「江舞④」
今日は青藍のおかげでなんだか自分も女子高生になったみたいな気分だった。高校では部活三昧だったから、楽しかった。一番嬉しかったのは、自分が好きだって言ったお店でも嫌な顔せずに回ってくれたり、興味を示してくれたところ。素敵だなぁって思った。あと、可愛い。
青藍は高校生だし、お母さんも厳しいらしいのであの後すぐに解散したけど正直また近いうちに会いたいなぁって思っている。青藍を送り届けて一人になった時間。どうしようかなって思ってる時間に決まってくる通知はこの人しかいない。気になっちゃうと嫌だからと思って、通知を切っておいた未琴からのラインは三十分前に入っていた。
いつも通りの当たり障りのないものだと思っていたのに、
『好きな人できた』
『一個上の先輩』
通知を既読をつけずに見た。
体が強張るのがわかり、反射的にスマホをその場で落とした。手から滑り落ちた、の方が正しい。
言葉も正気も失う。こんなんおかしい。自室の中の、視界に入るものを全て振り払い、投げ飛ばした。青藍に褒められた濃いめのリップもその中の一つだった。こんなに物に当たるなんて、とかなんとか考えてる暇すらない。
ぞくぞくする、嫌だ、未琴に好きな人がいるのが嫌だ、自分以外の人間で遊びならまだわかった、いや無理だ。
未琴が他の女の子と会ってるって事実を頭の中で考えるより、一瞬だけ忘れさせてくれるそんな存在に縋っているのも事実だ。
女の子が何回も家に来て、そのまま抱いて朝が来て。何回も見てきた景色だったけどこの時間と空間には飽きというものはなかった。あ、女の子に飽きることは少々あったけど。未琴は私を遊び相手として見てる。私も女の子たちを遊び相手として見てる。嫌なことは何もされてないししてないのに、心がここにあるってだけでなんでこんなに虚しくなるんだろ。溢れる涙を両手で精一杯受け止めた。
投げ飛ばしていたスマホをようやく拾って、画面を見たら、すごく夜遅い時間だったけど、青藍ちゃんから
『今日はありがとう! 素敵なお洋服も見つけてくれて、いろんなお話ができて楽しかったです。もっと江舞ちゃんのこと知りたいので、また会おうね。ゆっくり寝てね。おやすみなさい』
と来ていた。優しいなぁ。そしてその優しさが今の自分にとってとてつもなく痛い。こんなお花みたいな心が私にもあったのかな。
元々なかったのかな。




