大人数のパパクラブ 3
陽介の言葉にSIEGのメンバーは軽くうなずき、パパクラブAのサーブに備えた。
パパクラブAのサーバーは、依然として第一サーバー。
既に7本のサービスエースを重ねている。
主審のサーブ許可の吹笛。
緩いサーブがSIEGコートに向かって来た。
そのボールをバックライトのアシミちゃんがレシーブ。
ボールはコート中程に上がった。
そして2コンタクト目を、ハーフセンターのじょんちゃんが腰を引きながらやっとの思いでコートの中に上げる。そして3コンタクト目を中衛レフトのアブちゃんがパパクラブAのコートに返した。
パパクラブAは、「チャンス!、チャンス!」と言いながらハーフセンターがオーバーパスでセッターにパス。
しかしそのボールは乱れ、セッターがアンダーでレフトアタッカーにトスを上げた。
レフトアタッカーは、ネットから離れたトスを思いっきり打ったがネットを越えなかった。
陽介が監督になって初めてのSIEGの得点は、相手のミスによるものだった。
SIEG1-7パパクラブA
しかしSIEGの面々は得点が入ったのにもかかわらず、誰も喜ばない。
陽介はコートに歩み寄り、「例え相手のミスであっても自分達に得点が入ったのだから、もっと声を出して喜んでいいよ!、そしてその声によって自分達にリズムを持って来るんだよ!、さぁ頑張って!」と言った。
SIEGの面々は、相変わらず軽くうなずいたが、自分のポジションから一歩も動かない。
主審が小刻みに吹笛をして、SIEGにサーブを打つようにうながした。
陽介は、「こりゃ、まいったなぁ~、練習試合はまだ早かったかな?、緊張からなのか相手にサービスエースだけで点を取られてしまったからなのか?、サーブ権が移ったことすら忘れている。前任の監督時代に公式戦を含め試合を重ねて来ているだろうに、どうしてこんな風にガチガチになってるんだろう?」と不思議に思った。
そしてSIEGの第一サーバーのオキヨちゃんがサービスエリアに位置した。
主審のサーブ許可の吹笛。
だが残念なことに、オキヨちゃんのサーブは2本ともネットを越えることはなかった。
SIEG1-8パパクラブA
パパクラブAのサーブが、山なりにSIEGコートに向かって来た。
SIEGは、バックセンターマリちゃんがレシーブ。
コート中程右側に上がったボールを前衛ライトのセイちゃんがつなぎ、3コンタクト目をハーフセンターのじょんちゃんが相手コートに返した。
パパクラブAは、「チャンス!、チャンス!」と言いながら、中衛ライトがオーバーでセッターにパス。
セッターは、レフトアタッカーにトスを上げ、そのトスをレフトアタッカーが綺麗に打って見せた。
パパクラブAは全員が大喜び。
コート中程に集まり、「さぁー、行こう!」と声を出した。
SIEG1-9パパクラブA
陽介は相手のアタックに対して、ブロックを誰が飛べば良いか?またブロックはどのように飛べば良いかなどの指示は一切出していなかった。しかしさっきも言った通り、SIEGはこの練習試合がチームとして初めての試合ではない。前任の監督が指導していた時にも当然ながら試合はしている。
しかるに、何故ブロックを飛ばなっかったのか?不思議に思い、パパクラブAに許可をもらってSIEGのメンバーをコート中程に集め、「皆さんは、今日が初めての試合ではないはずですよね?、公式戦も戦って来ているし、僕が監督になる前にきっと練習試合だってしてますよね?、僕がおおらか杯を見た時はもっと元気が良かったしブロックも飛んでいたのに、今日は何でそんなに元気が無く、ブロックも飛ばずに、もっと言えばバレーボールをしようとしないのですか?」と尋ねた。
するとイッちゃんが、「スミマセン。自分達が所属している部(最下部の8部)より格上のチーム(パパクラブAは7部)と練習試合をしたことが無いもので…。何をして良いか分かりません。」と言った。
陽介は、恐らくイッちゃんの言い分は本音だろうと、大きくうなずいた。
そして、「分かりました。では僕の言うことをあらためて良く聞いて下さい。相手が格上だろうと格下だろうと、皆さんが出来ることは限られてますしそれ以上のことはどんなに頑張っても今は出来ません。ですから、出来ることを精一杯やろうとすればいいのです。先ずは相手のサーブをレシーブ出来るように積極的に自ら動きましょう!失敗しても構わないから。次に自分達が得点したら大きな声を出して喜びましょう!、サーブ権が来たらサーブを相手コートに入れるように頑張りましょう!失敗しても構わないから。そしてこれが一番大事ですよ。必死になってボールを追い、皆笑顔でバレーボールをしましょう!、皆がそう思いながら一生懸命プレーをすれば、例え今日の結果が全て負けであっっても必ず次につながります。だから出来ることを一生懸命・精一杯やって下さい。くどいようですが笑顔は忘れずにネ!」と言い、陽介はコートの外に出た。




