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その7

いつもより遅い時間になりました。

帰宅後。


早めに仕事を済ませたいと思った俺は、早速大野さんに連絡した。


『高山です。これからよろしく! 早速Tシャツの話をしたいんだけど、大丈夫?』


よし、無難オブ無難。


中学3年のとき、受験が終わり、スマホを手に入れ、SNSを始めた時の痛い俺はもういない。

女の子相手だからとテンションが上がり、絵文字と(笑)みたいなやつを使いまくったバカはもういないのだ。


気になってた子に、「キモいよww」と返信されたことは今でも深い傷である。


ただ、失敗したなとおもったのは、宮本さんを含めたグループを最初から作っても良かったなということ。

正直、ちょっと嫌われてる気がするからな。


今日は早く帰ってきたから時間がある。


動画の衝撃がすごかったので、写真とか動画とか編集とか調べてみようかなとパソコンを立ち上げた。


父さんのお下がりのノートパソコンは、そこまで古いタイプじゃない。

部活も運動もしてない俺にとって、最高の友達である。


ピロン。ピロン。


少し時間が経った頃、メッセージが届いた。


ほぼ同時に2件。


新聞部のグループと、大野さんだ。


新聞部の方が上に来ていたので、とりあえずグループチャットを覗く。


今日の勧誘の手応えのようなものと明日の作戦を話していた。

俺の分も宮本さんが報告してくれているみたいなので、放置でいいかな。


ホーム画面に戻ったら、4件も通知が来ていた。

全部大野さんだ。


おそるおそる、チャットを開いてみた。


『よろしくねっ! Tシャツの話、すっごく嬉しい! 私なんかでいいのかな??』

『って、そうだ! 私まだあなたのこと信用してないの! あかりちゃんに近づこうとしてるわけじゃないんだよね!?』

『それだったら、ちゃんとしてくれるって約束してくれないと嫌なんだけど……』

『いや、なんか、協力したくないってわけじゃないんだけど、私たちに協力してほしいというか……とにかく、私はあかりちゃんが一番なの! そこだけは知っておいてよね!』


んん?


こんなにしゃべるキャラだったか?


思わず首をかしげてしまうほどの文字と絵文字。

なんか、急に怖くなってきたな……。

と、とりあえず返信。


『加賀美さんと近付きたいとか思ってないから安心して。大野さんが協力してくれる方が今は大事だからさ』

『これで、信用?してくれるかな』


や、やばい。

ちょっと冷たいか?

キザっぽいか?


いやでも、必要なことは伝えたでしょう。


それよりも、このテンションの方が気になるな。

宮本にも聞いてみるか。


大野さんのことを宮本に聞こうとチャットを開いた途端、大野さんからの返信が来たとバイブで気付く。


とりあえず放置で、宮本へのメッセージを打って、大野さんのチャットを確認する。


『うーむ、とりあえず今は信じてあげよう! 私も、新しい友達欲しいところだったからね! ただし、あかりちゃんになにかあったら絶対に許さないんだから!』


いや、マジで誰だよ!

あかりんがまずおかしいからな?

〜んだから!って今時使うやつおるんか!


『Tシャツの協力はもちろんオッケーだよぉ! みんなの役にも立てるし、やってみたかったんだぁ! ただ、みんなで作るからコミュ障発動しないかちょっと不安かも……』


ちっちゃい「あ」とか「お」とかなんだ!

お前そういう萌えキャラじゃないだろ!


そして、今!

すでにコミュ症発動してるから!

リアルでは挙動不審なのに、チャットでハイテンションとかギャップ激しくてビビるわ!


『あ、そうだ! 信用ついでに、私の悩みを解消するの、手伝って欲しいんだけど……』


結構噛み付いてたのにいいんだ?

信用した上助けも求めちゃうんだ?

どんだけ嬉しかったんだ、チョロインじゃねぇか。


しかし、俺は“いい人”になるという理想を掲げる男。

テンションジェットコースター娘でも、関わってしまった以上、“いい人”になりきるしかない。


困っている友達を即断即決で助けるのが、“いい人”だろう!


『これからよろしく!』

『Tシャツはほんとに助かる! 明日また作戦会議しよう! きっと仲良くやれるよ』

『もちろん、俺にできることならなんでもするよ!』


よしよし、テンションも少し合わせて、いい感じじゃないか?


そうしてる内に、宮本から返信が来ていた。


『私には、「友達になってくれませんか?」っていう、控えめで可愛いメッセージが来たわよ? ハイテンションとは思わなかったけど』

『それより、あなたからのメッセージはなんだか嬉しいわ。他愛のない話を盛り上げましょう!』


は?

どういうことだ?

いや、後半はもちろんわけわからんが、前半も謎だ。


大野さんはネット弁慶のコミュ障ちゃんじゃないのか?


そこに、彼女から返信が届く。


『よろしく! なんでもしてくれるなんて嬉しい! そしたら……』


「友達を増やすのを手伝って欲しい、だって?」


思わず声に出してしまったが、どうやら、大野さんは友達が欲しいらしい。


『私って、やっぱりコミュ障だから、全然話せる人増えなくてさぁ。今回、高山くんには貸しひとつだから、強気でここまで話せてるけど、今までのイメージもあるし、なかなか難しいんだよぉ』


俺はいつの間に貸しを作ってたんだ?


ま、まぁ、それはさておき。


大野さんの主張を要約すると、急なキャラチェンジとか無理だから、なんとなく自然に話せる人を増やすように立ち回って欲しいってことらしい。


正直、他人の交友関係つくるのって難しい気がするし、俺の負担半端ない気がしてるんだけど……放っておくのも、できないんだよなあ。

いい人になるって決めちゃってるしなあ。


仕方ない。

とりあえず、Tシャツの話を進めながらこっちも考えよう。


大野さんにはそれっぽく返信して……。


この件は、宮本とも相談だな。

俺1人では荷が重すぎる。

本当は宮本に相談したくはないけど、タッキーや三雲さんに迷惑をかけるのは、学級委員としてはどうかと思うから、しょうがない。


かくかくしかじか……。


ふぅ。

結構長い時間、スマホと睨めっこしてた気がする。


大野さん、めっちゃ返信早いからな。

しかし、これからどうするかな。


とりあえず、最優先はTシャツづくりだ。

クラスの大切な取り組みだから、失敗する訳にもいかない。


新聞部もちゃんとやりたい。

さっきちょっと調べても、やっぱり動画作りとか写真、デザインの技術は、あって損がないような気がした。


大野さんの件もな。

俺がいい人であるためには手助けするしかないだろう。

頼ってくれたことは、素直に嬉しいしな。


学校生活初週にして、こんなにいろいろ抱えるとは思ってなかったが、ポジティブに捉えたら充実してるってことだ。


俺の思うリア充な生活のためには、これくらい乗り越えてみせるさ。


なんて、心の中で自分語りをしてしまうのは春だからだろうか。


気づけば、外は暗くなっており、玄関で母さんの帰ってきた音がした。


なんとなく気恥ずかしくなって、心の中で“いい人”修行と称して、家事の手伝いをこなしに行く。

いつもは呼ばれてから行くけど、今日くらいはね。


その後、夕飯も終わって、くつろいでいた俺に、宮本の返信がきた。


『Tシャツの話と、大野さんの友達づくり、一緒に進展しそうなアイデアを思いついたのだけど』


おお、さすがだ!


俺は、一も二もなくそれに飛びつこうとしたが、よく見たら続きがある。


『協力する代わりにお願いを聞いて欲しいのよ』


なんだろう。

嫌な予感しかしないな。


*****


「何? 人を魔王みたいに扱うのが趣味なの?」


「いや、趣味というか。俺の目線では宮本が魔王なだけというか」


「優香って呼びなさいよ」


「それはやめた。怖いから」


「怖いって何よ」


「名前呼んだら付き合ってるのと一緒とか言い出しただろ」


「冗談に決まってるじゃない。どうしてもそういう認識にしたいなら別だけど」


「そうやって怖いからかい方してくるのが無ければなぁ」


「そう? でも、こんな私はきっとあなたの前だけよ?」


「……見た目はいいんだから、誘惑するのはやめろください」


「み、見た目はいいって……あなたがチョロすぎるのよ!」


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