理由にはならない。

問答無用であった。


・・・・

その晩サムエルは思ったより遅く帰ってきた。

時間は夜の11時。

話に聞くと、村長とイーシュトラインに行き

ファインツ会長、TMクリーンズの社長

イーシュトライン侯爵側近と話をつけてきたと言うのである。


「提携宿屋ってことで、

小羽屋もゴリ押してきたから!

昨年できた、アーバンインリトルウイング?

とかいう宿屋も手を上げてきたらしいんだよね。

最初は小羽屋の独占で!

ってのをゴリ押しした。

多分大丈夫じゃないかな。」


「イーシュトライン侯爵側近と、ファインツ会長に

今度エルフ王主催の他人種交流パーティ連れてく約束したから。

アーバンリトルウイングイン?の経営者って

古いリトルウイングの住民らしいけど

ただのこの地主ってだけだったよ。」


・・・ものすごいバーターを目の前にし感心する。

サムエルはこのように物事を進めるのか。


「ありがとうございます。本当に心強いです。」


今のサムエルの話を聞いてからでは

これからの朝食のメニュー開発など

とんでもなく些細なことに思えてきた。

そんな話題をこれから始めて良いものか。


「メニュー案できてる?」

サムエルから切り出された。


「はい、連泊の方のために、味は一週間分変えます。」


・トマト、バジル、チーズ

・チーズ3種類

・チーズ&ソーセージ

・ルミナストラウト、アスパラガス、チーズ

・ゆで卵、マヨネーズ、ベーコン

・ほうれん草、リーブラックオイスター、ホワイトソース

・トマトソース、ニンニク、オリーブ、バジル

・野菜 (ズッキーニ、パプリカ、ナス、玉ねぎ、オリーブオイル)

・キノコ三種


「・・・ほぼチーズとトマトなんですよね。

それ以外のものを考えるのに苦労しました。」


「なんで?チーズ嫌いな奴なんているの?」


「・・・いるでしょ。」

サムエルはチーズが好きなのだ。


「7日間朝にチーズ食べさせられまくったら

それこそチーズ嫌いになりますって。」


「でも野菜とキノコだけじゃ

ちょっとテンションあがんないよ。」


うーん・・・と、2人して頭を悩ませる。


「そもそもなんでピザだけなんだ?

他のものを氷結して、窯に入れたらだめ?」

サムエルが根本的なことに気がつく。


「そうですね、だめなものと、大丈夫なものとあります。

私の力量もありますが、氷結させたものに火を入れると

水が出てダメになる食材があります。

風化魔法を使わないと・・・」


ユーリは今朝の朝食を思い出す。


「たとえば今日のオムレツはだめです。

火の入れ具合が難しいですし

そもそもワンプレートで成り立つものじゃないと

意味がないですよね。」


うんうん、そうだよね。とサムエル。


「キノコと野菜だけじゃないやつ、試してみたい。作りながら考えよ。」


と言うことなので調理に入る。


時間はすでに午後11時30分

真夜中のクッキングである。

そもそも食欲など毛頭無いのだが

メニュー開発なのでやむをえない。


「空腹じゃないから客観的に判断できるはず!」

などとサムエルは言っている。


それぞれ試した結果、

・トマト、バジル、チーズ

・ルミナストラウト、アスパラガス、チーズ

・ほうれん草、リーブラックオイスター、ホワイトソース

・トマトソース、ニンニク、オリーブ、バジル


採用されたのはこの4つであった。

結局チーズ縛りからそうそう抜け出せないことがよくわかる。

ピザとはそれで完成された食べ物であったのだ。


そして、ミニピザであれば重すぎない

と言う意見で合致した。


残り3日分をどうするか・・・

それはまた別の機会に開発するとして

今回はこれで見切り発車をすることになったのだ。


おそらく二人とも眠気が限界であった。

いい加減に解散しよう、と言うことになった。


この時点で夜の2時、満点の天の川が見えた。


星が必要以上に綺麗であった。

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