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弱小ママさんバレーチーム若手男子監督の奮闘記 2 『その娘(こ)』

 ある寒い日の夜、陽介の携帯が鳴った。


 電話をかけて来たのは、陽介のお仲人さんの奥さん。


 この奥さん、世話好きと言うかおせっかいと言うか、昔東京の下町でよく見かけたタイプのオバサン気質であった。


 この日も仕事の同僚と飲んでいたらしい。


 時間は22時30分を過ぎていただろうか?


 かなり酔っぱらっている様子で、「陽ちゃん、元気~○×※◎△?、今同僚と飲んでるんだけどさぁ(まぁ、これだけろれつが回ってなければ、飲んでいることは容易に想像できるが…)、その()がママさんバレー(家庭婦人バレー)をやってるらしいのよ。だけど今まで1回も勝ったことがないんだって!、陽ちゃんまだバレーボールやってる?、やってるならこの娘のチームをみてあげてくれない?」と、陽介が相づちを打つ間もなく一方的に話をして来た。


 そして、「チョッとその()と代わるから、宜しくネ!」と、これまた返事をする間もなく『その()』と電話を代わった。


 陽介は『その()』と言うくらいだから、さぞかし可愛い声の持ち主であろうと勝手に想像し話を聞こうとした。


 すると、「もしもし、私○×※◎△と申します…」と第一声から何を言っているのか分からない上に、きっと毎日のように仕事帰りに飲み歩いているんだろうと思わせるような、酒焼けをしたしゃがれた声で話をし始めた。


 こちらも、相当にお酒が入っているのだろうと想像がつく。


 陽介は、話し続ける『その()』の話をさえぎり、「スミマセン。何を言っているのか全く理解出来ないのですが、何というお名前ですか?」と聞きなおした。


 「えぇ~と、フカイです。」と言ったので、陽介は「フカイさんですね?」と聞きなおすと、「いいえ、フサイです。」と言い、さらに陽介が「失礼致しました、フサイさんですね?」と聞き直すと、「いいえ、フサエです。」と言い直す始末であった。


 後日あらためて会うことになって、その時初めて分かったのだが、『その()』の名前は「フサエ」で下の名前であった。


 酔っぱらっているとは言え、初対面の人(電話ではあったが…)に名前を伝える際、姓ではなく名を伝えさらには酒焼けした声で話されたら、陽介でなくとも名前を理解出来ないのは不思議ではないことだ。


 結局、何を言っているのか分からなかった陽介は、お仲人さんの奥さんに電話を代わってもらい「申し訳ありませんが、お酒がだいぶ入っていて何を言ってるのかさっぱり分かりません。出来れば奥さんを含め、後日本人と直接お目にかかってお話を伺いたいのですが、日取りをして頂けないでしょうか?」と頼み、奥さんに了承をもらい電話を切った。


 だが、電話が切れる直前に「良かったわねぇ~、フサエ。陽ちゃん監督してくれるって!」と言っていたのを陽介は聞き逃していなかった。


 「相変わらず強引だなぁ~、でもお世話になってるから断りづらいし…。それにママさんバレーは今のチームだけで精一杯。これ以上精神的に病んだら仕事や生活に影響が出かねないから、勇気を持って断ろう!」と思い、直後に爆睡した陽介であった。


 陽介がそう思うのは仕方ない。この時陽介は超法規的集団であるママさんバレーチームの監督を既に1チーム引き受けていて、そのチームの目標に向け必死になっていた時期でもあったからだ。

 

 いずれにせよ、後日お仲人さんの奥さん同席で『その()』+1人と会うことになった。

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