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ワールドプリズン 〜その監獄からは逃げられない〜  作者: HAKU
第二章 ティティーの館

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17話 脱出

 前回のあらすじ

 コウは、初めて鍵の付いた書庫にたどり着いた。彼は赤い本を読む。

 そこには、ティティーの生前と、死後、さらに今のようなゲームをする原因となった事件について書いてあった。

 日記を読み終わった後、コウはココルの体を奪ったティティーに殺される。

『それじゃあ、始めるわ。『D』。』


 コウは再び、ウィジャ盤の前へと戻される。


「(俺は、再びここに戻ってきた。ということは…)」


 コウの目の前に、彼が今一番会いたい人物がいた。


「おい!聞いてんのか?」


 コウは、シャ―ロッテを抱きしめた。


「ちょ!いきなり、何するんだ!!」


 シャ―ロッテの言葉は、コウには届かなかった。


「(良かった。生きてる… 生きてる…)」


 コウは、彼女を抱きしめ涙を流す。


「いい加減に… しろ!!」


「ぐふぉ⁉」


 シャ―ロッテが、コウの金的に蹴りを入れた。


 ——————————


「ほんっと、気持ち悪い!」


 シャ―ロッテは、自分の足元で悶えるコウを、不快なものを見る目で見る。


「コウ… 怖いからって、今日会ったばかりの娘を抱きしめるのはどうかと思うぞ…」


『同感だ。ほんと生者って自分勝手ね。気色が悪いわ。』


 ココルとティティーも、コウを軽蔑した。


「あんちゃん…」


 コウの肩に、左手を置くズバク。

 そして彼は———


「一発ぶん殴っていいか?」


 棘の盾を右手につけ、その拳を見せていた。


「ちょっと待って!それで殴られたら、マジで死ぬ。」


 コウは、それを全力で拒否する。

 しかし、周りの人たちはズバクを煽る。


「おう、やったれズバク。徹底的に。」


「申し訳ない。そいつを頼む。」


『なんならいっそ、そいつだけ先に殺してくれても構わないわ。』


「ちょっと待てぇ!!」


 ——————————


 コウは、ズバクの怒りの拳を何とか話し合いで回避し、鍵の探索をする。

 今までも来たことがあるが、重たくて動かすのに手間取っていた置物や家具をどかしながら、探していた。

 シャ―ロッテが発狂する時間になる前に、コウはシャ―ロッテの元へ急ぐ。


 ——————————


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 コウが、シャ―ロッテの元に着くと、シャ―ロッテは発狂して外へ出ていった。

 コウは少し遅れ、彼女を追いかける。

 シャ―ロッテを見失ってしまい、コウは焦る。

 そして、彼は急いで風呂場に向かう。


 コウがドアを開けると、彼の鼻を異臭が刺激する。


「あっ… くっ… るしい… けて…」


 異臭の刺激と共に、シャ―ロッテの苦しむ声が聞こえ、コウは湯舟へと向かう。

 そこには、シャ―ロッテが首をくくっている姿があった。


 コウが、シャ―ロッテの首を絞める紐を斬る。

 コウは、落下するシャ―ロッテを抱きかかえ、湯船に寝かす。


「何やってんだお前!!」


 コウの叫びに、シャ―ロッテが泣き出す。


「分かんねぇよ!さっき、首のない死体に触れたら、オレの父が死ぬ光景が目に浮かんで… 気分が悪くなって… 吐いてたらこの湯銭に、縄があって、それ見た途端何かに操られたかのように…」


 泣き出したシャ―ロッテを、静かに抱きしめるコウ。


「やめろよ… いい加減… 怒るぞ…」


 泣きながらそう言うシャ―ロッテ。

 しかし、コウは、彼女が落ち着くまで、彼女を抱きしめていた。


 ——————————


「次、同じことやったらぶっ殺すからな!」


「なぁ、いい加減許してくれよ。」


 コウとシャ―ロッテは、彼女が落ち着いた後、彼女が見つけた遺体の元へと戻る。

 遺体の元へ戻ると、コウは遺体の胸ポケットへと手を入れる。


「おい、大丈夫か?気分悪くならないか?」


 シャ―ロッテが、コウを心配する。

 コウには、何の影響もなく、彼は書庫の鍵を手に入れる。


「なぁ、この後、俺と一緒に行動しないか?」


 コウが、シャ―ロッテの方を見て言う。

 それに、シャ―ロッテは気持ち悪いものを見る目をする。


「はぁ⁉ お前、どんだけオレの事が好きなんだよ!キモイぞ!」


「ちげぇよ!また、何かあって、死にかけたら危ないだろ。」


 コウの言葉に、シャ―ロッテは顎に手を置き、悩む。


「うーん、そう言われると… 分かった。でもなんか変な事したら、お前の大事な玉に矢をぶっさすからな‼」


「分かった、分かった。」


 コウとシャ―ロッテは、2人で書庫を調べ始める。


「っていうか、よく鍵の場所分かったな。」


「か、感だよ。」


「良い感してるぜ、まったく。

 お?なんだこの本。」


 シャ―ロッテが、机の上にある赤い本を手に取り読み始める。


「おい!これ読んでみろよ!」


 シャ―ロッテがコウに、ティティーの日記を見せる。


「ああ、これか…」


 コウが、それを手にする。

 改めて、コウがその文字を読んでいると、シャ―ロッテの口から驚きの言葉が流れる。


「ほんと、我儘よね。このティティーってやつ。」


「え?」


「だって、そうじゃない。金も執事も、母親もいて、それなのに、失ったことばっか恨んで…

 別に、両親に先立たれたわけでもないのに、勝手に現世に居残って、それなのに周りを恨む。

 我儘にもほどがあるわ。」


「そんなこと言うなよ。」


「何よ、本当の事じゃない。待ってなさいよ。ぜってぇーに見つけて文句言ってやるわ。」


 シャ―ロッテはそう言って、突如天井を見ながら歩き出す。

 そして、本棚の前で立ち止まる。


「おい、お前。オレを肩車しろ!」


「は?なんで?」


「オレの背丈じゃ、この本棚の上に何かあっても取れないだろ!早くしろ。」


 コウは仕方なく、シャ―ロッテに肩車をする。

 しかし、本棚の上には届かない。


「おい!もうちょっと、高くしろ!」


「無茶言うな!これが限界だよ!」


「何やってるんだ、お前ら。」


 いつの間にか、2人の横に、ズバクが立っていた。


 ——————————


 ズバクの肩車によって、シャ―ロッテは本棚の上にあった鍵を手に入れる。


「へっへーん。どうよ!ズバクはすげーだろ!」


「だから、なんでお前が胸を張るんだ?」


「とにかく、鍵は見つかったんだ。ウィジャ盤の部屋に戻ろう。」


 ズバクの言葉で、三人は、ウィジャ盤のある部屋に戻り始める。

 しかし、豪華な廊下の途中で、コウは足を止める。


「ここのドアも開かないんだ。念のため、その鍵が合わないか調べてみてもいいか?」


「ああ、いいんじゃないか?」


 ズバクの許可を得て、コウは、ドアに鍵を差し込む。

 すると、ドアは、ガチャリと開く。


 シャ―ロッテが、その部屋を見て「この部屋は…」とつぶやく。


 その部屋は、シャ―ロッテの父が、殺された。紫髪の少女がいる部屋だった。

 しかし、その部屋に少女はおらず、紫ドレスの骸骨、その手前に緑ドレスの骸骨、その手前に白ドレスの骸骨。それと、血まみれになったベッドがあった。


「随分と酷いありさまだな。」


 ズバクがつぶやく。

 コウも、辛くなってくる。

 彼らが戻ろうとした時———


「私の部屋で、何をしているの。」


 後ろからココルの声が聞こえた。

 コウとシャ―ロッテ、ズバクが後ろを見ると、ココルが、剣を抜いて立っていた。

 シャ―ロッテの「あ?あんた。何言ってんの?」という言葉を遮るように、コウが言う。


「お前、ティティーだな?」


「あら、気づいてたのね。」


 2人の会話に、シャ―ロッテが疑問を飛ばす。


「は?どういうことだよ!」


「あいつは、ココル大尉の体を奪えるんだよ。」


「そういうこと。さて、この部屋に鍵は隠してないわ。さっさと出てってくれないかしら?」


「やだね…」


 ティティーの言葉に、シャ―ロッテが静かに言う。


「は?」


 ティティーは、訳が分からないような顔をする。


「やだってんだよ!」


 シャ―ロッテが、ココルの首の横にある鎧を引っ張る。


「せっかく、てめぇと話せんだ。せっかくだから、文句言わなきゃ気が済まねぇ。」


「は?」


「おい、シャ―ロッテ。だから、すぐに喧嘩を売るなっていつも言ってるだろ。」


「ズバクは黙ってろ!!」


 シャ―ロッテが、ズバクを黙らせると、改めてティティーの方を見る。


「てめぇ、自分ばっか。失ったみてぇなこと書いてたけどなぁ。金も、執事も、母もいて、先立たれたわけじゃないのに、現世に勝手にいながら、生者を恨んで…

 最後にゃ、でっけぇ胸と身長も得る気か?あぁ!」


「何の話をしているの…?」


 少し困惑するティティーに、シャ―ロッテは続ける。


「オレには、全部ねぇんだよ!金も、母も、父も、無論執事も。」


「それに、胸と身長ね。

 何?ただ羨ましいって妬みかしら?」


「あってっけど!ちげぇよ。

 オレは、お前と違ってなんも持ってねぇけど、人を恨まないし、お前より幸せだと思ってる。

 理由は分かるか?」


「さぁ、知恵も無いんじゃないかしら?」


「て、てめぇ。

 そうじゃなくて、オレは前を見てる、お前は今まで持ってたものばっか見ていて、今を受け入れられない。だから、もはや行き場所のない恨みが永遠にお前に残ってる!

 失ったもんばっか、見てねぇで。新しい大切なもの(たからもの)を探せばいいだろ!」


「へぇ、私に説教ね… 確かに、私は過去ばかり見ているわ。けれど———」


 ティティーが、剣を抜き、ズバクへと向ける。


「お前も、すぐに分かるわ。どれだけ前むいて手に入れた宝といえど、失えば、それしか思うことができないってね。」


 ティティーが、シャ―ロッテを押し飛ばし、ズバクを刺そうとする。

 そして———

 それは、シャ―ロッテによって防がれた。

 シャ―ロッテが、素手で剣を持ち、ズバクに刺さることを防いだ。


「シャ―ロッテ!」


 ズバクの叫びに、シャ―ロッテは笑顔を返す。


「へぇ、お前。やはり、失うのは怖いんじゃない。」


「ああ、怖いよ。だから、失わないように庇うんだよ。失ってから、関係ない奴を殺すんじゃなくてさ!」


「つっ」


 ティティーは思い出す。騎士たちが、ダメ執事が、父が、母が、姉が。必死に自分たちを守ってくれた時のことを。


「(私は、あの海賊を殺した。それで、復讐はすんでいた?だから、他の人を殺すのは間違いだったのか?

 でも奴らは、私達の思い出の品に触ろうとした。

 だから?良く考えたら、彼らはそれが私達の宝物って分からない。話し合えば解決できたかもしれない。

 そこに気づくのが遅かった。だからあの茶髪のようなやつの異常性にも気づけなかった?

 もともと、平和に解決できないやつとわかっていたら… 彼らを失わずに済んだ…?)」


 ココルの体が、突然倒れる。


「ココル大尉⁉」


「ん、あれ?ここは?」


「よかった。ココル大尉が無事で…」


 コウは、ココルを抱きしめる。


「ちょ、ちょっと。コウ。やめてくれ。」


「まったく、どこでもいちゃつきやがって。」


 シャ―ロッテが、2人から目を離す。

 すると、シャ―ロッテの目の前に紫髪で、紫のドレスを着た少女が姿を現す。


「改めて、こんにちは。姿を見せるのは、初めてね。私がティティーよ。」


 少女が、シャ―ロッテに向けて手のひらを見せ、握手を催促する。

 しかし、シャ―ロッテは、胸の前で腕を組み、ティティーを見下ろす。


「へ、なーんだ。お前、オレより背も胸も小さかったのか。」


 その言葉に、ティティーは手を下ろす。


「貴方… 6歳相手にその自慢してて虚しくならない?」


 そして、彼女はベットに座る。


「まぁ、いいわ。貴方の説教を聞いて、私も新たな宝探し(トレジャーハント)の旅に出ようと思ったわ。黄泉の世界にね。

 でも、この館は、私の怨念でなんとか立っている物。私がいなくなったら、壊れると思うわ。

 私は、1時間ほど、この館にお別れを告げるわ。貴方達はその間に、ここから出ることをお勧めするわ。」


「は?お前が玄関に鍵を閉めたんだろ?鍵が無きゃ出れねぇじゃねぇか。」


 シャ―ロッテの言葉に、ティティーはベッドから降りる。


「ああ、まだ教えてなかったわね。ココルさん、貴方の胸の谷間に隠してたのよ。」


「は?」


 全員が唖然とし、ココルの方を見る。

 ココルが、自分の胸に手を入れると、そこから、小さな鍵が出てきた。


「いつの間に…」


 ココルの質問に、少女は答えた。


「ゲームが始まって、彼らが鍵を探しに出かけてすぐに、貴方の体を操ってしまっておいたわ。」


「なぜ、そんなところに…」


 シャ―ロッテのつぶやきに、少女が答える。


「この前、館にきた女性が、やってたのよ。それを見てかっこいいと思ったから、やってみたのよ。」


「そんな理由で…」


 コウが「(そんなところに、あったらもとより鍵を手にすることは出来なかったな)」と思いながら、つぶやいた。


 ———————————


 赤い日記が、一人でに開き、インクの染みた羽ペンが、文字をつづる。


『2人の男と2人の女が家に来た。

 男女のペアが2組のようだ。

 お兄さんは、とても力強く、常に冷静で頼りになる人だった。

 小さなお姉さんは、子供っぽかったけれど、前を向いて生きていて、幸せそうだった。

 大きなお姉さんは、怖がりなのに、3人をとても信頼していて、恐怖に耐えようと頑張っていた。

 そして最後の1人は———


 すぐ女の子に、抱き着く変態でした。

 これから私は、旅に出ます。

 だけど、こんな変態に捕まらないように気を付けます。』


 次回予告

 無事に、館から脱出できた4人。彼らを迎えるのは、ヒルだった。

 そして、彼らに新たな悲しみが襲う。


 次回 18話 現実

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