「江舞⑦」
今日家に誘ったのも、ちゃんとキスして欲しがるものをあげてるのも全部私。まだ何にも染まってなさそうで、自分に夢中な青藍を疑似的な愛おしさを感じて抱いている。恥じらう表情を見るとよりいじめたくなった。
理梨先輩に指摘された癖は直っていなかった。終わった後にすぐ携帯見ちゃダメだよって、忘れていた。
「え、? 待って、その子女の子?」
スマホをのぞく青藍と目が合い、ミスったと思った。こうなると、女の子は毎度大変なことになる。泣いて喚いて、腕にまとわりついてせがんでくるのだ。
「えー、うん。」
「女の子とした後にまた他の女の子呼んで、また可愛いって言ってるの?」
「え、誰にでも言ってない。可愛い子にしか言ってない。」
「何それ、そんなの、バカみたい!」
青藍から発せられたとは思えない意外な発言に驚く。
その割にその格好の説得力はなかったので、
「ねえ、そのバカに付き合ったの誰?青藍ちゃんじゃん」
「だって、それは、江舞ちゃんが、、、」
「、、、ごめん、悪かった」
いつも通り、頭を撫でて今の関係が正しいんだって思わせる。
「は?」
「無理です、もう無理です。私以外にって多分一人じゃないですよね? そんなの嫌です」
やっぱり、女の子だなと思った。こうなった女の子には何度も言われてきたから。
「うーん、この子はもう直ぐやめると思う。好きな人ができたらしいからね」
青藍は黙り込んでしまったから、こういう時に私も誠心誠意向き合うと馬鹿を見ること、わかっていた。
「わかったわかった、青藍は、江舞のこと独り占めしたいんだ?」
「はい、そうだけども」
青藍の言葉たちは意外なものが多すぎる。
「え?」
「だから、私、江舞ちゃんの遊び相手なら一生会わなくていいです。もう会いたくない。」
年下だから舐めていたわけじゃなくて、遊び相手なら会わなくていいなんて言われたことがなかった。むしろそっちの方が都合がいいよ、とまで言われていたのに。泣いて喚いて、せがむ姿は一切見られなかった。
「ちょっと待って、」
青藍が本当に帰る支度を始めたから、慌てて服を着て、引き留めようとした。必死に私が止めることなんてない。
「青藍、待ってって」
「江舞ちゃん、今までありがとうございました。それではさようなら」
君が本当に遊びなら、今の私にとって君という存在はかなり都合が悪いはずだったのに、なぜだか離したくなかった。
「ちょっと待ってってば、青藍!」
「なんですか」
「ごめん、待って。離したくないのは本当のことで、だからまだ行かないで、お願い」
こういう時、本気で引き留めるにはどうしたらいいのか知らなかった。気づかぬうちにキスして、少ししか思ってないようなこと言ってってそんなんじゃダメな気がしたけど、それ以外どうしたらいいかわからない。今まで知らなくて後悔したことなんかなかったのに、今とても後悔している。
「離したくないって、どういうことなの?」
「青藍とまだいたいってこと、ばいばいしたくないってこと」
舌足らずの言葉に、余裕のなさに情けなく感じた。こんな情けなくて必死でダサい自分を女の子に見せるのは初めてだったから。女でいるのは未琴の前だけだったから。
「、、、信じてるって、それだけ言っておくね」
青藍のこの言葉を聴いて、ほっと安心した自分もいたけど、改めて私は女の子のこと傷つけてることを自覚した。
「うん、信じて欲しい」
朝、というより深夜に未琴から連絡が入った。未琴の少しだけは少しだけじゃないこと、私が一番わかっていたけどすやすや寝ている青藍に後ろめたさを感じていたけど、ちゃんと髪のセットも、香水まで完璧にしてしまう自分は、自分じゃないみたい。青藍のことも未琴のことも離したくないって欲張りなんだよな。会いに行くのはなぜか聞かれたら、手放したくないからって答える。




