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かけもち監督? 3

 前上司であり、お仲人さんだった故常務の昔話に花が咲き、お仲人さんの奥さんと深酒をした陽介は、出来の悪い部下を息子の様に可愛がってくれていたことに、あらためて感謝の念でいっぱいだった。


 そして新しいチームの練習を見に行く日が来た。


 陽介はあらためて感じた感謝に、監督を断るにしてもお仲人さんの奥さんの顔を潰すような事はしてはならないと思っていた。


 陽介が練習場所である、その地域の公民館に併設されている体育館に入ると、既にチーム構成員が全員揃い陽介を出迎えた。


 陽介が既に監督をしているチームの構成員に比べ、平均で10歳~15歳は若いママさん達だった。


 皆が「おはようございます。本日は宜しくお願いします。」と挨拶してくれた。


 と同時に可愛い声でたどたどしく、「よろしくおねがいします!」と数人の幼児も挨拶をしてくれた。


 陽介は、「ご丁寧にありがとう!、皆可愛いですネ!」と幼児にお礼を言ったが、続いて「皆さんのお子さんですか?」とメンバーに聞いてみた。


 するとチームの中心人物である通称イッちゃんが、「はい。私達の子供の一部です。まだ小さいのでどうしても一緒に連れてこないと問題がありまして…。」と答えてくれた。


 陽介は、「家庭婦人には色々と事情があるのは良く理解しているつもりなので、全く問題はありません。」と言い、「今日はフサエちゃんの知人で、僕のお仲人さんの紹介で皆さんのチームを見学に来ました。どうぞ普段通りの練習して下さい。僕は見学をさせて頂きますので…。時間も限られていると思うので早速ネットを張って練習を開始して下さい。」と言った。


 するとイッちゃんは、「ありがとうございます。では早速練習に入らせて頂きます。」と丁寧な口調で陽介に言った。


 陽介が体育館の中にあるベンチに座るのを見て、フサエちゃんが「体操しまーす!」と言って練習を開始した。


 全員が輪になって準備体操を入念に行っていた。中には自分の子供であろうかママにベッタリくっつき準備体操を一緒にやっている者もいた。いや、邪魔されている者もいた。


 陽介には、新鮮で微笑ましくも思えた。


 しかし陽介は、その『入念』に行っている準備体操が、物凄く長く感じた。


 そして準備体操が始まって5分位経った頃であろうか、体育館内にある別の小部屋から「ママぁ~、おしっこ~!」という声がした。


 その子供のママが、「今行くよ~!」と慌てて準備体操の輪からはずれ、子供の所に駆け寄り一緒にトイレに行った。


 陽介は、構成員が若いだけに子供達もまだ小さいんだなぁと思い、これもママさんバレーの光景の一つだと思った。


 小部屋からは、可愛い声が途切れない。


 陽介はベンチから立ち上がり、小部屋を除いた。


 あらビックリ!、小部屋には6人~7人の幼児が元気良く遊んでいる。


 そしてよく見れば、チームの一員であろうママさんが小部屋の入り口で準備体操をしていた。


 聞けば、子供達がケガをしないように交代で見守っているとのこと。


 いやはや、小さい子供同伴で練習に参加するということは、大変なことだとあらためて陽介は思った。


 そして、決して親の責任を放棄せず、交代で子供達を見守っている姿を見て「当然なことかも知れないが、この『当然』が中々出来ない。このチームの若いママさん達は偉い!」と思った。


 感心しながらその様子を見ていた陽介だが、あることに気付いた。


 それは、準備体操がまだ終わってない上に、ネットもまだ張られていない。


 一体いつになったら準備体操が終わるのだろうか?


 練習時間は、9:00~12:00と聞いている。時刻は既に9:45を回っていた。


 準備体操が終わり、フサエちゃんが「ウォーミングアップやるよ~!」と言ってネットの張られていないコートのエンドラインに全員が並んだ。


 フサエちゃんの両手の手の平が『パチン!』と鳴ったのを合図に、全員が反対側のエンドラインまで走り出した。


 おそらくは、『ダッシュ』だったのだろう。


 そして、さらに様々なウォーミングアップを行い、フサエちゃんが「パス~」と言った所でネットを張り始めた。


 陽介は、練習を見学に来ただけのつもりだったが、ネットを張り終わるのを待ってフサエちゃんに「ヒョットしてフサエちゃんはキャプテンですか?」と聞いた。


 フサエちゃんは、「取り敢えず今はキャプテンです!」と言ったので、陽介は「チョッと皆と話をしてもいいですか?」と尋ねた。


 フサエちゃんは、「陽介監督から話しがあるから、皆集まってぇ~!」と言い、陽介の前に整列をさせた。

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