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かけもち監督? 4

 陽介は、「そんなに、あらたまらなくても結構です。」と引きつった笑顔で言い、続けて「え~と、先ず僕はまだ皆さんの監督ではありません。そもそも現監督がいると聞いていますし…。したがって今から皆さんに聞く事は余計なお世話になってしまう上に失礼なことかも知れませんので、先に謝っておきます。今やっていた準備体操やウォーミングアップは、いつもやっているのですか?、そしてそれは現監督の指示ですか?」と聞いた。


 するとイッちゃんが、「現監督は、私達に具体的な指示をしてくれません。私が準備体操やウォーミングアップのメニューを考えて、いつもやっています。」


 「なるほど、イッちゃんが考えたんですね。練習メニューを一人で考えるのは大変だったでしょう!?、一生懸命考えた内容は素晴らしいと思います。だだ準備体操にかける時間が長すぎると思います。公式戦では試合に入るまでの練習時間は極めて短いですし、公式練習は3分しかありません。そうした事を考えれば短い時間で準備体操を終える習慣を身に付けないといけないんではないかと思います。是非参考にしてみて下さい。それとネットを張らずにウォーミングアップをしたのはなぜでしょう?、公式戦ではコートに既にネットが張られているはずですし、対戦相手と半分ずつでコートを使用しなければなりません。勿論公式練習の3分間は別ですが。したがって、公式戦と同じ状況を前提に、ネットを張ってから準備体操やウォーミングアップをした方が建設的で僕は良いと思います。それともう一つ。ウォーミングアップの一番最初に行ったのは多分『ダッシュ』だと思いますが、僕の知っている『ダッシュ』は皆さんがやっていいたような『ジョギング』ではありません。もし今後も『ダッシュ』を続けるのであれば、しっかりと精一杯やるようにした方が良いと思いますので、参考にして下さい。」と陽介は言った。


 そして、「では、練習時間も限られているので、引き続き練習を続けて下さい!」と言って、ベンチに座った。


 フサエちゃんは、「パス~!」と言って練習を再開をした。


 陽介は行われているパスを見て、正直言ってショックだった。


 「下手を通り越して、バレーボールの練習ですらないように見える。これじゃぁ体育の授業より酷い。」と感じた。


 そして、これでは試合に勝つことは皆無だと思った。


 しかし本人達は、いたって真剣にやっている。


 可哀そうだとも思った。


 オーバーパスらしきものと、アンダーパスらしきものが終わると、対人レシーブの練習が始まった。


 オーバーパスやアンダーパスすら出来ていない状態だから、当然ながら対人レシーブ(2人一組で、一人がボールを打ちもう一人がそのボールをレシーブする練習)など出来るはずがない。


 本人達に申し訳ないが、これでは練習している時間がもったいないと思った。


 この練習時間を、もっと他のことに有効に使った方がこの人達のためになるのではないかと。


 一通りパスと対人レシーブが終わると、アタックの練習になった。


 セッターはフサエちゃん。そしておそらくはこのチームのエースであろうイッちゃんが前衛レフト。そして通称アブちゃんが中衛レフト。通称じょんちゃんがセンター(通常はハーフセンターのポジションをやっているそうだが、状況によってセンターからアタックを打つらしい。パスも満足に出来ないのにどうゆう状況だとアタックを打つ場面になるのかは分からないが…)。中衛ライトに通称ユッケちゃん。前衛ライトにセイちゃんが準備をし、ハーフセンターじょんちゃんがセッターフサエちゃんにパスを出し、それぞれのポジションで待っているアタッカーにトスを上げた。いや、トスらしきものを上げアタックであろう練習をしていた。


 しかし、セッターに出すパスもドリブル。セッターのトスもドリブル。


 たま~に、上がったトスもアタッカーが打ち切ることが出来ず、ネットにかけてしまう。


 要するに、何の練習をしているのか全く分からない状況だった。


 だが、本人達はこの練習が好きらしい。


 このアタック練習らしきものに、長い時間を費やしていた。


 そして、やっとアタック練習らしきものが終わった。


 陽介は、そろそろ帰ろうと思った。


 今日の所は、監督を断ることを言わずに、後日フサエちゃんに電話して断ろうと思ったからだ。


 ところが、フサエちゃんが、「サーブぅ~!!!」と言ってサーブ練習を開始したのと同時に、イッちゃんが「監督、サーブの打ち方を指導して下さい!」と言って来た。


 陽介は、「先程も言いましたが、私は皆さんの監督ではありませんし今日は練習を見に来ただけなので、指導は遠慮しておきます。それに今日は不在でも、現監督さんがいるので僕が何か言うとその監督さんにも申し訳ないですから…」と言って断ったが、あまりにも切実に何度もお願いを重ねて来たので、「では、少しだけネ!」と言って、ネットすら越えないサーブを必死に練習しているコートに向かった。

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