第十六章 「春陽」
高校最初の二年は、ゆっくり過ぎていったけど、江舞ちゃんと会ってからの私の高校生活は秒単位で過ぎていったと思うほど早かった。いろんな人と出会って、中学の卒業式に感じた気持ちの何倍も濃い気持ちを抱えている。世間は広くて、新しい世界は自分の行動だけでどこにでもいけること、江舞ちゃんが教えてくれたの。でも一人で恋愛ってできなくて、私の話を聞いてくれる友達がいて、見守ってくれる人がいて、、、
大切な人に悲しい想いをしさせたくないと思い直すことができる。わからない未来も懸命に進んでいくしかない。ふたりで生きる未来の方が長いんだから、寄り添っていこうね。
「青藍、おはよう〜」
「おはよう、真美」
「高校生最後のおはよう、だね」
「三年間ありがとうね」
「もうずっと一緒にいるから、三年とかあんまり気にしてなかったかも」
卒業式の朝は、江舞ちゃんに送ってもらおうとも思ったけど、真美と二人で最後は行きたかった。
「確かに、でも今年は本当にたくさん助けてもらったから、、、」
「青藍が幸せなら、私はそれでいいんだよ」
真美の優しく微笑む姿に、春風に乗って幸せが運ばれてきたと思った。
「江舞さん、今日来るの?」
「、、、うん、実はこの髪型も朝やってくれたんだ」
「え! すごい、朝から、こんな丁寧に?」
「そうそう、素敵だよね」
「愛されてるなぁ」
「よかった、青藍が自分の気持ちに正直に生きれて、幸せになれて」
「真美も、好きな人できたら教えてね」
「当たり前じゃん、一番に最初に言うよ」
私は悲しくて冷たい人間かもしれない。
世界平和を唱えたところで、私が直接力になれるわけない。世界のみんなを救うなんて夢を見させてダメだった時が残酷すぎるから、そんなこと言わないし思わない。だから、自分が守っていける範囲の大好きな人たちだけを守っていく。今守ってる人でも、お別れの瞬間が来てしまうかもしれない。その時に怯えるんじゃなくて、なら最後の最後まで守っていけるようにしよう。
成長を嬉しくも寂しくも感じると口を揃えて言う先生たちとのお話も今日で最後だった。卒業式も無事に終わり、最後に写真を撮っていたり、クラスで集まっているみんなを見て私の気持ちは込み上がってきた。
クラスの友達がたくさん声をかけてくれることなんか無いと思ってたのに、
「青藍ちゃん、写真撮ろう!」
と笑顔でこっちにきてくれる子達がいた。
「もちろん!」
写真を撮るのも苦手だったけど、今日の写真は彩度が上がったように見えていつもより写りもいいように見えた。
ここにいるこの高校のみんなが揃うことはもうなくて、って考えると不思議だった。高校の入学式の時に思ったことは一つ。何があっても卒業式で笑顔でいれたらそれでいいんだって。
「青藍ちゃんと恋バナとかできて良かったよ〜、またお話ししようね!」
「私もいろんな話ができて楽しかったよ、大学生になっても遊ぼうね」
「あぁ、青藍ちゃん泣かないでぇ」
青い空を見上げて涙を堪えていたら、友達が目を丸くさせていて、急に黄色い歓声をあげた。
「青藍ちゃん、後ろみてごらん」
私は大好きな人が近くにいることすら気づかないほど、今の寂しさや晴れやかな気持ちを両手いっぱいに抱えてるようだ。
後ろを見ると、
「江舞ちゃん!」
「卒業おめでとう、友達といっぱい写真撮ってるから、いつ行こうか迷ってたんだけど」
そう言って、大きな花束を持って駆けつけてくれた。金髪バイクの王子様に似合わないキザな行動にちょっとびっくり。
「言葉じゃ伝えられないぐらい好き」
「ありがとうね、ほんとに嬉しい」
ジタバタする私を愛おしそうな目で見つめてくれる。
「あんまり可愛いことしないで」
江舞ちゃんは周りを確認せずに、私のおでこにキスをした。一部始終を見ていた女の子たちが悶絶しているのが少し伺えた。
「言ったじゃん」
「江舞ちゃ、、、」
「みんな目丸くしてたから何が起きたかと思ったよ」
「やっぱり、江舞がイケメンだからかな」
「かもね」
江舞ちゃんがふざけてそんなことを言う。それがいつもは涙になって出ることなんか一切ないのに、いつも通りの幸せが今も続いてることに気づく。
「泣き虫青藍でてるよ」
笑いながら私の顔を覗き込む江舞ちゃんの姿をやっとしっかり確認すると、いつもより薄めのお化粧で、ドキッとした。
「きれい、、、」
「ありがと、」
照れ笑いが隠しきれてない江舞ちゃんも、どの瞬間の江舞ちゃんもだいすきで、誰がなんと言おうとこれからも私が守っていくよ。
青い空を見つめて悲しい気持ちになること、今までたくさんあったけれど、春という桜が舞うこの季節に好きな人と手を繋いで歩ける幸せがあって本当によかった。高校生の一番の思い出は、確実に江舞ちゃんだね。




