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ワールドプリズン 〜その監獄からは逃げられない〜  作者: HAKU
第三章 希望の花

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21話 希望の花

 前回のあらすじ

 キキのメリーを、ギャラクから取り返そうとするコウ。

 しかしメリーは、既に解剖された後であり、動かなくなっていた。

 それに怒ったコウは、ギャラクに物申そうとするが、彼の部下の1人、アレクトロの操る機械に撃たれる。

 コウが泣きながら廊下を走る。

 前からヒルが歩いてきて、コウに気づく。


「おや?新人君じゃないですか。いやぁ、聞いてくださいよ…。」


 ヒルは、コウが泣いていることに気づいていないのか、ヘラヘラとしながら、話し続ける。


「あのシャーロッテさん、私に噛み付いたんですよ。あ〜あ。痕になりますよ。これ。」


 ヒルは噛み跡のついた左腕を、コウに見せる。


「しかしまぁ、ズバクさんという方が詳しく話を聞かせてくれましたし、彼女の暴走も止めてくれたので、今回の『機関への暴行』は不問としましたがね。」


 そこまで話してヒルは、コウの左腕に傷があることに気づいた。


「おや?その怪我。どうしたんです!? と、とにかく医務室に行きましょう!!」


 ヒルはコウの手を引き、医務室へと向かう。


 ──────────


「失礼しますよ。」


 ヒルが医務室に入ると、包帯を運んでいた、イルオがヒルに気が付いた。


「あら?ヒルさんどうしました?」


 イルオは、ヒルの後ろにいるコウに気づく。


「あ!コウさん!! ご無事でした?」


 包帯の山を近くのテーブルに置き、ヒル達の方に近寄る。


「いやぁ。そうではなさそうですねぇ。」


 ヒルが、コウの左手をイルオに見せる。

 それを見たイルオは、自分の口を手でおさえる仕草をする。


「まぁ!! 大変!! 今、先生を読んできます!!」


 イルオはそう言って、医務室の奥に行った。


 ──────────


「はい。終了。」


 イルオに呼ばれた、赤紫色の長い髪をポニーテールにした、色っぽい女性が、コウの左腕をさするような仕草をすると、たちまちコウの左腕が治ってしまう。


 コウはそれに、「おお!!」と驚く。


「さすがディアンナ先生ですね。ついでに私の腕に着いた、噛み跡も治してくれませんか?」


 ヒルが、左腕を見せるとディアンナと呼ばれた女性は、それをチラッと見る。


「ただ、あとが着いただけね。放っておけば治るわよ。」


「ハハハ、先生は厳しいなぁ。」


「治癒魔法も、消耗するものよ。下らないことでは使わないわ。」


 苦笑いをするヒルを無視して、ディアンナはコウの目を見る。


「で、何があったのかしら?大の男が目を赤くして。さっきまで泣いていたでしょう?」


「もしかして、『三女神(エリネイス)』らにやられたの?」


 イルオが静かにそう言う。


「『三女神(エリネイス)』?」


 コウの言葉にイルオが答える。


「キキさんの人形の件で、ギャラクさんの所へ行ったのでしょう?」


「ああ。あの、ギャラク元帥狂信者か。」

「ああ。あの方達ですか…。」


 イルオの言葉に、ディアンナとヒルがため息を着く。

 コウがそれを不思議に思っていると、イルオが片手で頭を抱えて言う。


「ギャラクさんは、世界の未来の為を優先して、人の心は後回しの人ではあるのですが、彼に物申すのが難しいのは、むしろ、彼を心から従う3人の女性が原因。

 その女性達が『三女神(エリネイス)』です。

 彼女達はかなり、難しい人達でギャラクさんに物申した人に危害を加える事もあるんですよ。まぁ、ただ『人形を返せ!』でここまでしてくるとは思いませんでしたが…。」


「いや、ただ返せと言っただけでもなくて…。」


 コウは、『ギャラクに、メリーを解体され、それに対して物申そう』としたことを説明した。

 メリーのことを知らないディアンナは、特に興味もなかったのか。あくびをしていて、途中から他の女医に呼ばれその場を去った。

 最後まで話を聞いていた、ヒルとイルオは、ただ一言。


「「もし、時間を戻せるなら、別の選択肢があったかもしれませんね。」」


 ──────────


 それから3日後、コウとココルは、上から『本日の祭りに参加するアイドルの護衛』を命令された。


「『アネモネ』さんかぁ。初めて聞くな。」


 コウは護衛するアイドルが休憩する部屋に向かいつつ、彼女の名前を見て言う。

 そして、それにココルが不思議そうな顔をする。


「む?そうか?確か君を『腸の発掘家』から助けた日にも、この都市で歌っていたと思うが。」


 コウはその言葉に「(あれ?そんな名前の人だったっけ?)」と思う。


「ああ!アネモネちゃ〜ん!こっち見てぇ。」


 コウ達が、アネモネの休憩室に近づくと、そんな声が聞こえた。

 声の出処は機関の前で、車を囲う多数の人々と、その人達が車に轢かれないように道を開けろと促す機関の兵士。そして車の中では、ピンク色のふわふわした、可愛らしい格好をした青髪の少女が周りの人々に手を振る姿があった。


「『チウデッド』のみんなぁ〜。今日は、みんなのお祭りに、参加させてくれてありがとう〜。

 わたし〜。今日をず〜っと楽しみにしてたから。思いっきり歌っちゃうよ〜。

 でも、ショーが始まるまでもう少し待っててね〜。」


 明るく可愛げのある声が広がる。

 その声に周りの人々が黄色い叫びをあげる。


 ──────────


 アネモネは、機関の中に入り、用意された部屋へと移動する。

 その際、護衛に来た兵士達に、「わたしのためにみんな、ありがとう〜。」と周りに手を振る彼女の姿に、心を奪われた兵士も少なくはなかった。

 コウ自身も、彼女の放つほのかに甘い香りと、笑顔に心を奪われそうになった。

 しかし、それは彼女の隣にいたマネージャーが落とした、ピンク色の瓶によって邪魔される。

 コウは、慌ててそれを拾うが、既にアネモネの姿はなかった。


 ──────────


「これは、香水かな?」


 コウはその瓶を見ながら、アネモネの部屋へと向かう。


「あ、ここか。」


 コウが、部屋をノックしようとした時、部屋から声が聞こえた。


「はぁ!! アンタさぁ、あの香水落としたってどうすんのさ!! あれがなくちゃボクはステージに上がれないって知ってるよね!!」


 部屋からは先程の可愛い声とは程遠い、アネモネの激しい声が聞こえる。


「アンタも見たよね?機関の男達がボクの匂いでメロメロになってた!ボクがアイドルでいる為にはあの香水が必須なの!! 早く探してきて!!」


 アネモネの怒声が聞こえた後、部屋のドアが急に開く。


「きゃっ!!」


 そして、そこから出てきた黒いセミロングの女性、アネモネのマネージャーが出てきて、コウと当たりそうになる。


「アンタ、何やってんの?だ…。」


 アネモネが、ため息をつきながらマネージャーに近づいてきて、コウに気づく。


「あ、あなた…。も、もしかして、さっきの話聞いてた?」


 心配そうな顔をするアネモネに、コウは頷いた。


 ──────────


「で、何のようなのよ。人の裏の顔をこそこそ嗅ぎまわって。マスコミにでも売り込むつもり?」


 コウを睨むアネモネに、彼は答える。


「そういうつもりはなかったんだ。でもさっき、これが落ちたから…。」


 コウはそう言って、マネージャーが落とした小瓶を、アネモネに見せる。


「あ!それは、ボクの香水じゃない!早く返して!そして、さっさと出てって!」


 アネモネの言葉に、コウがムッとする。

 それを見て、マネージャーが謝る。


「ご、ごめんなさいね。アネモネちゃん、男の方が苦手で…。」


「は、はぁ。じゃあなんで、アイドルなんか。」


 コウの言葉に、アネモネが怒りの表情を見せる。


「別にいいでしょ!ボクには、ボクの事情があるのよ!とっとと、その香水を返して!!」


 アネモネが、香水を奪おうと、コウへと近づく。

 しかし、コウに近づく途中で、彼女はつまづいてしまう。


「危ない!」


 コウが慌てて、アネモネの体をおさえようとする。

 それに、アネモネが、大きな声を上げる。


「ダメ!!」


 そして、コウの手が彼女に触れたとき。

 コウの意識は、どこか心地よい気持ちと共に、薄れてしまった。

 次回予告

 突然、薄れていった、コウの意識。そして、再び戻される世界。いったい彼の身に何が起きたのか。


 次回 22話 偽りだらけの華

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