第13話 死を招き入れる疑念
『それじゃあ、始めるわ。『D』。』
気が付くと、コウはウィジャ盤のある部屋に戻っていた。
「(あれ?なんでここに?俺は、鍵を探してて、それで…)」
彼のその後の記憶は、定かではなかった。ただ最後に、鋭い痛みと、桃色の髪が見えていた気がした。
「(それで、ここに戻ってきたということは、俺はまた、死んでしまったのか。)」
「おい!なに、ぼーっとしてんだよ!」
コウは、シャ―ロッテの言葉で我に返る。
「人の話聞いてんのか?時間ないし、三人で手分けして、別の部屋を探そうって言ってんだ。」
その言葉に、コウは、声を荒げる。
「駄目だ!!」
シャ―ロッテも負けじと、声を荒げる。
「なんでよ⁉」
「お前、玄関の鍵とか見つけて、1人で逃げる気だろ?」
コウの発言に、腹を立てたシャ―ロッテが、コウの胸ぐらを掴む。
「はぁ⁉ 何言ってんだよ!この状況で、そんなことするほど、オレは終わっちゃいねぇ!」
「信用できるか!!」
「やめなさい!!」
2人の言い争いは、ココルの言葉によって、止められる。
「今は、ここにいる全員で、協力しないといけない状況なんだ。言い争いなんてしてる時間はない。」
ココルの言葉に、腕を組みながら頷くズバク。
「そうだ!今は、言い争ってる場合じゃない。だが、トレジャーハンターの俺達を信用できない気持ちも分かる。」
ズバクが、シャ―ロッテの方を向いて言う。
「どうだろう、シャ―ロッテ。最初の1時間は3人で同じ場所を探索するってのは?」
「ちっ、ズバクがそういうなら仕方ねぇ。おい!クソ男、それでいいな?」
シャ―ロッテが、コウを睨みつける。
「ああ、頼む。」
コウも、シャ―ロッテを睨みつけた。
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3人で、1つの部屋を探索する。
食卓であろう、大きなテーブルが置いてある部屋、そこから3人は廊下に出る。
その廊下には、体の一部が機械化した、大男の遺体が倒れていた。
首の下のカーペットは、黒く汚れており、首を斬られて死んでしまったのだろう。
「これも、ティティーってやつの仕業か?えげつないことをしてくれる。」
コウが、異臭に対して鼻を押さえる。
ズバクも、より怖い顔になる。
だが、シャ―ロッテだけは、何の反応もしなかった。
「この服… どこかで…」
シャ―ロッテが、そう呟いたかと思えば、遺体にゆっくりと近寄る。
彼女は、遺体の横でしゃがみ込み、そっと、遺体の体に触れる。突如———
「うう…」
シャーロッテが、頭を抱えだした。
「シャーロッテ!大丈夫か!?」
ズバクが、シャーロッテの元に駆け寄り、背中に手を置く。
「くっ…」
すると、ズバクも頭を抱え始める。
「おい、2人ともどうし…」
コウも、2人の元へ駆け寄ろうとした、その時―――
「わぁぁぁぁぁぁ!!」
シャーロッテが、突然発狂して、廊下の先へと走り出した。
「待て!シャーロッテ!!」
ズバクが、彼女を追いかける。
「な、なんだ?」
コウは、不思議に思いながら遺体に触る。
遺体の胸部には、妙な膨らみがあり、服のポケットを確認する。すると、ポケットから小さな鍵が出てくる。
「よし、鍵だ。早く、2人を呼び戻さないと。」
しかし、2人の姿は、どこを探しても見つからず、コウは、一度ココルの元に戻った。
――――――――――
ウィジャ盤には既に、『T』の文字が示され、コウは焦りながら、鍵をココルに見せる。
「ココル大尉!鍵が、鍵が見つかりました。」
「コウ!」
ココルは、笑顔を見せた。しかしその顔は、直ぐに消え、不思議そうな顔をする。
「コウ、彼らはどうした?」
コウは、膝に手を置き、息を整えながら言う。
「途中ではぐれてしまいまして、一度こっちに戻ってないかと思い…」
「そうか…」
「とりあえず、ティティー!鍵を見つけたぞ!! ココル大尉を解放しろ!!」
コウが、ウィジャ盤に向かって、鍵を見せつける。
しかし、ウィジャ盤は恐怖の文字を示した。
『残念だけれど、その鍵は書庫の鍵であって、外に出る為の鍵じゃないわね。』
「なんだと!?」
『早く、新しい鍵を探してらっしゃい。』
「くそっ!!」
コウが、鍵を地面にたたきつけ、ドアの外に走り出す。
しかし、その足は―――
「待ちなさい。」
ココルの声によって、止められた。
「何を言ってるんです。ココル大尉!急がないと!!」
コウが、振り向くとそこには、『H』を示すココルの姿があった。
「急いでも、もう遅いわ。せっかくだから、直ぐに鍵を見つけられたら、その場で解放してあげようと思ってたのだけれど、残念だわ。」
ココルは、ウィジャ盤から手を離し、ゆっくりとコウに近づく。
「館で働く、4人の男女。
1人が、ぶらぶら遊んで、3人になった。
館で働く、3人の男女。
1人が、忘れ物をして、2人になった。
館で働く、2人の男女。
1人が、運命を託し、1人になった。
館で働く、最後の1人。」
「ココル大尉?何を言って…」
コウが、困惑していると、ココルは、ゆっくりと自分の腰に携えてる剣に、手を伸ばす。
「仲間に殺され、館には誰もいなくなった。」
コウの意識は、そこで途切れてしまった。




