第12話 Death
『お前らに死を』
突然、プランシェットがそう示した。
「急に、ふざけないでください!!ココル大尉!!」
「い、いや…ココは何も…」
焦るココルを無視して、再び動き出す、プランシェット。
『仲間をすぐに疑うなんて、本当に生者は哀れね。』
「お前、なんなんだよ。」
シャ―ロッテは、ウィジャ盤を睨みつける。
『申し遅れたわね。私は『ティティー』。この館の当主よ。』
ティティーからの言葉を見て、ズバクが、質問する。
「ティティーさんとやら、お前は、俺達に死を、っと言っていたな?どういうことだ?俺達、お前の怒りを買うようなことしたか?」
『ええ、したわ。というより、私は、お前ら、海賊が大っ嫌いなのよ。』
「オレらは、海賊じゃねぇよ。」
『私の大切なものを、奪ってたのは同じでしょ?』
「大切なもの…?もしかして、ここにあった金のことか?持ってても、あの世じゃ金にならんだろ!!」
シャーロッテが、叫ぶ。
『お黙りなさい!お前ら、生者はそう言って直ぐに、私の宝物を奪っていく。許せないわ。
けれど、私は、お前ら、生者と違って優しいから、お前らにチャンスをあげるわ。』
「チャンス?」
コウの質問に、ティティーは答える。
『ゲームをしましょ?私が、『D』を示したらゲームスタート。1時間ごとに、私が、『E』、『A』、『T』、『H』の順に、文字を示すわ。『H』まで、示されたら、お前らを、全員殺すわ。
でも、この館の中にある鍵を使って、この館から出られた者は見逃してあげる。簡単でしょ?』
「『D』、『E』、『A』、『T』、『H』… 『Death』ゲームか。」
ズバクが、自分の顎に手を当てる。
「ふざけんな!誰がそんなゲームなんてするか!!」
シャーロッテが叫ぶが、ティティーが、冷たく告げる。
『しないのなら、今、殺す。』
「ちっ、分かったよ!やればいいんだろ!!」
「あ、あの… ココは?…」
ココルが、ウィジャ盤から手を引っ張りから聞く。
『お前は、私の伝言をしてもらう。脱出用の鍵を見つけた奴が、生存者全員を集めて、再びここに戻ってきたならば、解放してあげる。』
「そ、そんな…」
ココルが、絶望する。
『それじゃあ、始めるわ。『D』。』
ウィジャ盤が、『D』を示し、ゲームが始まる。
「ま、3つに別れて、鍵を探すしかないな。」
シャーロッテが、頭を掻きながら言う。
「けど、それじゃあ、誰が鍵を見つけたかとか、鍵を見つけた人が他の人を探すこととか、出来なくならないか。」
『時計を使えば、良いじゃない。』
コウの悩みに、あっさり答えるティティー。
『私の父が、時間に厳しかったからね。この館の至る所に時計があるわ。時間も合わせてあるし、メンテナンスもしてあるわ。
時間を決めて、戻ってくれば良いじゃない。』
解決策を言うティティーに、ズバクが聞く。
「ティティーさんは、俺達を殺したかったんじゃなかったのか?なぜ、そんなヒントをくれる?」
『序盤から、絶望されても困るもの。どうせ最後は、裏切りあいになるのだから。』
「ま、時計があるなら、今から1時間後、またここに戻ってくるように、しようか。」
シャーロッテが、そう言って、部屋を出る。
「ま、ねぇちゃんは、ひとりぼっちで、怖いだろうが、1時間だけ我慢してくれよ。」
「ココル大尉!直ぐに、鍵。見つけてきますから。」
ズバクとコウが、部屋を出る。
「あ!ま、待って!!」
取り残されたココルは、膝を抱え、3人の帰りを待つ。
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「ちっ、なんでオレがこんな目に…」
シャーロッテが、扉を蹴り飛ばし、次々と部屋を調べる。
大きなテーブルのある部屋にある扉を蹴飛ばし、廊下の途中で足を止めるシャーロッテ。
「こ、これって…」
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1時間後、コウとズバクが、ティティーが『E』を示している部屋に戻る。
しかし、シャーロッテの姿は無かった。
「遅いな。」
コウが呟く。
『裏切られたわね。』
ティティーがそう示す。
「どういうことだよ。」
コウの質問にティティーは答える。
『玄関の鍵でも見つけて、その後、お前らから鍵を取られないようにさっさと、館から出たのよ。』
「ふざけるな!シャーロッテは、そんな事するやつじゃない。」
『生者なんて、皆裏切るわよ。生きたいもの。』
「そ、そんな…」
ココルが、膝をつく。
「くっそ、あいつ… 最初から信頼できなかったんだ俺は…」
コウの愚痴に、ズバクが、コウの胸ぐらを掴む。
「シャーロッテは、そんなことはしねぇ。」
「お前も、俺らを裏切る気だったんだろ!もう信用しねぇからな!」
コウが、剣を抜き、ズバクに斬りかかる。
「いい加減にしろ!!」
ズバクは、肩にある盾を持ち、剣を止める。
「頭を冷やしてろ!! 俺は、シャーロッテを探してくる。」
ズバクが部屋を出る。
「逃がすか!」
コウも後を追う。
ズバクに追いつき、攻撃するコウ。
ズバクは、盾でそれを防ぐ。
「少し、落ち着いてろってんだ!!」
ズバクが、棘の着いた盾を持ったまま、パンチをする。
しかし、それは、コウに避けられる。
コウは、無防備になったズバクの首を、切る。
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『『A』』
コウが、ズバクと争っているうちに、また1時間たち、ティティーが『A』を示す。
「ココル大尉。安心してください。直ぐに、鍵を見つけてきますから。」
「コウ…」
ココルが、コウを泣きそうな目で見ていた。
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「くそっ、なんでこのドア開かねぇんだよ。」
コウが、鍵を探すが、そんなものは全く見つからず、最後に辿り着いた、豪華な廊下の中心にあったドアは、開くことすらなかった。
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『『T』』
「すみません、ココル大尉。鍵を見つけられなくて…」
落ち込むコウにむかって、笑顔を見せるココル。
「もう、大丈夫よ。もうあと1時間しかない。鍵が見つかっても、戻ってくる間に時間が来たら元も子もないし、鍵を見つけたら、コウはすぐに、ここから脱出しなさい。」
「なにを言うんです!!ココル大尉!!」
叫ぶコウを見て、ココルは首を振る。
「2人とも死ぬより、片方は生きていた方がいいだろう。これは、命令だ。」
「くっ、絶対、絶対一緒に脱出してもらいますからね。」
コウは、そう言うと部屋を、走って出た。
『どう?頼りの無い男に、自分の命運を託す気持ちは…』
「もう託してない。彼だけでも、生き延びれれば良い。」
『その未来も、無くなったわね。皮肉にも、お前自身から、その未来を消し去ったわ。』
「!? 何を言っている。」
ティティーは、ココルの質問に答えず、歌を歌い始める。
『館で働く、4人の男女。
1人が、ぶらぶら遊んで、3人になった。
館で働く、3人の男女。
1人が、忘れ物をして、2人になった。
館で働く、2人の男女。
1人が、運命を託し、1人になった。
館で働く、最後の1人。
仲間に殺され、館には誰もいなくなった。」
ココルは、プランシェットで、『H』を示し、部屋から出ていった。




