19話 勝手な元帥達
前回のあらすじ
館から脱出できたコウ達。彼らの元にヒルが現れ、シャーロッテとズバクを機関に連れていったのだった。
コウとココルが、都市『チウデッド』の『世界統一機関』に帰ってきた。
建物の入口から見える中庭で、機関の兵士と戦っているオレンジ髪の少女が、兵士をアッパーで倒す。
そして彼女が額の汗を拭うタイミングで、彼女が、コウとココルに気がつく。
「お!ココちん!」
オレンジ髪の少女が、2人に駆け寄る。
彼女の勢いがすごく、ぶつかりそうになったココルは驚いたように目を開く。
「おっと。クレッシェ元帥。ぶつかったら危ないじゃないか。」
ココルに注意され、オレンジ髪の少女。クレッシェは後頭部に手を当てて「えへへ… ごめんごめん。」と笑って謝る。
そして彼女は、コウを見る。
「おお!君がバグちーが言ってた、期待の新人君だね!」
クレッシェは、コウを色んな方向からまじまじと見る。
「凄いねぇ。初日から、殺人犯を捕まえたんでしょ?戦闘には自信あり?バグちーの話だと、死地を何度も超えてきた目って聞くけど、どのぐらい命の危険を抜けてきたの?」
次々と質問をする彼女に、コウは圧倒される。
そんなコウを気にせす、クレッシェはコウを指さして、自身の腰にもう片方の手を当てる。
「そうだ!アタイと模擬戦しようよ!君の実力知りたいなぁ。」
「は、はぁ。」
コウは困りながらココルを見る。
ココルは、「いいんじゃないか?」と簡単に答える。
「ふっふ〜ん♪模擬戦♪模擬戦♪」
コウは、小さくジャンプしながら歌うクレッシェの誘いを断れなかった。
──────────
「んじゃあ、一本勝負!どっちかが倒れたら終了ね!」
「分かりました。」
コウが、ウキウキしているクレッシェのルール説明に了解する。
それを聞いたクレッシェは、地面に右腕に付いている十字形の武器を当て、左手を膝に置く。
「そうだ!言い忘れてたけど、真剣勝負でよろしくね!」
そう言ったクレッシェの武器が、オレンジ色の小さな光を集める。
「『嫉妬の拳』!!」
クレッシェの武器が、オレンジ色に光り、十字の間から鎖を出す。
鎖は、彼女の拳を縛り上げる。
「それじゃあ!行くよぉ!!」
クレッシェが地面を蹴ると、一瞬でコウの目の前に移動する。
「なっ!」
コウは、急いで剣で守ろうとする。
しかし───
「(間に合わない!!)」
クレッシェの右ストレートが、コウの剣をすり抜け、彼の腹に当たる。
「うぐっ!!」
クレッシェの拳を貰ったコウは、勢いよく飛ばされる。
「おお!大丈夫か?コウ。」
ココルが、コウの元へ行き、顔を覗き込む。
「いってて。何とか無事です。」
体を起こし、クレッシェを見る、コウ。
クレッシェはと言うと…
「あ、うん。そうか。そうなのね。真剣勝負だって言ってたのに。アタイがガキだからって手加減ですか。そ〜ですか。」
クレッシェは溜息をつき、地面を蹴っていた。
「え?」
困惑するコウに、クレッシェは背を向ける。
「なんかもう、嫌になっちゃった。じゃあねぇ。お強いお強い、コウ=シュージン少尉。」
クレッシェは機関の中へと帰っていった。
「な、なんだったんだ?」
コウが困惑していると、ココルが片手を自身の腰に置き言った。
「クレッシェ元帥は、手加減するやつが嫌いだからねぇ。」
コウはそれに、「(本気でやってたんだけどなぁ。)」と思った。
──────────
コウは、機関の中に戻ると、キキのいる牢屋へと向かう。
キキの牢屋が近づいてくると、イルオの声が聞こえてきた。
「キキちゃん…、ちゃんとご飯食べて…。」
イルオの姿が見えてくると、彼女は牢屋の中に、食事を入れていた。
コウが、イルオの元へ近寄る。
「キキが、どうかしたんですか?」
イルオは、声をかけてきたコウの方を向く。
「ああ、コウさん。実はキキさんが…。」
イルオが、キキの方を向く。
コウもまた、それにつられるように目線を向ける。
キキは牢屋の隅で小さく丸まっていた。
小刻みに体が動くので、彼女が泣いているのが分かる。
「昼間からこの調子で、食事すら、まともに取ろうとしないんです。」
イルオの言葉を聞き、コウは牢屋の柵を掴んで叫ぶ。
「キキ!どうしたんだ!」
その声を聴いたキキは、顔をあげ、コウを見る。
涙でくしょぐしょになった顔を、コウに近付け、キキは話す。
「メリーが…。白い鎧を着た…、黒髪の人に持ってかれた…。嫌だって…、言ったのに…。「我々の未来の為だ。」って言って…。」
そこまで聞いて、イルオがつぶやく。
「ギャラクさんか…。」
「ギャラクって、八元帥の一人、『機構の戦士・ギャラク』!?」
コウの言葉に、イルオが頷く。
「あの人は「世界の未来の為」と言って、なかなかひどい研究も行う人です。もしかすると、あの人形の解体もありうる。」
顎に手を置き、悩むイルオの両肩を掴むコウ。
「ギャラク元帥は今どこに!?」
「分かりません。ですが、この建物の最東。巨大な鋼鉄の部屋が、彼の研究所です。もしかしたら、今はそこに…。」
慌てて答えるイルオに、コウは感謝をして走り出す。
目的地は、ギャラクの研究所。
「(まってろ、キキ。今、メリーを取り返すから。)」
コウはそう心の中で、思った。
コウを見送った、イルオはそっとつぶやく。
「私より、今の友達の方が悩みを話せるのか…。悲しいな。でも、応援はする。どうせ、無駄かもしれないけど、一度は頑張れ!コウ!!」
次回予告
メリーを返すよう、ギャラクへ抗議するコウ。しかし、ギャラクは一筋縄ではいかなかった。
次回 20話 未来の為




