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13. 魔法契約と儀式

「僕、宿屋をやってみたかったんだ!」


サムエルは今度は無邪気な笑顔を見せた。


ユーリはサムエルの様には行かなかった。

気になってしまうことがあった。


「あの、すみません、やはり、口約束というのは私も気になります。

借金の返済については

どうか、契約書を作ってくれませんか。」


ユーリは、本心でそう言う。

中には、そこを曖昧にしといて

ラッキーと思う不届き者もいるかもしれないが

こう言う曖昧な約束こそ、足元を掬われることが多い・・・

と言うのは、亡くなったゴルムお爺ちゃんの教えであった。


「だって、これ何契約なの?特に僕がこの宿の経営に尽力しますなんて・・・契約書に書けないよね?」


と言うので、ここはユーリにも一つ提案があった。


では、魔法契約書作りましょう。

紙とペンを持ち出し、書き出した。


「魔法契約ぅ?」

と、サムエルは気に入らない様子であった。


しかし、ユーリにしてみたら一番手っ取り早い。

両方が魔法を使えるなら、細かい文の書式や、役所の承認もいらない。

魔法による儀式を用いた契約だ。

約束を違えれば、強制的に実行される様魔法が発動するし

裁判の時に正式な証拠としても使える。

魔法学校のゼミナールで習ったことだ。


少々お待ちください、と言って

ユーリは今回の契約に関する必要事項を書き出す。


イーシュトライン銀行返済分、親戚周りへの借金は

想像よりも高額で、その金額を紙に書いて

ユーリは、本当に良いのか・・・という視線を改めてサムエルに送った。


「良いから!」


と、とうのご本人はめんどくさそうに作業を促した。


・・・この額をその一言で済ませられるなんて

この方はどんだけ金持ちなのだ。


ひとまず気を取り直して作業を続ける。

魔法契約の儀式というのはざっとこんな流れである。


1. 魔法陣を描く。


2. 契約当事者が手を取り合い魔法陣の中央に立つ。


3. 足元の所定の位置に、白紙を2枚置く。


4. 2人で交互に,魔法陣発動の詠唱。


5. 魔法陣が発動したら。内容を読み上げ合う。


6. 最後、お互いのフルネームと、本日の日付時間を言い合い終了を告げる。



そしてユーリは必要な魔法陣をスラスラと書いていく。

契約魔法の魔防陣の書き方は

それぞれの国や種族の文化によって異なると聞くが

契約の一つに、四大陸他種族合同裁判所に従うと加えることで

お互い、その連盟に加入している種族であれば

何か問題が起きた時にその裁判所に判断が委ねられるのである。


四大陸他種族合同裁判所とは

この世にある大陸4つと、多種族この裁判所連盟に加盟している種族

人間、エルフ、ドワーフ、一部のトロル、一部の獣人、一部のゴブリン

その他一部の妖精達であるが

それらで構成された裁判所である。

他種族間の取引は、これを出さねば話にならない・・・

と、魔法道具店(元バイト先)の先輩からの受け売りであった。


「これを人間の王国の法律に従うとか、エルフ王国の法律に従うとかにすると厄介なんだ。」


と、先輩は言っていた。


商取引系は特に、お互いその国の法律に従う義務が

ある様な無い様な曖昧な状態なので

細かいところで争いになってしまうらしい。


「魔法陣なんてよく書けるね。」

サムエルは感心した様にも、少々呆れた様にも取れる言い方をする。


ユーリは魔法陣を描くのが好きだった。

学校では、魔法陣研究ゼミナールに入っていたのである。

複雑に見える魔法陣も

コツを掴めば少し文字や形を変えるだけで

相応な魔法陣を描くことができる。


定型的な魔法陣はあえて書かなくても

それ自体を魔法で出現させることも可能だったりする。


ユーリは契約魔法の魔法陣を完成させた。


「それでは、真ん中に立ってください。まずは私の言葉を復唱してくださいね。」


2人は向かい合う形で手を繋ぎ、魔法陣に立つ。


ユーリは詠唱を始める。


「秩序を司どりし, テミスとホーラーよ、汝ら立会いの元、我らここに盟約を交わさんとす。」

「秩序を司どりし, テミスとホーラーよ、汝ら立会いの元、我らここに盟約を交わさんとす。」


「コスモティア・コントラクト」

「コスモティア・コントラクト」


魔法陣にはみるみると光が満ちた。


「はい、これで、契約の内容を復唱していきましょう。

サムエルは良ければハイで

何か思いついたら付け加えていってください。」


ユーリは先ほどのメモを読み上げていく。

契約に相応しい文言というものが一応存在するので

丁寧に契約内容を唱えていく。


「現住所 人間王国領イーシュトラン侯爵領地リトル・ウイング村字リトル・ウイングxx-x ユーリエ・ローワン 以下"甲"と呼ぶ。 と、現住所 ...現住所は?」


「アラミンドル国領, 城下川上, ノル・カシリオン」


「はい、すみません。 現住所アラミンドル国領, 城下川上, ノル・カシリオン, サムエル・ロビンズ・ラウレヘン・ノル・カシリオン, 以下"乙"と呼ぶ とが宿屋 小羽屋 所在地人間領王国イーシュトラン侯爵領地リトル・ウイング村字リトル・ウイングxx-x の運営に関して、結ぶ契約である。」


「ハイ」


・乙は本日xxx年x月x日に、甲がイーシュトライン地方銀行に借り入れていた金7,800,000マルを小切手にて返済する。


「ハイ」


・甲は乙に対して金15,000,000マルを分割にて返済する義務を負う


「ハイ」


・甲は直ちに乙と金15,000,000マル金銭消費貸借契約を結ぶ、金利は・・・


「待って、金利つけたら意味がないじゃないか。僕の言ってること、理解してくれてる?」


後、小難しすぎてヤダ・・・と言う声も聞こえて来た気がしたがそちらは無視した。


「金利を付けないと、法律的に、贈与扱いになってしまいます。」


一般的な人間国の知識であった。

ユーリは親族の借金の存在を知った時に

調べたのである。


「ごめんなさい、あなたにとっては不本意かもしれませんが

人間の法律に従えば、私が、税金を余分に払わねばならなくなります。

その分、私がサムエルに払えるのならいいのですが・・・」


省ける物なら、省きたい。

と言うのがユーリの気持ちであった。


サムエルは、拍子を抜かれた顔で、はは!知らなかった!と言いながら


「まあ、税金を国が役立ててくれてもいいけど。

わかった。その代わり、きちんと仕事するさ。」

と、素直に笑ってくれた。


サムエルのこだわりで、月々の返済額は、売上歩合ということにしてくれた。


いくつかの条項を読み上げた後、サムエルの義務を詠唱するターンになる。。


サムエルが言う

「乙は小羽屋の売り上げ向上、永きに渡る繁栄に尽力する。」


ユーリは少し考えて・・・

「すみません、そこ、乙は小羽屋の売り上げ向上、永きに渡る繁栄、

"実務的な運営"に尽力する。にしても?」


サムエルはあたりまえだ!と少々怒った。

こう思ってくれることは、何よりも嬉しかった、が

ユーリにからしてみれば

何か、とても重要で

サムエルには欠けている要素な気がしてならなかった。


こうして、必要事項が言い連ねられる。

ユーリはここで少し思いついてしまったことがある。


「すみません、例えばサムエルが

ここで得たノウハウを他の宿で利用してしまったら

元も子もない気がするのですが・・・秘密保持の項目を加えても?」


ユーリは問う


サムエルは少々怒ったように言う

「僕がそんなことするわけないだろう!

いいよ、もうそれも入れよう!

なんかそれらしく付け加えなよ!」


「それでは、乙は甲の業務上で得た情報等は他機関に漏らさない。」


「はいよ!・・・て、僕それじゃここで会ったこと誰にも話せないじゃないか!」


「それでは、甲の同意があった場合はこの限りでない、

で、いかがです?商売敵とか、それに準じる方に話さなけれな良いですので。」


「・・・わかった。はい。」


大体の契約内容の復唱が終わった頃、またユーリは問題に気がついてしまう。


「サムエル、契約の更新ですが。」


「またそんな細かいこと・・・何さ。」


「一応一年更新で良いでしょうか?

何もなければ更新していくというタイプのもので。」

よくある契約の形式である。


「いいんじゃないの。」

サムエルはすでにこの儀式に飽きてきているのが分かる。


「では、契約更新の時期は1年、お互いに魔法契約の形式による中断の申し出がなければ、1年契約が続行される。」


「はい・・・あ、僕から付け加えたい!」


「はい、なんでしょうか。」


「甲は、乙に定期的な報告義務を負う!

売り上げ、仕入れ状況などの開示請求があれば

直ちにこれを実行する!」


「はい。」

当然のことである。


「言っておくけど君、連絡不精そうだもの!」


「・・・分かりました。気をつけます。」

心当たりはある。


「あとこれ!甲乙は、本契約に定めの有る無いに関わらず、

業務について問題が生じた際、まずは、真摯な協議の基、これを解決する義務を双方が負う。」


「君言葉足らずそうだもの!」

先程のお返しとばかり主張してくる。


しかし、たまに友人にも言われることだ。

気をつけよう。


「・・・はい。承知しました。」


「さあ、そろそろもう決めること無いんじゃない?」

サムエルはいい加減にして欲しそうな様子である。


ユーリも考えを巡らせ、もう無いというか

最後にサムエルが付け加えた文言を活用して話し合いをしよう・・・


「最後もう、何も無いとのことでしたら、締めますね。」


「はい!」


「双方の努力により問題が解決しない場合は

四大陸多種族合同裁判所を第一審の裁判所とする。」

これはとても重要な文言であった。


「はい!」


ユーリは時計の時間を確認し、契約の締めの詠唱に入る。


「以上、xx年x月x日 12時30分 甲、人間王国領イーシュトラン侯爵領地リトル・ウイング村字リトル・ウイングxx-x ユーリエ・ローワンは、これに同意する。」


お願いします、と目で、サムエルにも促す。


「xx年x月x日 12時30分 乙、現住所アラミンドル国領, 城下川上, ノル・カシリオン, サムエル・ロビンズ・ラウレヘン・ノル・カシリオンは、これに同意する。」


「クウェンヤ・コントラクト」

「クウェンヤ・コントラクト」


魔法陣がパアッと光輝き、足元に置いた紙が中に浮く。

そして、文字が勢いよく書かれていくのが見えた。


魔法陣の光が消えると、2人の手元にスッと降りてきた。


それを見ると、先ほど2人が交わしていた話の議事録の様なものが書かれている。


「はーっ、疲れた。結局は契約書結んだって

話し合いで解決するしか無いんだから

あんまり意味ないと思うけどね。」


サムエルは契約の儀式が好きではない様だった。


「ご協力いただいてありがとうございました、サムエル。

私も、祖母も安心できるはずです。」


サムエルは、若干機嫌の悪そうな顔で言う。


「こうなったからには、生半可な運営は許さないからね!

僕流にビシバシやるから!」


と言って、サクッと立ち上がった。


「あー、お腹すいた!ユーリ!何か折り詰めして!!」


「はい只今・・・!」


我ながら、召使のような動きであった。

ささっと厨房に戻り

適当に、川魚の揚げ物をさっと揚げた。

風化の魔法をかけ、揚げ物の粗熱を取るという所業まで・・・


そしてその辺の野菜と

作り置きのタルタルソースをのせ

ソフトパンに挟んで紙に包んだ。


どうぞっ!と、よこした頃は

自分でも俊足だと思っていたが


サムエルは遅い!と言って帰る準備満タンであった。


「それじゃ、イーシュトライン銀行に返済してきちゃうから

また今月中には来るからね。

何かあったらこの転移の巻物使って呼んで、何個か置いていく。」


と言い、バサバサと転移の巻物を何個か置き

パンを受け取ると


あっという間に一つの転移の巻物を発動させて

いなくなってしまった。


なんというか、サムエルは他の人より動きが2倍は早い。


そこへ、エミルが出勤してきた。

「君ら何してたの?」


その声を聞いて、

ユーリは初めて、ドッと疲れが押し寄せ

空腹で自分のお腹が鳴ってるのを感じた。

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