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2 サムエル・ロビンズ・ラウレヘン・ノル・カシリオン

もうこの荒くれ者達はほっといてお皿片付けよう・・・


ユーリがキッチンの方に近づこうとした時


唐突にユーリの視界に、サッと、音もなく人影が映った。


「やあ、君はユーリだね。」


その人影は、キッチンカウンターにふわっと座った。


身長は普通の男性にしては小柄であり

身のこなしの軽さを感じた。


褐色の肌、目は大きくも鋭く、美しい黄金色

ブロンドとも茶色とも取れる不思議な色の長い髪は

大きな三つ編みにしている。

そして、長く尖った耳。

エルフであった。


そして冒険者にしては、ヒラヒラと派手な服装をしている。


・・・そこ座るところじゃ無いですよ。

と言いたいところだが

その言葉を飲み込ませる圧が

その人物から放たれていた。


しかしながら、初対面にして

この軽い口調と馴れ馴れしさ。

特に、略称名を呼び捨てにされたことは

ユーリの性分として、かなり気になるところであった。

あえて、慇懃無礼に聞いてみる。


「はい、初めまして、ユーリエ・ローワンと申します。お名前を尋ねしても・・・」


「サムエル・ロビンズ・ラウレヘン・ノル・カシリオン。」


この男はユーリの言葉を待たずに

かなりの早口でカラカラと喋り始めた。

自信たっぷりの笑みを浮かべている。


ユーリはまた少々ムッとした。


「初めまして。サムエル・ロビンズさんとお呼びすれば良いですか?

ノルという事は高貴なご身分でいらっしゃる。」

ユーリは少々大袈裟に頭を下げた。


目の前のエルフは少々目を開いて驚いた顔を見せた。


少しこの世界のエルフの話をしたい。


悠久の時を生き、強い魔力を有するエルフは

はるか昔には世界を牛耳るほどにその勢力を誇っていたが

その出生率の低さ、社交性の無さからも

エルフの人口は徐々に減少し

エルフの自治区自体も

数少なくなり

滅多に深い森の中から出てこないと聞く。


ユーリは、魔法学校時代、エルフ語を学んだ経験があり

多少はエルフ語とエルフ文化に関する知識があった。

王都ともなると、実際に他のエルフと接する機会も多少はあった。


実は、このルミナス地帯一体も、エルフ、ドワーフ、その他妖精の自治区が

いくつか存在している。

時々、それぞれが交易の対象になるとも聞く。


エルフに関してもっと言えば

人間たちと関わることは、本当の意味では好まないと

認識されていることから

エルフ達と深く関わったことがない者が多いはずだ。


故に、エルフの自己紹介など受けたことがない人が

今では殆ど居ないのではないだろうか。


エルフの名前は、"自身の名前"、"親のファーストネーム+ズ"、"体の特徴"、"一族の住む地名"で構成される。


ノルとか、エアとかは

それは、ここからずっと遠く、大中洋を隔てた西大陸、更にまた西の端ににある

エルフの統治する王国、アラミンドル国の王から与えられる称号で

その地方の族長の直系であるとの証である。


よって、この人物は、サムエルという名前、ロビンの子、金の目、カシリオン族長の直系


と言うことなのだ。


そして、長ったらしい名前を持つエルフだが

文化的に初めの2つの名前を組み合わせて呼ぶことが多い。


「へー、君エルフ語が分かるの。

サムエルでいいよ。」


サムエルは、感心している・・・様に見えるが

そんなことは一言も口に出さず

話を進めた。


「今回フィヨナにはとてもお世話になったんだ。

ここは素晴らしくいい宿だね!環境もいいし。」


ユーリが何かを言いかけようとしたところ

それを意にも介していないようで話を続けた。


「僕はね、あの騎士のアルト・ルーベンパーティの斥候(スカウト)なんだ。

能力(クラス)は舞踏家。」


事もなげに、後方を親指で差しながら言った。

どうやらこの男、人の話は聞かないスタイルであるらしい。


皆に囲まれている優男風のあの騎士が

例の騎士様アルト・ルーベンなのであろう。

しかし、それ以上にユーリは彼の職業とクラスに驚きを覚えた。


「舞踏家ですか。舞踏家の方が斥候(スカウト)をされてるのは珍しいですね。」


舞踏家、踊り子と言うと、舞台芸術としての存在であったり

冒険者パーティにいるとしたら

儀式的に何かを召喚する神官が殆どである。


「まあね、僕の師匠が踊り子で斥候(スカウト)だったんだよ。その受け売りかな。」


「でも考えてみてよ」


と言って、カウンターからヒョイっと飛び降りた。


「舞踏家だって言えば、皆、身を構える必要なんて無いから、もってこいだろ?」


と言って、ニカっと笑顔を見せた。


自信たっぷりで、屈託のない笑顔であった。

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