第二章 「火光」
ちなみに作者はこのシーンがかなり好きです。
江舞ちゃんは名前のモデルと人物のモデルがいて、名前のモデルの子が美容師を目指しているのでそれに寄せました♡
あの日は、朝から大変だったけど、遅刻はせずに、しっかり授業を受けて一日が終わった。
江舞さんと連絡先を交換したものの、特に変わった変化はなく、一週間ほど経った。そういえば今朝も姿を見ていない。
当たり障りのない日常、非日常ってどこかに落ちてるものじゃないのかな。
「青藍〜、今日カラオケ行かない?」
「あー、ごめん。今日夜ご飯の当番が私だから、早く帰らないといけないんだよね。」
「そっかそっかあ、じゃあまた誘うね!」
「ありがとう!」
クラスで一番仲がいいのは、真美という子だ。おだんご頭がトレードマークの、キラキラしている子。両親が共働きで忙しいので、週に一回だけだけど、自分が変わって夜ご飯を作っている。
何も変わらず、いつも通り校舎を出た。このあとは、スーパーに寄って、食材を買って、あ、ご褒美に何かお菓子でも買っちゃおうかな。でもまだ時間があるし、ゆっくりゆっくり。計画性が何事も重要。
「あれ、おーい、青藍ちゃーん。」
どこかで一度だけ聞いたことのある声がした。
そう声がした方へ振り返ると、大きいバイクに乗るウルフカットの女性がいた。
「え!? 江舞さん、何してるんですか? こんなところで、、、」
「え?青藍ちゃんのお迎えに決まってるじゃん。」
来てなんて、言ってない。悔しいけど、バイクに乗る江舞さんはずいぶん様になっていた。
「いやー女子校って聞いたもんだから、テンション上がっちゃってさ、かわいい子多いね〜。」
「女の子、ですか?」
「あー私、バイなんだよね。女の子も男の子も好き。あーでも、やっぱり、一番かわいいのは、、、青藍ちゃんかな」
そう言って、こっちを見つめてきた。チャラチャラしてるな。
「あの、そういうのいいですので!」
江舞さんの調子に乗せられそうだった。
「とりあえず、乗って?」
「いやいやいやいやいや、結構です。」
「青藍ちゃんのために来たんだけどな」
そんなやりとりをしていると、大衆の目を集めていることに気づいた。あの人なんなの、かっこいい、などというさまざまな声が聞こえてきたので、
「わ、わかりました。乗ります。」
痺れを切らして承諾した。
バイクに乗るのなんて初めてだったから、恐る恐る乗った。怖い。
「大丈夫? 初めて?」
「は、はい、、、」
「しっかりつかまって。」
江舞さんの腰に腕を回すと思ったより細くて、どこまで力を入れていいのかわからない。
「青藍ちゃん、もっと力入れていいよ」
「はい、、、」
「もっと、」
「は、はい」
「あーそんぐらい、いくよ」
かなりぎゅっと抱きしめたままバイクが走り出した。風がすごかった。江舞さんの少しキツめなコロンの匂いで、いい意味で酔いそうになった。首にタトゥーが入っていたり、人は見かけによらずというけれど、見た目通りやっぱりイケイケな感じなのかな。でも江舞さんが迎えに来てくれた瞬間に、当たり障りのない日常なんていうものは捨てられいた。私はいつだって計画性重視だったのに、今日の計画はこの人のおかげで崩れてしまう。
江舞さんは私の最寄駅まで送ってくれた。
「ありがとうございます。この間の朝も、今日も。」
「気にしないで。私がやりたいと思ってやってることだから。」
気になってたことを一つ質問してみた。
「そういえば、なんで一週間ぐらいトイレに顔出さなさかったんですか。」
「なぁに、そんなに気になる? 会いたかったの?」
「違いますけど」
「一週間休んで、友達と旅行行ってた。」
専門学校ってそんなに融通が効くんだ。
江舞さんは何か思いついたように言い出す。
「そうだ、今日さ、このあと空いてる?」
「あ、それが、」
そこで、私の携帯が鳴った。確認してみると、お母さんからだった。
『せいらへ
学校お疲れさま、今日の夜ご飯は買って帰ろうと思うので、作らなくても平気です。毎週ありがとう。たまにはお友達と遊んできてね。』
「どうかした?」
「このあとなんですけど、今、空きました!」
「え?」
どゆこと?、と言いながら二人で笑った。
「それはよかった。そしたらさ、一個だけお願いしてもいい?」
「できることなら、基本なんでも大丈夫ですけど、、、」
江舞さんのことだから、おかしなことされるのかな、私もタトゥーとか彫られたらどうしよう。
「そんな怯えなくても、痛いことはしないって。青藍の髪の毛さ、私が、染めてもいい?」
「え、ええ!?」
「あんまり興味ない? 髪染めるのとか。」
江舞さんは私の髪を優しく手に取り距離を縮めてきた。
「いやそういうわけじゃないんですけど、そんなことできるんですか?」
「美容師の専門学校が、青藍ちゃんの最寄りの近くにあるんだけど、そこに通ってて、実習場所が借りれるから、どう? もちろんお代は頂かないし。」
おしゃれに疎い私でも知る美容師名門校の名前だった。これは、カットモデル、ってやつ?髪を染めることに興味はあったけど、勇気は出なかったし、この機会に染めてみてもいいのかな。でもこんな、よくわからないチャラチャラした大学生の女の人に女の命と言われる髪を預けても平気なのかな。
こんな不安と疑いは顔に出ていたようで、
「あ、今、こんなチャラチャラしたお姉さんに私の綺麗な髪の毛預けていいのかなって、思ってるでしょ?」
「え、いや、そこまでは」
「大丈夫。私が失敗したとしても先生が染め直してくれるし、そして絶対私は失敗しない。私のこと信じて?」
出会ってすぐのお姉さんの言うことなんて、信じていいんですか。
なんて言ってたけど、されるがまま言われるがままにしてたら美容室のようなところに連れて行かれていた。専門校の教室のような場所で、知らない学生がいたり、遠くには私のようなカットモデルらしき子もいた。だけどもっと親交が深い関係だろう。
「失敗したら本当に怒りますよ。」
「絶対ない、失敗しない」
「エマちゃん、もしかしてモデルさんスカウトしたのー?」
すごくキャラが濃そうなショートカットのお姉さんと、
「江舞、また女の子、ひっかけてるね」
すごく綺麗でいい匂いのするお兄さんが出てきた。お姉さん、お兄さんと言っても一個上とかだろうけど。
「そんなんじゃないって、この子の髪染めたいんで場所、借りていいですか?」
「あーいいよ」
心の中でちょちょちょちょっと待ってよ!と叫んでいた。
「お名前、なんていうのー?制服かわいい、高校生だよね。」
「あ、青藍って言います、お願いします」
「青藍ちゃんね。江舞はね、まだ一年目だけど先生に認められるぐらい、美容師の才能あるのよ。」
「す、すごいですね。私とは大違いだ。」
「んーでも、江舞は女の子すーぐ食べちゃうから、気をつけてね」
ショートのお姉さんはそう言って作業に戻ってしまった。
「青藍ちゃん、さっき有紗さんに変なこと言われた?」
「なんか、江舞さんが女の子食べるって、聞きましたけど、、、」
「えぇ、言い方悪いなぁもう」
そう言って美容室にある、クルクル回る椅子に江舞さんは座り、私にクロスをかけてくれる。ちょっとワクワクする。
「江舞は女の子と同意の上でなんだから、もう」
「え!?」
わ、この人、私には知らない大人の世界の話してる?
「どうする、青藍ちゃんも、わかんないよ?」
と言って私の髪を触り、耳元で話す。ど、どういうこと、どうしたらいいの。
「え、え、え、、、」
「あはは、じょーだんね、冗談」
俗に言う女たらし。もう、流石美容師。ほんとにほんとに、チャラチャラしている。
「茶色とかがいい? 何色がいい?」
「えっと、ブルーブラック、みたいな」
「おお、勇気出すね」
「ほんとに黒に近い藍色みたいな色で、お願いします」
「了解、まかせて」
「あ、名前が青藍だからか。納得した。」
そのまま、慣れた手つきで私の髪を時々いじりながらヘアカラーを乗せていく。やっぱり美容師専門ってすごいな、すでに本物の美容師さんみたい。
「青藍ちゃん、ずっとこの髪の長さだったの?」
「うん、ロングだとめんどくさいし、ボブだと勇気がいるしって思っていつもこの長さです。」
「ずっと同じで飽きないの?」
話を聞く限り江舞さんはずっと同じとか、無理そう。だって女の子を取っ替え引っ替えするぐらいだから。私は思わず怪訝な顔をした。
「なに、その顔」
「別に、なんでもないです」
「髪の毛の長さは変えないからさ、顔周り、作ってみない?」
「ど、どんな感じの?」
「今の高校生の流行りとかわかんないけど、青藍ちゃんなら姫カット、似合いそうだな」
私は今の高校生だが、流行りにもおしゃれにも疎い。美容師の人が魅力的に見える理由がここでわかった。どんどん綺麗にしてもらって、そんな魔法使いみたいな人がいたら、そしてその魔法使いもこんなにかっこよかったら、それはそれは魅力的に見えるよね。
「そしたら、その姫カットで、お願いします」
「わかった、江舞がもっともっと可愛くするね」
「あ、ありがとうございます」
鏡越しで江舞さんと目が合う。前みたいに、トイレで目が合う時と今のはなんか違う気がした。
ちなみに作者はこのシーンがかなり好きです。
江舞ちゃんは名前のモデルと人物のモデルがいて、名前のモデルの子が美容師を目指しているのでそれに寄せました♡




