表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドプリズン 〜その監獄からは逃げられない〜  作者: HAKU
第二章 ティティーの館

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/25

16話 ティティーの日記

 前回のあらすじ

 父の死の光景を見たシャーロッテは、発狂しどこかへ行ってしまう。

 シャーロッテを探し、風呂場に来たコウは、首を括り死んでいるシャーロッテを見つけた。

 ウィジャ盤が指し示すは『A』の文字、彼らに残った時間はわずか。

 コウは、今まで開かなかったドアに鍵をさす。


「(ティティーはこれを、書庫の鍵と言っていた。新しい部屋なら、鍵があるかもしれない。)」


 5つ目のドアに鍵を指した時、ドアの鍵が空いた。

 中は大量の本が並んでおり、そこが書庫であることを確定する。


「何か、鍵かヒントになるものは…」


 コウは、机の上に赤い本がある事を見つけた。

 コウは、本を手に取る。

 そこには、子供らしい字で『ティティーの日記』と書いてあった。

 コウは中を開く。


『10月2日。おねぇさまが日っきを書いていたので、わたしも書くことにした。これから日っきがうまっていくのが楽しみだ。』


『10月3日。リティが、わたしのくまのぬいぐるみをほしがってきた。おわかれはさみしいけど、わたしはあの子のあねだから、あの子にあげた。笑顔がかわいくて、にくいわ。』


『10月4日。しつじのやつとかくれんぼをした。おゆうはんまで見つからなかった。わたしってかくれんぼの天才?』


 次々と書かれる日記には、ティティーの生前の記録が書いてあった。

 彼女は父と母、姉と妹の5人家族で、くだらないジョークを言う、サボり魔の執事と、忠誠心がとても強い騎士達と一緒に暮らしていたらしい。

 彼女の日記では、彼女の楽しそうな事が書かれていた。そして―――


「なんだ… これ…」


 コウがページを開くと、血のような赤い文字で次の日記が書かれていた。


『10月31日。海ぞくがおそってきた。

 家が荒らされた。きし達がしんだ。しつじも。

 お父さまとお母さまも。おねぇさまも、リティも。

 そして、わたしも。

 みんな、みんな


 しんだ。


 なんで?


 わたし達は、何もしていないのに、どうしてわたしの幸せをうばうの?どうしてわたしのたいせつなかぞくをうばうの?

 ゆるさない。


 ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ ユルサナイ 


 ゆるさない。

 わたしは、その時、いえにとりついた。何もかもをうばった海ぞくを、つぶした。』


『しばらくして、家には、無礼にも無断で入ってくる奴らが現れた。招待なんてしてない。私の宝物に触れるな!!』


『大工の男が家を訪ねてきた。茶髪で筋肉質の男。

 家族の骨に触ろうとした。だから、殺した。』


『騎士の男が家を訪ねてきた。金髪で、黄金の鎧を持つ男。

 騎士の鎧に触れようとした。だから、殺した。』


 それからも、赤い文字でひたすら殺人の記録が書いてあった。


『死んだ奴らは私の家に住み着いた。魂が心に残った物に宿り、自由に暮らしていた。

 新しい家族ができた私は、人を殺す事を重要に思わなかった。』


『死んでから何年経っただろう。生前の記憶がもう薄い。

 だけども今は幸せ。ある意味、第2の人生ってことなのかもしれない。』


『女の子が家を訪ねてきた。茶髪で、ゴーグルをつけた可愛い娘。』


 その次のページは、のり付けされている様に、血が固まったかのように、張り付いていた。

 コウが、やっとの思いでページを開く。


『コックが殺された。

 飄々としてて掴みどころが無かったけど、とっても親切な奴だった。』


『フランケンが殺された。

 いつも寝る前に本を読んでくれた。お父様のように優しい奴だった。』


『魔鎧が殺された。

 真面目で、自分の仕事を毎日こなしてきた。騎士の手本のような奴だった。』


『怠惰が殺された。

 くだらない話ばかりだったけど、いつも私を笑わせてくれた奴だった。』


『決闘者が殺された。

 いつも私の部屋の前で、私を侵入者から守ってくれる奴だった。』


『あいつが、私の部屋に来た。』


『あいつは、私の家を燃やした。

 生者は再び、私の大切な家族を奪った。

 私の命を奪った。』


『私の恨みは、再びこの家を作り上げた。

 私は再び、生者を信じられなくなった。』


『2人の男が家に来た。

 1人を人質に、1人が鍵を探すゲームをした。

 幼なじみの彼らは、人質は信じていると、鍵探す方は『俺を信じろ。』と言っていた。

 鍵を見つけた男は、人質を見捨てて逃げ出した。』


『3人の女が家に来た。

 1人を人質に、2人が鍵を探させた。

 親友の彼女達も、互いを信用してると言っていた。

 だけど、2人の女が鍵の奪い合いを始め、時間が無くなり死んでいった。』


『2人の男と2人の女が家に来た。

 男女のペアが2組のようだ。

 女1人を人質に、残りの3人に鍵を探させた。

 鍵を探していた女は、父親の死体を見つけて首をくくった。

 男の1人は、女が死んだ事を悲しんだのか、涙目で階段を走り、首がちぎれて死んでった。

 人質は、最後の1人の帰りを待っていた。

 そして、最後の1人は―――

 呑気に他人のプライベートを覗く遊びをする為に、彼らを見殺しにした。』


 日記はそれで終わっていた。

 コウは、最後の文字にゾッとした。

 まるで、自分の事が書かれているようだった。


「何を見ているの?」


 コウの後ろから、ココルの声が聞こえた。


「ココル大尉!?」


「それ、私の日記よね?勝手に覗かないでくれる?」


「お前まさか… ココル大尉の体を奪ったのか!」


「そうよ。だって時間切れだもの。それにこの体。私にしっくりくるのよね。だから、貴方を殺した後、この世界の生者を皆殺しにする旅に出るわ。

 体がないから、家から出られず困ってたのよね。」


 伸びをするココルの体に入ったティティーを睨む。


「なんでそんな酷いことを。」


「もう面倒なのよ。呼んでもないのに人は来るし、勝手に宝物を取っていくし。たまに、生者を信用する為にゲームをするのに、誰も信用させてくれない。皆皆、自分勝手、死ねばいい。」


「皆殺しなんて、残酷なことさせない!!」


 コウが、剣を抜き突撃する。


「へぇ?お前に出来るの?この娘を殺すことが。」


 コウが、ティティーに剣を振り下ろす。その直前、彼女はそう言った。


「きゃ!コウ!な、何をしている!?」


 ティティーが、尻もちをつきそう言う。

 いや、それはティティーではなく、意識を取り戻したココルだった。


「いや、これは…」


 コウが、戸惑っていると、ココルが自分の剣を首に当てる。


「え?」


 ココルがその光景に驚きの声を上げた。

 自分でも何をやっているか、分かっていないようだった。

 いや、ティティーが彼女の腕だけを操っているのかもしれない。


「まさか!やめろぉ!!」


 コウが剣を捨て、ココルの腕を止めようとする。


「ほら、殺せない。」


 ココルが突然笑いだし、剣でコウの胸を貫いた。

 次回予告

 再び蘇るコウ。彼はシャーロッテを助けようと必死になる。


 次回 17話 脱出

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ