午後の図書館
再び休憩スペースのさっきと同じ位置についた。集合時間の13時まであと30分以上。ガラス越しに、自転車で図書館を横切る女の子が見えるたびにさっきの話を思い出す。夏はえっち。少しわかるけど、少しわからない。涼しいこの場所で考えごとをしていると眠くなってくる。そんなとき、後ろから肩をポンポンされた。
「ね。同じクラスだよね!」
「えっ。だれ!」
「福重琴葉。やっぱり上園くんだ!っていうかひどいな()」
「笑笑。ごめん寝起きみたいなかんじで」
「そうなんだ。午後からどういうかんじ?」
「部活の人たちと祭り行くんだ。執拗に早く来ちゃって。そっちはどんなかんじ?」
「こっちも祭り。執拗に早く着いちゃったなー。13時集合なんだけど...」
「ふぁえー。はやいね」
「うん。いつも早い!上園くんは何時集合?」
「13時だよ」
「そっちもか!」
いったん僕はトイレに行った。おしっこをしながら考える。仁の話を聞いてたから少しドキドキしたし、琴葉さん(こう呼ぶ?)は、そりゃそうだけど私服だった。薄緑のパンタロンに薄紫のTシャツという服装で、自転車で来たのか、汗でいろんなところが湿っていた。体の線はパンタロンの流れによって消され、仁が言ってたのとは逆の無機的な印象を僕は受けた。ますます分からなくなった。
僕がトイレから戻った時琴葉さんは、広がったパンタロンの裾を太ももの真ん中あたりまで手で持ち上げた状態で、同じく早めに着いた一緒に祭りに行くであろう友達の女の子と談笑していた。汗をかいていて蒸れるんだろうけど、その丸見えになった太ももに、『夏はえっちだ』ということを僕は理解させられた。