表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対に恋したくない俺VS絶対に恋をしたい私【完結済】  作者: しゅしゅく
高校2年、夏休み
62/88

その61

ぎりぎりになってしまい申し訳ありません。


タッキーと話した作戦については、詳細は後日という形で終わった。


最後までタッキーは半信半疑だったが、俺はこの作戦が最高だと思うし、あいちゃんの負担にもならないと思う。


そんな風に考えて、少し明るい気持ちで家に帰る。

祭りのにおいをシャワーで流し、ベッドに入ったタイミングで、宮本からのメッセージがグループに来てるのがわかった。


『今日はごめんなさい。体調がいまいち回復しなくて、行けなかったの。みんなに迷惑をかけてしまって申し訳ないわ』


宮本の文言に続いて、大野さんが宮本のところを訪問したことなどが書かれていたが、みんな宮本に文句を言うような様子ではなかった。


まぁ、みんないい人たちだし、特に宮本のせいで起きたトラブルもないからな。

強いて言えば、大野さんが最後までいられなかったことがあるか。

ただ、それも本人から話をしに行けてよかったという発言があって、不満がないようなので、波風はたたなかったのだろう。


にしても、俺の夏休み唯一のイベントは、盆踊りでバカみたいに騒いで、タッキーの手伝いを約束して終わったのか。


そう考えるとちょっと悲しくなるな。


タッキーの手伝いの話は、また詳しく話すとしても、人と遊ぶ予定はこれで終わりだ。


「なんて、色味のない高校生活……」


夏休み前までクラスで色々しながらやってきて、それなりに充実してると思ってた。

だが、休み期間に入ると実感するこの虚無感。


多分、学校という舞台上でしか俺は動いてなかったんだよな。

周りのやつは友達と色々しながら、強いつながりをつくってたんだろう。


俺の周りには、いい人しかいないが、それぞれが別につながりを持っているタイプばかりだ。

別に、俺じゃなくてもいいのだ。


そう、俺じゃなくてもいい。


これが、“いい人”でいることにこだわりはじめた本当の原因だったのかもしれない。


どうもモテないなと実感しはじめた中3のころ。

女の子は怖いなとわかりはじめたころ。


ちょっといい雰囲気になり、仲良くなった女の子がいた。

いわゆる、俺のこと好きなんじゃね?

ってやつだ。


しかし、大抵はそんなことない。

だから、慎重になっていた。

絶対に付き合えるみたいな、確信が欲しかった。


モテない男ならわかるだろう。

わかってくれ。

失敗はしたくないんだよ。

あとで噂されたりしたら、心が死んでしまうだろ。


そして、女の子から、こう聞かれた。


「好きな人とか、いるの?」


キタ!

これは来たと思った。

流石にこれで俺のこと好きじゃないわけないと思った。


だから、告白したんだ。

答えは、OKだった。


ただ、それはもう、彼女の手のひらで踊らされてただけだったわけだ。


俺がその子と仲良くなりはじめたのは、お悩み相談みたいなことがきっかけだった。

俺が励ましの言葉をかける側だったが、話を聞いて励ましてるうちに、好きになってしまったというわけだ。


あちらも、こちらを頼りにしていたようではあった。

少なくともそれは意図したことじゃなかったみたいだし、役に立てたならよかったと思う。


でも、その後がよくなかった。


その子は、割と男を取っ替え引っ替えするタイプだったらしい。

そういう性格ゆえに、精神的に不安定な部分もあったのだろう。

話を聞いてくれる俺に、好意的な気持ちを抱いたのはその不安定さを緩和してくれるからみたいだ。


だから、付き合ってみたと。

だけど、刺激はなかったと。


そういうことらしい。


そして、次に付き合った彼がいい奴かつ、不安定にもならない相手だったみたいだ。


次に付き合ったのがいつかって?

俺がまだ付き合ってると考えてた頃だったよ。


なんていうか、カウンセラーとして見込まれて、つなぎに使われて、乗り換えされたという感じだ。

そして、役割が被ったから捨てられたらしい。


びっくりするよな。

そんなことがあるのかと思った。


でも、そんなことは普通に起きるんだ。

別に、彼氏は俺じゃなくてもいいのだから。

期待される役割を果たしてくれる人なら誰でもいいのだから。


頭ではわかっていたけど、自分で経験してやっとわかった。

大抵の恋愛は、遊びだ。

運命の出会いとか、ないんだ。


「彼氏」という役割が欲しいだけ、それを演じて悦に浸りたいだけ。

自分がそうなのだと自覚すると、寒気がする。

気持ち悪い。


俺の中で、多分、恋愛とか結婚とか、愛とか恋とかってもっと神聖なものなんだ。

意味をもたせたいものなんだ。


そういう考えは、多分、高校生には合わないんだろう。

だから、いいんだ。

がっかりするくらいなら、恋愛をしない方がダメージは少ないから。


手の中から、何かがこぼれ落ちていく感覚は、びっくりするほど、哀しいものだから。


そう、そうやって考えているのだから、俺じゃなくてもいい関係になるのは見えてたことだ。

俺はみんなにとって“いい人”なんだから、優しいという意味も、有能という意味も、都合のいいという意味も、全部含めて“いい人”なんだよ。


俺は、自分の誓いを思い出して、無味乾燥な夏休みを甘んじて受け入れることにした。


だが、そんなところに、大野さんからメッセージが来た。


『ねぇ、ちょっと遠出して、花火大会に行かない?』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ