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ひあそび  作者: 葵果音
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「江舞⑬」

 ずぶ濡れの雨の中、青藍が伝えてくれた想いは素直に胸に入ってきてやっと自分の好きな人が誰かわかった。まさか、と思うようなことが起きるのが人生だよな、本当に。

二人とも水を吸った重い洋服に疲れながら、私の家へ向かう途中に彼女はこんなことを言った。

「江舞ちゃんは運命とか信じる?」

「えー、わかんないかな」

「えぇ、意外、非科学的なこととか信じなさそうなのに」

大通りの歩道の水たまりを飛び越えて、こう答えた。

「運命があるものかどうかはわかんないけど、作るものだと思ってる。」

「だってさ、私たち駅のトイレで会ったけど、江舞が青藍の顔見るためだけにトイレ行ってたら、もうそれって偶然じゃなくなるじゃん。」

「え? そうだったの?」

「そんなん言わなーい」

「ふーん」

私の口真似をしてそう言った。

「ふーんってなんだよ、聞いてきたくせに。青藍は信じるの?」

「うん、なんとなくね、第六感とか?」

道路の白線の上を歩いて、落ちないようにと一人で遊んでいる青藍の横で空いている左手を手のひらに乗せた。

「それこそ非科学的だな」

「あ、江舞ちゃん、落とさないでよね」

「んなことしないよ」

さっきの運命の話はどこへやら。

明日には忘れてるぐらいの温度で大事な話をすることが多い。でも大丈夫、ちゃんと届いてる。もう二度と君の熱を逃さないようにして、私なら青藍との未来を運命にして作ってみせる。



 きっと両思いになって迎えた初めての朝の時間。夜のことは思い出すだけで大声を出して忘れたくなる程、凄かった。それでも何も変わらないテンポ感の朝の会話に幸せを感じた。

ベットの上でぼーっと座って、眠そうな目を擦る青藍は愛おしくてたまらなかった。

「可愛いね、青藍は」

「、、、え? なぁに?」

まだ眠そうで私の声は聞こえてないみたいだから、起きたらもう一度、いや何度も言おうかな。

 ちょっとおかしなこと言うけど、青藍と逢ってから私は未琴への気持ちが本物の恋愛じゃないんだと気づいてた。だけど、いつも未琴は欲しい言葉と欲しいことをしてくれるから、それが好きだと思っていた。それでもしてくれなきゃ、するまで縋っていたし。私がメイク落として、もう寝る寸前の時に携帯が鳴ったこともあった。もっかい軽い化粧だってして、嫌々行った。最初の方は未琴の好きを本気にして期待して、だけど私と寝たあと、すぐ他の女と電話してた。あの時は、すごく悲しくなった。


 あぁ、「好き」って毎日その人のこと思い出して考えることじゃないんだって。限界な時に誰のために頑張れるかの「好き」が今私が求めてるものだ。その誰かは、、、視線の先には、瞼がぴくぴくしている青藍の姿。思わず吹き出した。

 今は、メイクを落とさず寝ているもんなら落とさなきゃダメでしょ、と言って隣で叱ってくれたり、欲しいと思った言葉よりも何倍の愛情を込めた言葉を届けてくれる人がいる。こんな私を、好きになってくれる人がいて、青藍の隣で生きていける幸せを噛み締めている。

 しばらくして、眠気が飛んできた青藍はやっと話しかけてくれた。

「江舞ちゃんに好きって言われたのはいいものの、遊び人の江舞ちゃんだから他に女の子が居そう、、、」

起きて最初の一言が、それかよ。

「ねえ、今はいないって」

ふーん、とやっぱり呆れた顔をするのを見て参ったなぁと思った。

「本気じゃなかったら彼女とか言わないってば、、、」

「え、そう? えへへ、、、」

でも青藍は単純なとこもあるから、私がいつもは言わないような小っ恥ずかしいような一言を添えたら喜んでくれる。本当は恥ずかしくて言いたくないんだけどね、本音とかそんなに言う柄じゃないし。

「わかった、そこまで疑う青藍に渡したいものがある」

「えぇ、なに!」

私のダボダボな部屋着を着てジタバタしている青藍の横で、あるものを取り出す。

「あげる」

「これって、」

「あ、江舞の家の鍵ね。いつでも入っていいよ」

「えぇぇ、それってほぼ同棲!?」

「まぁ、それもそうだけど、他に女いたらこんなことできないでしょ。」

「う、うん!」

「言ったじゃん、私本気だからって」

「江舞ちゃん、だいすき〜」

私の腰にまとわりつく天使との毎日が始まった。季節はあっという間に冬に差し掛かる頃だった。

やっと両思いになりました!!♡おめでとう!

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