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悪役令嬢なのでそれらしくやります。

作者: 諒子

どうやら私は悪役令嬢に転生したようだ。

「ヘレーネ・エリクトス、貴女と婚約は解消する。」エクトル王子が宣言したのはお決まり通りの卒業パーティ。

言われた相手は私、ヘレネ。

「貴女が嫉妬から虐めた私の愛しいリーリアに対して、、、」

王子は愛おし気に傍らのピンク色の髪の女の肩を抱き、話は断罪へと続くが、困った。これはお互いが産まれる前から決まっていたばりばりの政略結婚なのだ。

前回の政変で、この国の現王の即位に伴い王位を争う地位に居た長兄の病死が発表されている。後世の歴史では理由は秘匿されるが、毒殺で長兄の息子たちも一緒に殺されているが、人質の意味を兼ね隣国の公爵に嫁した幼い姫が一人永らえている。そのまま産んだ最初の子が私だ。

この国では正妃の産んだ男が優先だが女にも継承権がある。母が身籠るより遥か前から気の遠くなるような外交努力でその初子を王室に迎え、王室の正統性を盤石にする狙いでの重たい、実に重たい結婚なのだ。

意味わかっているのだろうか?

「、、、従って、ヘレーネ・エリクトス、私は貴女が二度とこの国の地を踏むことは認めない。直ぐに国に戻るが良い。貴女の所業については報告してある。お国の法に身を委ねられるが良い。」

あら、我が国の大使、スコラ殿下がお出でだわ。相変わらず髭がステキ。

「エリクトス公爵令嬢。お身柄をお預かりします。」

そこで初めて私は嫌な感じがした。スコラ殿下はお父様とは別派閥に属する、政敵でだからと言って隣国の大使とその国の王位継承権を持つ娘の関係だったからこれまで気にしたことはなかったが、なんか嫌な感じがする。

こう言う予感はあたるものだ。だが、外国で王族から国外追放を言い渡された人間に頼るべきは自国の大使館で、大使自らが迎えに来たのだからついていくのは常識だ。

だが、常識とは何だろう。少し視野を広げようと会場を見回すと直観的に状況がわかった。ハメられたのだ。周囲の発する気は憐憫、現王は継承権を主張すれば地位を脅かす娘を取り込むより切り捨てることを選んだのだ。

打つ手はないのか。ここで一番弱い部分は、ざっと見まわすと王子の隣にいるリーリアと目が合った。

この女は使える。

「承知しました。閣下。」あくまで優雅に肘まである白い手袋に包まれた手を伸ばすとこちらを出来るだけ上手く捕らえようとスコラ大使閣下は手を取り指先に軽く口づけた。

そこで私はリーリアにふと蔑みの笑みを投げた。そう、コンプレックスのある人間ならすぐに気づく蔑みを。

「エクトルぅ。恐ーい。」案の定、ひっかかったリーリアはエクトル王子に縋りつく、そこで隣国につけ入る隙を与えまくりの王子がキレた。

「そこに居てまでリーリアを脅すか。この悪女。」

「この国では悪女かも知れませんが、私は故国に戻るだけです。ご機嫌よう。故国の機嫌も良いと良いですわね。」

「なんだと。」ここで王子が私が隣国の公爵令嬢である私を黙って送り出せば送り出され父の政敵の手に落ちることになるが、

やはり王子はちゃん見栄っ張りだった。

「お前はこの国の貴族でもある。つまり私の臣下だ。」どすどす近づいて大使から私を奪う。それでこそバカ。

「はい。私は殿下の臣下です。」一歩間違えばアンタにとって代わる人間だけどね。涙目で言えば王子は満足げに頷いた。

「つまり殿下の愛しい方の臣下です。」リーリアにカーテシーをすると、リーリアがひっかかった。

「私の侍女にしてあげて良くてよ。」

「いや。お待ちください。」大使は叫ぶが、私は無視して額が床に着くほど頭を下げる。助かるためだから涙もでた。

「リーリア様おやさしい。」自尊心の低い人間は周囲の称賛を欲する。はたしてリーリアはライバルであった私を断罪するより自分の配下にすることを選んだ。

脳内お花畑王子が同意したのは言うまでもなく、この国の貴族でもある私を連れ帰る力は大使にはない。

それから、ええ、簡単でした。王子は予定どおり王太子となり、リーリア様は婚儀を前に王太子の不興を買って追放となりました。

私?私はその後、王太子妃となり後継の王子を産み、翌年王太子が亡くなると子を育てながら王を補佐しております。

いずれ王が亡くなり王孫である我が子が王位につけば、摂政として国を動かしましょう。その為には王にはそろそろ他界してほしいものですが、無論、私は油断して暗殺など謀りませんし、謀議に掛けられる行動もしません。。お祖父様を亡き者にした王ですから保身のためには自らの孫もその母も簡単に殺すでしょう。

「私に似たのは子でなく貴女だな。」

それは紛れもない本音でしょう。

ええ、私は権謀術数がすきです。貴方と同じにね。


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