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ひあそび  作者: 葵果音
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「江舞⑯」

大好きな彼女と同棲を始めてからしばらく経った。今日も朝から脱ぎっぱなしの服のこととかお菓子のゴミとかいろいろ言われて、片付けた。自分と住めるのは青藍ぐらいしかいないと思う。自分ももっと自炊できるようにならないとなぁ。

ずっと前から想像できていたこの光景は紛れもない幸せだ。

「今日夜ご飯なあに」

「シチューにしたよ」

青藍には好きなお菓子も、好きな料理も知られている。私の好きな料理を密かな作ってくれる時は、私が元気がないことを察している時。

「嬉しい、ありがと」

「すっごくおいしく作れるようになったから、楽しみにしてて」

飾らない優しさと、くどくない愛が心をきゅんと締める。本当に好きだな、青藍のこと。 




学校が終わって、ぐだぐだしながら帰る。

青藍の手料理は二人分ぐらい食べれるというほど好き。この日もそのぐらい食べて心身が幸せになってあっという間に今日は過ぎ去る。

青藍と付き合ってから、幸せすぎて怖い時がたまに訪れる。特にそれは、夜だった。

「青藍がいないとやだよ、どこにも行かないで」

「どこにも行かないよ」

「絶対私の方が青藍のこと好きで辛いんだけど」

「そんなことない、私の方が江舞ちゃんのこと愛してるもーん」

ベッドの上で、寝る前に毎日交わす世界一幸せな会話。これも、もっと私を怖くさせた。

「江舞ちゃん、何かあったの?」

「え、なにもないけど」

「ならいいけどさ、いつもより素直な感じだから変だなぁって」

「なにそれ、江舞が素直だと変なの?」

それには少しむっとした。

今日は青藍よりも遅く寝て、いつも寝顔を撮ってくる仕返しをしようと思ったのに、また青藍の膝の上で寝ていた。目が覚める世界と睡眠の世界の狭間で聞こえていた言葉を思い出す。

「江舞ちゃん、愛してるよ」

もしかしたら夢かもしれないけど、それでも良かった。朝起きてまた変わらない朝がきてしまえば、不思議とこの怖さは消えていく。



 それにしても、将来が定まらなかった。

見学や実習に行っても、求人募集をみても、よくわからないし、オーナーともうまくいかないことが多かった。

 青藍と暮らしていきたいからやっぱり美容師として生涯稼ぎたいし、欲を言えば独立をしたい。

こんなことを考えるのはずっとおとぎ話だと思っていたんだ。

価格が安めの店ではなく、できれば都会にある価格帯が高めのサロンの方が独立の夢には近くなる。技術だけでなく接客マナーも一流のものが身につくが、きっと絶対に忙しくなる。ストレスも溜まったりして青藍にぶつけたりとか、私の性格上あり得る。

今、相当色々なことを覚悟しなければならない時期かもしれない。今が楽しければそれでいいなんて、もしかしたら浅はかな考えだったのかもしれない。それは今までの私の生き方を否定することになる。


江舞ちゃんのモデルの子は、シチューが好きです笑

もし将来一緒に住めたら私もシチューを作りたいと思っています!

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