第8話 八元帥
コウは朝礼にさんかしながら赤茶髪の女性について思い出していた。
「(確かあの人『貪食の怪物』って呼ばれてたよな…それに『バグジアス元帥』って…もしかして『八元帥』⁉)」
とそこまで思い出し、コウは額から汗が溢れる。先程まで朝礼に遅れる心配で気にしてなかったがコウは学生の時に学んだ『八元帥』について思い出した。
「(たしか元々八つの国が争いをしていてそれが何年も続きそれぞれの王が『このままでは失うだけで得るものが無い』と判断し協力して一つの国を作った。それがここ『パイス』そしてその中心として都市『チウデッド』に『世界統一機関』を作った。それぞれの王は今は『八元帥』として機関の中心として君臨している。)」
そしてその後にコウは授業で聞いた『八元帥』の通り名と紹介を思い出す。
「(最新兵器を研究、開発をしている『機構の戦士・ギャラク』。幾度も機関や民を守りながら不殺の元戦う『刃無き騎士・ジルド』。目をつけられたら地獄の底まで追いかける『復讐の鬼・オニギジア』。幼いながらも不屈の精神で多くの強敵を鎮圧した『逆転女王・クレッシェ』。他人の魔力を奪ってそれで魔法を使う方法を考えた『怠惰の魔女・ガラネラネ』。他の『八元帥』のリーダーで実質『世界統一機関』のトップの『千刀流の剣聖・ジーギガス』。席はあるものの誰もその姿を見たことが無い『眠り姫・ローゼッティア』。そして先程であったのが昔多くの人を食って回った怪物でその力を見込まれ、今は大罪人の処理をしている『貪食の怪物・バグジアス』…って俺とんでもない人とぶつかっちまったのか。)」
コウは今更ながら恐怖し震えあがった。
――――――――――
小さな部屋の中心に丸いテーブル、それを囲むように座る六人。その部屋に突如一人の怪物が走って登場する。
「遅れてしまってすまん!!」
そういって席に座るバグジアスを見て左隣にいた赤髪の男性が怒鳴る。
「おせぇぞ蟲野郎。てめぇ今まで何してたんだ?」
「ちょっとここに来る途中トラブルがあっての。」
と笑いだすバグジアスに赤髪の隣にいた白髪の男性は質問する。
「バグジアスさん、もしかしてまた問題を起こしたんですか?」
「え?ちょ待つのじゃジルド殿。またってなんじゃ⁉妾問題を起こしたことなんぞあったか?」
「貴方いつも兵士達の間で恐れられているでしょう?」
「あれは別に妾が何かしたわけじゃないんじゃが⁉」
そのバグジアスの反応に右隣にいるオレンジ髪の少女が笑う。そんな茶番を鎧と兜をしっかりときた男性が止める。
「茶番はその辺でよいか?ではそろそろ会議を始めるぞ?」
男性のその言葉にその場にいた六人全員が頷く。
「まず最初に近々ある大きな仕事だが、来週の日曜に行われる祭り、それに国民的アイドル『アネモネ』がメインで参加する予定だがその護衛を任されている。祭りということもありもし何かあれば多くの犠牲が出る可能性も十分ある。その為『八元帥』の中からも何人かその護衛に参加してもらいたい。
が、自ら言っておいて申し訳ないが私は参加できない。」
鎧の男性の言葉にジルドが答える。
「しょうがないですよ、ジーギガスさんは機関の全部を管理しなくてはいけないのですから。むしろ仕事ではなく休みとして祭りに参加してほしいぐらいです。
護衛ということなら私にお任せください。」
「感謝する。しかしもう少し護衛に人を回したいのだが…」
ジーギガスの発言に白い鎧を付けた黒髪の男性が腕を組みながら答える。
「俺は無理だ。やりたい研究があるしな。」
それに続き水色の髪の女性も机に体を寝かせ「アタシもパス…めんどくさいから…」という。
「ふむ、ガラネラネに関しては後で怒っていいか?ギャラクの方は了解した。」
兜の中からでも感じるような睨みを効かせジーギガスは二人の回答に答える。水色髪の女性、ガラネラネはそれに「やだ…めんどくさいから…」という。
「なら俺も護衛に回ってやってもいいぜ。そのへなちょこ平和ボケ野郎だけじゃ護衛は出来ても鎮圧できるか不安で仕方がねぇからな。」
突如赤髪の男性がそう発言する、それに対してジルドが返答する。
「オニギジアさんのような乱暴者に護衛の協力を任せるのは個人的にはあまり気乗りしないのですが…
仕方ないですがお願いします。貴方の力だけは信頼できますし。」
「あ?なんだもやし野郎。喧嘩なら買うぞ?」
立ち上がりジルドにがんを飛ばすオニギジアをジーギガスが静止する。
「その辺にしろ。護衛についてはお前にも任せた。」
舌打ちをしつつ席に座るオニギジアと交代するように今度はバグジアスが手を上げて席を立つ。
「祭りなら妾も行きたいのじゃ。餌も沢山あるじゃろうし。」
「貴方…遊ぶ気満々じゃないですか…それにまた問題を起こされたら…」
「じゃからそれは妾のせいじゃないと言うとろうが!」
「ふむ、まぁ不安はあるがバグジアスの実力は信頼が置けるし。なにより機関の中で問題を起こされるより外の方が被害が少なくて済むだろう。」
ジーギガスのその言葉にバグジアスは「そろそろ本気で怒っても良いか?」と頬を膨らませる。
「さて、残るはクレッシェだが…お前はどうする?」
ジーギガスに質問されたオレンジ髪の少女、クレッシェは悩みなどなさそうなその見た目には似合わないぐらい真剣に悩んでいた。
「うーん、参加したいけれどトレーニングもしたいし…」
「3人もいれば十分だから私はどちらでも構わないぞ。」
というジーギガスの言葉を聞きジルドが提案をする。
「では、クレッシェさんはここでトレーニングをしていてください。手が必要になったら私から貴方に連絡をしますから。」
その言葉にクレッシェは明るくなる。
「良いのか?ありがとう!!ジル君!!」
「ふむ。では祭りでの護衛は決まったな。
さて、他になにか報告することは無いか?」
ジーギガスが聞くとギャラクが手を上げる。
「あー、皆分かっていると思うが一応俺から。
今回入りたての新人が捕らえたということでも有名な『殺人人形』。あの人形は俺に預けてもらいたい。
まるでただのぬいぐるみだからなどのようなカラクリで動いているかを調べたい。」
それに対してバグジアス以外の5人は了解を示す。
「なんだ?『貪食の怪物』。何か問題あるか?」
黙っていたバグジアスにギャラクは質問をする。それに対してバグジアスは首を振る。
「ああ、いや違うのじゃ。昨日入ったばかりの新人というのが引っかかっての。もしかしてさっき会ったばかりの勇者の卵君の事かなと思ってな。」
「まさか貴方!その新人さんを!」
「食うとらんからな!!妾とぶつかってな。」
「その人無事だったんですか?」
「無事じゃと思うぞ。あの後走っていたしの。
それにやつの目を見たところ妾にぶつかった程度で怪我するたまとは思えん。」
バグジアスのその言葉にクレッシェが目を輝かせる。
「バグちーがそこまで言うって事は相当な手練って事だよね?さっき勇者の卵君って褒めてたし!
ふふー手合わせしたいなぁ。詳しく教えてバグちー!」
「よいぞよいぞ。まず容姿じゃがな…」
勝手に話を進める2人をジーギガスが止める。
「待て、今は会議中だ。他に何か報告する事がある者は?」
ジーギガスの問に答えるものはいない。
「ふむ、ではここで解散としよう。最後に『眠り姫』は今日もいつも通りだ。以上、解散」
そして『八元帥』の七人は席を立ちそれぞれ部屋を出ていく。