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未定  作者: ボッポル
1/5

始まり、あるいはとうに始まっていた。


「うひゃひゃひゃ」

「うっほ!これも中々」

「ふむふむ。なるほど」

「さてさて。ここまでか」


カバンを閉じる。私達の宝物が中に飲み込まれて消える。どうにも名残惜しいが時間なので仕方がない。


「ふむ、あと少しばかりコレクションが欲しかったかな」


そう一人呟く。応えるものはもう何も居ない。応えたとしても気にする必要もない。


「はてさて、次はどんなものに出会えるか楽しみだ」

「では、お世話になりました。次は来世で頑張って下さいね」


そう床に落ちた肉塊に一声かけて座っていたテーブルから立ち上がる。何が起こるわけでもなかった。苦し紛れの一撃は結局のところ何も生むことは無かった。


「シーユーネクストタイムー。で合ってるだろうか?死人に言うのはおかしいかな?」


扉を開けて外へと出る。空は鈍く薄暗い灰色の雲で覆われ、太陽なんてどこにも見当たらない良い天気だ。


「あー、やっぱり曇りは良いねぇ。雨も良いけど今にも降り出しそうなこの感じ、たまらない」

「行先に幸せが待っている証拠に違いないねぇ」






とても良い気分だ。世界が終わるその時だと言うのに、とてもとても良い気分だ。

あと何秒?何分?何時間?分からないけど関係無い。今日で世界は終わる。そんな小さな事を考える必要なんてない。


そしてその時は唐突に来た。


「ぁ………」


声はほとんど出なかった。一瞬の内に体の七割を喰われた。痛みを感じる事すらなかった。ただ失ったことへの喪失感だけが満ちた。


「……ふ、ふ…」


そしてその笑いの吐息が世界に、最後に響いた音だった。






ーーーーーーーーーーーー



食べる。


食べる。


食べる。


食べて食べて食べる。私は食べる。全部食べる。一欠片も残さないで。塵一つ遺さずに。


齧る?啜る?噛む?ちぎる?

どうでもいい。食べる。


目の前に小さな一つの光の点。やっと食べれる。お腹が空いて仕方ない。

飲み込む。吸収する。全く足りないのでまた近くに来たものを食べる。

食べて食べて食べて食べて食べる。

美味しい?不味い?

どうでもいい。食べろ。


いつの間にか小さな光の点は見えなくなってしまった。


だけど気づいた。

食べないといけない。


私は食べる。終わりの時まで。


そして終わった。食べ終わった。



だけれどまだ足りない。

体が千切れる。無数に別れて無数に消えた。


終わりかどうか。始まりなのか。


知らない。食べられない。

終わりなんだ。


その思考も食べ尽くして、私は消えた。

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