3. 騎士様御一行
サムエルは、ユーリをみんなに紹介するよ、と言って
ユーリの手を引っ張ってカウンターに連れて行く。
思わずユーリは手をパッと引っ込めた。
ユーリの非社交的な性格を差し引いても
少々失礼ではないのかと
ユーリは訝しんだ。
しかし、一応勇者様御一行か・・・
少々反省し
ユーリはにっこりとし言う。
表面上は、喜んでおくことにした。
「失礼しました、是非勇敢な騎士様御一行様にお目にかかりたいです。」
このキッチンの傍に山積みになっている食器類を片付けにかかりたい・・・
そんな思いが強かったのか
取り繕いすぎて、もはや慇懃無礼になってしまっていると
また反省した。
サムエルは自分の手が振り払われたことが
一瞬理解できなかったらしく
しばしポカンとしていたが
ユーリのその言葉を聞くと
「そう、おいで!」
と言って、今度はユーリに触れることなく
カウンターに誘った。
カウンター席の奥に数名の男女がいる。
それが今回の討伐の立役者一行である様だ。
「ほらほら、こちらが噂のフィオナの娘ユーリだよ!」
一向に声をかけると口々に
やあ、とか、この子なのね!とか言っている。
ユーリのことを知っている風であった。
フィヨナお婆ちゃんが喋っていたのだろう。
彼らと仲良くしていたことがよくわかる。
「何を隠そう、こちらは騎士アルト・ルーベン」
恭しくサムエルに紹介された騎士は
長身色白の人間で、爽やかな短いブロンドの髪
いかにも優男ヒーロー風の男であった。
お目にかかれて光栄です、とわざわざ席を立って握手をしてくれた。
長身で、スリムだが、筋肉質な体型、柔和な雰囲気を持っており
彼の笑顔は、恋愛体質とはあまり言えないユーリですら
グッとくるものがあった。
これは、真正イケメンだ・・・と思った矢先
周辺の女性冒険者達の雰囲気が一瞬ピリっと
した様に感じた。
気のせいであると思いたい。
「こいつは、魔法使い、クラウド・フィラデル
とある王族お抱え魔法使いさ。」
こちらも人間の男性、やはり優男風の雰囲気があったが
それでいて男らしく
どことなく頼り甲斐のありそうな中肉中背の体つき。
やあ、よろしく。と、こちらはにっこり余裕のある笑顔で手を振ってくれた。
王族お抱え魔法使い、となると実力はもちろんのこと
お生まれ、お育ちも超一級である。
「彼女は、神官、クロエ・ルブラン。
今は王立総合病院で神官長補佐だっけ?」
そうよ、よろしくね。と
こちらは薄茶色の長い髪が美しく
いかにも清楚な雰囲気なのに、漂う色気。
綺麗な人間の女性であった。
どことなく良い匂いがする・・・
ユーリもデレデレと照れる思いがしながら
初めましてと言っていた。
「そして、今回の作戦の要!!召喚士イーリス・サイモンズ!」
特別紹介された女性は、可愛らしい雰囲気の女性
プラチナブロンドの長いサラサラとしたストレートヘア
目鼻立ちのクッキリした顔に、長い耳
エルフであった。
彼女は明るくにっこり笑って、こんにちは、と言った。
「彼女が作戦の要だったんですね、具体的にどう言う・・・」
ユーリが口を開きかけると
「聞きたい!?今回の作戦のこと!?」
とサムエルは前のめりになって, ニンマリと、ユーリを見る。
ユーリは早速不用意な発言を後悔し始めた。