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ひあそび  作者: 葵果音
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 第七章 「不知火」

スマホに張り付いて調べている内容は、「 首絞め DV 」やそういう経験談をした人の話などだった。秋人はあの後、こういうプレイが好きだとか色々言ってきてハグしてくれたけど、家に送ってくれることはなかったんだよね。そして、好きとか甘い言葉なんてもってのほかだった。思い出せば思い出すほど吐き気がする。江舞ちゃんのこと、もう二度と思い出したくなかったのに江舞ちゃんとの記憶が鮮明になってしまった。忘れられなくなってしまった。

絞められた首はあんなに痛くて苦しかったのに跡にはなっていなかった。なんで跡になってくれないんだろ、身体からSOSが出ないのかな。優しく頭を撫でてくれた手も今はなんだか怖い。

 江舞ちゃんの優しくて、黒ネイルが塗られた綺麗な手を求めてる。




「このまま江舞の家行くー?」

「うん、そうする」

今私の腕は、江舞ちゃんの腰に回されている。バイクに乗ってあたってくる風は相変わらず強かった。金曜日の放課後、どうしてもこの恋しさに負けた。寂しさに負けてないだけ許して欲しい。いけない関係だけど、まさに都合のいい関係ってやつだけど今はこれがないと、本当に死んでしまいそう。江舞ちゃんのお家について、やっと二人になる。

「江舞ちゃん、好き」

まだ玄関だけど、どうしても言いたかった。こんな時、言葉っていう存在が邪魔だなっておもう。

「どうしたの? 甘えたい?」

正直になるのが、正解? 目を見るのも今はすごく恥ずかしい。だから無言で抱きつくしかない。江舞ちゃんは私よりも少ししか背が高くないのに、ひょいと軽々しく私の身体を持ち上げてしまう。

「え! 私重いよ」

「大丈夫」

あぁ優しいベットの上。江舞ちゃんの匂いに一気に包まれる。手だけじゃなくて腕まで添わせて、優しく指を絡める。キスした後に、下唇噛むの癖なのかな。別のことを考えているのがバレたようで、江舞ちゃんは意地悪だから、わざと声をあげさせる。

「江舞ちゃん、もうダメ、」

「ん、」

私の身体は、そのあと江舞ちゃんものになって、蒸発しちゃったんじゃないのかな。

細くて綺麗な指が、今は、と考えると江舞ちゃんの顔が見れなくなる。



 終わってもそのぐらい夢中になっていた。その後の添い寝の時間も実はすごく好き。江舞ちゃんはすぐスマホ見ちゃうけど。

 せっかくだから江舞ちゃんにくっついてみた。まだスマホを見てる、顔を覗き込んで、枕越しに見えたラインの内容は、同じような接し方で、多分私と同じような関係性の女の子に、同じようなことを言っているものだった。

「え、? 待って、その子女の子?」

さっきまで江舞ちゃんの横で溶けてた体は一気に固まり始めた。自分でもなんで聞いたんだろって思った。

「えー、うん。」

そう返事する時も、スマホから目を離さない。

「、、、女の子とした後にまた他の女の子呼んで、また可愛いって言ってるの?」

「え、誰にでも言ってない。可愛い子にしか言ってない。」

こんな時にもヘラヘラ答える江舞ちゃんに、自分の中にある全ての理不尽な気持ちをぶつけたくなった。

「何それ、そんなの、バカみたい!」

ラインから目が離れない江舞ちゃんにそう叫んだ。下着姿の私はあまりにも説得力がなさすぎたようで、

「ねえ、そのバカに付き合ったの誰? 青藍ちゃんじゃん」

「だって、それは、江舞ちゃんが、、、」

声が大きくなって、肩を震わせそうな勢いで叫んだから、江舞ちゃんもやっと真剣な表情になってくれた。

「、、、ごめん、悪かった」

いつもそんな甘い言葉で、女の子を留めさせようとしてきたんだ。

「は?」

「無理です、もう無理です。私以外にって多分一人じゃないですよね? そんなの嫌です」

だけど、私もいるよね、彼氏。今日だって現実を消すために、江舞ちゃんと夢で溺れるためにここにきてる。

「うーん、この子はもう直ぐやめると思う。好きな人ができたらしいからね」

前までずっと、よくわからない世界だった。好きじゃない人とそんなことするなんてって思ってた。だけど今は理由がわかってしまうようになった。私は、、、

「わかったわかった、青藍は、江舞のこと独り占めしたいんだ?」

ふざけ半分で言ってきたのが嫌だった。もう舐められているのがわかったから。

「はい、そうだけども?」

「え?」

「だから、私、江舞ちゃんの遊び相手なら一生会わなくていいです。もう会いたくない。無理。」

「ちょっと待って、」

江舞ちゃんの言葉は無視して、服を着て、荷物も強引に鞄に詰め込む。

「青藍、待ってって」

何か言ってるけど、もう帰る。

「江舞ちゃん、今までありがとうございました。それではさようなら」

「ちょっと待ってってば、青藍!」

彼女もベッドから起き上がって服を着ている。

「なんですか」

一度だけ振り返った。あの時トイレで出会って人生変わると思った自分もバカみたいと思うと同時に、江舞ちゃんと出逢う前のいつもの日常が帰ってきてしまうこと、すごく嫌だった。そう思って振り向いたのだ。

「ごめん、待って。離したくないのは本当のことで、だからまだ行かないで、お願い」

そんな言葉を添えて、ハグしてきた。そこで抱きしめてくるのは話が違うよ。この腕の中で感じる幸せ、まだちょっとだけ欲しいかもって浅はかな考えが私の足を止めた。

「離したくないって、どういうことなの?」

「青藍とまだいたいってこと、ばいばいしたくないってこと」

こんな時だけ必死で、心底子どもみたい。さっきまでもう止めようって感じてたくせに、軽い言葉と江舞ちゃんにかけられた言葉たちがやっぱり離れなかった。

「、、、信じてるって、それだけ言っておくね」

「うん、信じて欲しい」


 昨日の夜、あんなことを言ってくれたのに、朝方にはやっぱり江舞ちゃんはいなくて、学校に行ったのかと思った。だけど、雑に散らかったメイク道具と香水の香り、江舞ちゃんはいつもヘアアイロンは低音でやるけど、この日だけ高温に設定してあったから、たぶん。

 本当は、好きな子がいるのかもしれないって思った。今日、その子と会うんだろうな。私も好きな人と会う時はそうだから。考えすぎかな。女の勘ってすごく当たるから困る。ますます自分と会う時のラフな江舞ちゃん、メイクも適当でごめんな、という姿に、私って二番目でも三番目でもないんだろうなって思った。私の前で幸せそうに笑う時だって、いちばんの笑顔に見えない。私の体温だけが残るベッドの上、布団の裾を握りしめてうずくまった。あぁ、私が全ていけないんだ。秋人に首を絞められたあの時のことを思い出した。どんどん痛くて苦しくて、心が腫れていく。私が悪いんだ。


寝た後に女の子と連絡取ってるの見るの、冷めるどころの騒ぎじゃない。

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