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天使よ、故郷を振り返らずに歩け

作者: 秋葉竹



言葉と

こころと

理想と

夢とを

嘲笑われ

翼を傷つけられたのは、だれ?


彼女こそほんとうの天使だと

ずっと信じていられたけれど

それを聴くと

いつも彼女は

目を伏せて

ひっそりと

微笑んでいたのだけれど



千切られる寸前まで

折り曲げられた翼を引きずった

地上の天使が、

場違いにも、

ギラギラした

ネオンが点滅をくりかえす

夜の街を歩いているのをみた


汚れてしまった悲しみに

気がついてもいないんだろう

けっして俯かない頰にあたる風と水滴に

ピクピクと泣き黒子のあたりを痙攣させて、

でも、昔睨んでいたころのような

敵のこころを射抜くような

焼けつく視線も今ではできずに

あたたかくやさしげな瞳を晒して

平坦な道路に蹴つまずいて歩いている


ごめんなさい、ごめんなさい、と


だれに謝ればよいのかもわからず

もはや翼とは呼べない

血と泥と醜さと弱さに塗れた

羽根のかたまりを引きずって

昼間の熱のまだ冷めやらないアスファルトに

おぞましくも掠れても痛ましい絶望を

細く長い血の道として描きつけながら

躓いては起き上がり、

蹌踉めきながら

歩いている


誰か彼女のそれでもまっすぐな瞳を

みてやってはくれないだろうか?


生きることを

もう諦めることだけは

してはいけないと

幸せな過去を振り返り云いきかせる


私にできることといえば

目を逸らさずにみていてあげることだけ

今夜は、熱い夜になりそうだ


そしてその傷だらけの天使は

未来を語らない私じしんの

ゆらめく影でもあるのだから

汗が引かないほど熱い夏の夜なのに

これほど冷たい悲しみに

こんなところで突き刺されることに

なろうとは、


いったいどう想えばよいのだろう

堕天使の最後に残った涙の一滴さえ

焼き尽くすための試練が訪れるであろう

そんな夜、


今夜は、長い夜になりそうだ







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