24話 死に戻り
前回のあらすじ
アネモネに香水を返し、一安心化と思ったのもつかの間、ストーカー男により、アネモネに危険が迫る。
彼女を助けたのは、八元帥の、バグジアス、オニギジア、ジルドだったが、彼らは、アネモネを助ける方法の違いに喧嘩をしていた。
その隙に現れた、『腸の発掘家』により、アネモネと、コウは殺されたのだった。
※今回の話は、前回のコピペ部分が長いです。コピペ部分に入って、読むのが面倒と感じる方の為に、話が変わる部分の前に、『───』を記載しておりますので、お手数ですが、そこまで読み飛ばしてください。
「「アネモネのライブ。午前の部、最後の歌が始まります!! ぜひ、祭り会場中央エリアまで、お集まりください!!」」
コウが意識を取り戻すと、そんなアナウンスが聞こえてきた。
「(俺は、『腸の発掘家』と出会って。それから、どうなった?突然、首に痛みが走って…。)」
コウは未だ痛む、首をさすっていた。
「どうした?コウ。首なんかさすって。」
コウの首を見ながら、質問をするココル。
「いえ。ちょっと。首が痛んで。」
「寝違えたか?体は大事にしろよな。しかし…。」
コウの答えに、ココルはそう言った後、アネモネの方を向いた。
「彼女の歌は相変わらず素敵だな。お前と出会ったあの日を思い出すな。」
ココルが、「ふっ。」と笑う。
「今の君を見ていると、あの日、あの裏路地にいて正解だったな。ただ人だかりを避けただけだったが。」
コウもココルにつられて、アネモネの方を見る。
アネモネはお辞儀をして、ステージを降りる。
すると突然、男性の大声が聞こえた。
「やっと降りてきやがったな!アネモネぇ!!」
男は手に包丁サイズの刃物を持って、観客の中から現れる。
「ア、あなたは!一ヶ月前わたしに、ストーカーしてた男!! の方!」
「俺はお前に50万トルも使ったんだぞ!! ライブチケットに、CD。何個も買ってやったのに、なんで、握手会を開けって願いすら聞き入れてくれねぇんだよ!!」
後退するアネモネに、ストーカー男は刃物を握りしめ走る。
コウ達が慌てて、それを止めようと走る。
直後、白髪の男性がアネモネの前に立ち、両手を突き出す。
「『強欲の大盾』!!」
彼がそう叫ぶと、彼の目の前に、彼の背丈ほどの大きさの、黄色味がかった白色の盾が現れ、ストーカー男の刃物を止める。
「あなたは!?」
アネモネがそう聞くと、彼は彼女の方を向いて、笑顔を見せる。
「私は『世界統一機関、八元帥』の1人、ジルドです。『刃無き騎士』の名の方が有名でしょうか。
そんなことはさておき、安心してください。この盾はあらゆる衝撃を吸収します。
最も、問題解決するかどうかは、私の口次第ですが…。」
ジルドはそう言うと、ストーカー男の方に顔を向ける。
「さて。アネモネさんが、私の護衛対象に入っている間、貴方は決して彼女を傷つけることは出来ません。その刃物を捨て、今すぐにこの街を立ち去るのであれば、今回は私は見逃すつもりです。
勿論、アネモネさんが捕まえてほしいというのであれば、逮捕しますが。」
ジルドの言葉に、ストーカー男は怒声を上げる。
「うるせぇ!! 『刃無き騎士』か何だか知らねぇが。握手会を開いてもらおうとして何が悪い!! 俺は6年もあいつのファンをしていたんだぞ!!」
ストーカー男の言葉に、アネモネは下唇を噛む。
それを見て、ジルドが言う。
「彼女にも、理由があると思います。ですので、ここは一旦落ち着いて、引いてください。もしかしたらいずれ、彼女から理由が語られるかもしれない。こんな、物騒な行為をする意味がない!!」
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
ストーカー男はそう叫び、『強欲の大盾』を斬りまくる。
しかし、その盾には傷1つ付かない。
ジルドは再び彼に言う。
「早くこの街から離れてください!! これは、貴方の命にもかかわる話です!! どうか、私の我儘。誰1人死なせたくないという私の強欲。それに付き合ってください!! 早くしないと、彼らが…。」
ジルドが叫んでいると、彼の左側から声がした。
「なんだぁ?ライブも終わってるはずなのに、人だまりが消えねぇと思ったら。
てめぇ?『世界統一機関』に、何してやがる!」
その声に、ジルドが怯えた声を上げる。
「オ、オニギジアさん…。」
ジルドが声のする方を見ると、そこには怒りの表情をあらわにしたオニギジアの姿があった。
「『統一機関』への暴力。これが、10年の懲役。さらに、『八元帥』への暴力で、さらに50年。」
両腰に1丁ずつある赤に黄色の装飾をした拳銃に手をかけ、じりじりと近寄るオニギジア。
「そして、俺を怒らせた罪。これは必ず死刑!!」
彼の言葉を聞いてジルドが、ストーカー男に向けて叫ぶ。
「逃げろ!!」
ジルドの言葉を聞いて走り出すストーカー男。
オニギジアがそんな彼に、拳銃を向ける。
「『憤怒の弾丸』!!」
オニギジアはストーカー男に向けて、赤色の弾丸を連射する。
「おらおらおらおら!逃げても無駄だぞ!俺様の弾丸は無くならねぇぜ!!」
観客達がそれに、叫び声を上げる中、ジルドが部下達に言う。
「直ちに、会場の人を護衛せよ!オニギジアさんの弾丸から、皆さんを守れ!!」
ジルドの叫びを聞いて、オニギジアが言う。
「てめぇ、もやし男!後で覚えとけよ!! 俺を犯罪者か何かみてぇに扱いやがって!!」
ジルドも彼に言い返す。
「実際、貴方の行いは、あの犯罪者より凶悪です!!」
ジルドの言葉に、オニギジアは足を止め、ジルドに向けて弾丸を放つ。
「てめぇ!今にでも死にてぇらしいな!」
しかし、ジルドは『強欲の大盾』に守られ傷付くことは無かった。
オニギジアが、ジルドの攻撃に集中していると、ストーカー男が、バグジアスとすれ違う。
「ふっふふ~ん。ワッフルにアイス。色々食べたけど、やっぱり本日最後を締めるのは、たこ焼きじゃねぇ。
おん?なんじゃ?こんな祭りで、血相を変えて走る男がいるとは。便所か?」
バグジアスの言葉に、オニギジアが再びストーカー男の方に振り向き、走り出す。
「てめぇ、逃げんじゃねぇぞ!! 死刑の決まった大罪人が!!」
オニギジアの言葉を聞いて、バグジアスはストーカー男を見る。
「ふむふむ。死刑の決まった大罪人か…。なら。餌ってことじゃな?」
バグジアスがたこ焼きを咥え、あいた右手を後ろに向ける。
すると、その右手に、次々と紫色の小さなハエのような蟲が集まる。
「『暴食たる蟲』。」
バグジアスが、最早紫色の玉と化した、蟲の塊をストーカー男に放つ。
蟲はすぐに、ストーカー男に向かっていき、彼を包み込んでしまう。
「痛い!やめろ!やめて!だれか!タスケ…。」
男の絶叫は次第に小さくなり、そこからは、肉を食いちぎる音と骨を削る音、そして血液をすする音だけが響いた。
吐き出してしまいそうになる異臭が消え、蟲達がその場から飛んでいくと、そこには彼の骨どころか、血の1摘、さらに彼の匂いすら存在しなかった。
それはまるで、食われたというより、この世界から消えてしまったと言ったほうが正しく思えるほどだった。
会場の人達や、アネモネ、コウがその光景に恐怖している中、明るい声が聞こえた。
「うむ。満足満足!やはり人の肉は不味いな。口直しのたこ焼きが美味、美味。」
笑顔でたこ焼きを食べるバグジアスに、怒りの表情を見せたオニギジアが現れる。
「てめぇ。ふざけんなよ!奴には60年の懲役もあったんだよ!! 死体がなくなっちゃあ、何を牢獄にぶちこみゃいいんだよ!!」
「何じゃ!せっかく罪人を処罰したというのに。というか、50トル返すのじゃ!!」
喧嘩する2人に、ジルドが低い声で話す。
「ふざけているのは貴方達両方でしょう。彼は、死んでよい人間ではなかった。不必要な虐殺をしては、『世界統一機関』へのイメージが悪くなっていく一方でしょう!! 元より、貴方ら2人とガラネラネさん。『三女神』達のせいで、我々のイメージは、結構悪いというのに。」
喧嘩をしている八元帥3人を止められる人などおらず、誰もが傍観している中、突然、コウの後ろから声がした。
「あら。あんなストーカー男を殺したぐらいで、アイドルの護衛が終わったって思うなんて、結構甘いわよね。彼らって。」
───その声を聞いて、コウが叫ぶ。
「まだ終わっていない!!」
その声を聞いて喧嘩していた3人が、アネモネの方を見る。
「へぇ。さすがに、何回目ともなると、反応が早いわね。」
3人の目の前、アネモネの後ろには、ナイフを持った『腸の発掘家』がにやりと笑って立っていた。
「え⁉」
後ろから声がして、驚き後ろへ下がるアネモネ。
その様子を見て、『腸の発掘家』は笑顔でナイフを振り上げる。
「でも、まだ、私の方が早かったわね。この娘をやれば、私の勝ち。それじゃあね。代替品のアイドルちゃん。」
アネモネに、ナイフが振り下ろされる。誰もがそう思った瞬間。
「『暴食たる蟲』!!」
バグジアスが、無数の蟲を放り投げた。
「ジルド殿!汝の盾は、羽蟲の羽ばたきで壊れるほど、もろくはなかろうな!」
バグジアスの言葉に、ジルドは答える。
「当然ですよ!むしろ、貴方の蟲こそ、私の盾に耐えてくださいね!『強欲の大盾』!!」
ジルドが、自分の前に大きな盾を形成し、それを、蟲の塊の上に、投げ置く。
移動する乗り物と化した、その盾に、オニギジアが乗る。
「普段の、てめぇらとは思えねぇぐらい、察しがいいじゃねぇか。あの距離じゃあ、流石の俺の腕でも、流れ弾が、あのアイドルに当たっちまうかもしれねぇ。だが!」
盾に乗り、『腸の発掘家』の元へ急接近したオニギジアは銃を構える。
「この距離まできちまったら、誤射なんてしねぇぞ!『憤怒の弾丸』!!」
オニギジアが、『腸の発掘家』に向かって、銃を乱射する。
彼女は、それを焦ることもなく、避ける。
「へぇ。そんな協力技があったなんてね。」
『腸の発掘家』はその後、裏路地へと、走り出す。
「逃がさねぇぞ!殺人未遂が5年。そして、俺を怒らせた罪で、死刑!! 俺の怒りを買うとどんな目に遭うか、教えてやる!!」
オニギジアは、盾から飛び降りると、『腸の発掘家』を追いかけ、走り出す。
「ふふ。どんな目に遭うかなんて。身をもって知っているわよ。体中穴だらけにされるんでしょ!もがき苦しみ死ぬまで。残念だけど、そんなのはごめんだわ。」
『腸の発掘家』は、後ろから放たれる銃弾を見て、避けながら走る。
しかし、後ろを向いている彼女に、何かがぶつかった。
「やっぱり、来たな!」
それは、コウの持つ剣だった。
刃先ではない為、斬れることは無かったが、『腸の発掘家』の頭に強い衝撃が当たり、彼女は足を止める。
「な、何⁉」
驚く彼女に、コウは、剣の切先を向ける。
「甘かったな。俺は、お前がここに来ることを知っていた。八元帥達が、お前を狙っている所に、俺は先回りして、この裏路地に隠れてたんだよ!」
「なるほど。やるわね。まさか、私の目を盗んで先回りするなんて。いえ、君がまだ弱いと油断していたのかも。」
追い詰められたにもかかわらず、そう言ってうっすら笑みを浮かべる彼女に、オニギジアの弾丸が、撃ち込まれる。
「先回りしてたとは、やるじゃねぇか!あとで、仮面野郎に伝えて、昇格させてやるぜ!」
そう言って、コウに笑みを見せたオニギジアは、『腸の発掘家』の元へと近づく。
「さぁ!罰はまだ終わってねぇぞ!じっくり、てめぇの罪を後悔させてやる!!」
ゆっくりと近づく彼の言葉を聞いて、『腸の発掘家』はコウの方を見る。
「残念だけど、今回は私の負けね。彼の罰は苦しいから、ひとまず逃げさせてもらうけれど。次、どこかで、また会いましょう。」
そう言うと、彼女は突然口から血を吐いて倒れてしまう。
突然のことに、コウが驚いて、彼女の元へ近づこうとした時、突然世界が真っ白になった。
そして、コウが気が付くと───
「「アネモネのライブ。午前の部、最後の歌が始まります!! ぜひ、祭り会場中央エリアまで、お集まりください!!」」
───再び世界が戻っていた。
次回予告
突然行われた、世界の巻き戻り、それは、今までの彼の死に戻りとは大きな違いがあったのだった。
次回 25話 受け継がれる意志




