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絶対に恋したくない俺VS絶対に恋をしたい私【完結済】  作者: しゅしゅく
高校2年、夏休み
57/88

その56 side大野真里

多分その52の続きです。

視点がコロコロ変わって申し訳ございません。

正直、わからないことだらけだった。


優香ちゃんが話してくれたことは、間違いなく優香ちゃんの中の悩みの種なんだろう。


でも、だからってあんなに沈むだろうか。


私は、多分そこそこ単純な人間だから、雪花ちゃんに話して、許してもらった時点で安心しちゃう。


そりゃ、ちょっと遠慮する部分もあるかもしれないけど、遠慮しすぎても楽しくないと思うから。


だけどきっと優香ちゃんは気にしてるんだよね。

多分、ちょっとだけ私よりも繊細なんだろう。

いつも、完璧みたいな子だから、うまくいかなかった時にどうしたらいいのかわからないかもしれない。


私は、転び慣れてるから転んだ時に、どうしたらあんまり痛くないのか知ってる。

起き上がる方法は知らなかったけど、みんなのおかげで起き上がれた。


今、初めて転んだ時のことを思い出してみた。

全部がマイナス思考になって、気力が全然湧かなくて……。


今の優香ちゃんはどうなんだろう。

電話口の声色を改めて思い出す。


今日は急用があって来られないというメッセージを受け取った時、私の中には確信があった。


きっと、優香ちゃんはタカリョーのことを諦めようとしてる。

正確には、身を引いて私に譲ろうとしてる。


私は、なんとなく、それが嫌だった。


本当になんとなくだし、はっきりとした理由もないけど。


だから、気づいたら走ってた。


宣言通り、優香ちゃんを迎えに行こうと思った。

住所は知ってた。

駅もわかる。


走る意味があるかはわからないけど、とにかく走った。

浴衣は走りづらくて、周りからは走ってたようには見えなかったかも知れないけど、とりあえず、急いで優香ちゃんのところに向かった。


人の波に逆行した。

多分、戻ってやぐらに行くのは無理だろうなとも思った。

ただ、周りが閑静な住宅街になっても、私の足は止まらなかった。


家の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。


「はい」


優香ちゃんの声が聞こえた。


「あ、あの! 大野ですけど!」


「……真里ちゃん? どうして……」


「迎えに、来たんだよ」


「なんで……」


「約束、一方的に破られたから」


私、ちょっと怒ってるかもしれないなとここで気づいた。


「入って。外は寒いでしょ?」


ガチャと扉が開いた。

それなりの一軒家の大きな扉から、顔をのぞかせる優香ちゃん。

いつもより、少し小さく見えた。


「おじゃまします」


入った家は、簡素で、でもそこそこの良い家だと思わせる品があった。

家の中に、お父さんもお母さんもいなくて、リビングに置かれたテーブルが、どこか寂しげに見えた。


「どうして、わざわざ来たの?」


私をテーブルの向かいに座らせた優香ちゃんは、困り顔でそう聞いた。

来なくてよかったのにと言いたげな顔だ。


「私が、優香ちゃんを1人にしたくなかったから」


でも、私は何も迷わなかった。


「約束したじゃん。一緒に、タカリョー攻略イベントやろうねって。どっちが上手くいっても恨みっこなしだよって。あれは、嘘だったの?」


優香ちゃんは、ちょっと苦そうな顔で答える。


「そうよ。あの約束をしたときには、ほとんど行く気はなかったから」


「どうして!」


おっと、ちょっと興奮して口調が強くなってしまった。


「どうして、そんなこというの? タカリョーのこと、嫌いになった?」


「そんなことは、ないのだけど……でも」


優香ちゃんはいつになく歯切れが悪い言い方をした。


「もう、諦めた方がいいかなって、身を引いてというか、真里ちゃんに譲った方がいいかなって、そう思っててね」


「なっ……」


私は絶句してしまった。

あれだけ私の背中を強く押してくれた優香ちゃんが、こんなに弱気なこと言うなんて。


らしくない。


そんなことまで思った。


というか、口に出た。


「らしくないよ。優香ちゃん、どうしたの?」


「どうもしてないわ。ただ、よく考えただけ」


「どうもしてないわけない。私に勇気をくれた優香ちゃんは、そんな暗い目してなかった。この前教えてくれた体育祭の話が関係あるの? あれは解決したんじゃなかったの?」


優香ちゃんは、特に口を開かない。


「ねぇ、教えてよ。私は、優香ちゃんを大切な友達だと思ってるんだから、だから、知りたいの。優香ちゃんが何かに悩んでるなら、力になりたいの。ねぇ、教えてよ」


「教えたくない」


いつもより低い声でピシャリと優香ちゃんは言った。

その拒絶するような言い方に、驚いてしまう。


「優香ちゃん……?」


「教えても、わからないでしょう? 全部、悪いのは私だし。ひとりでしんどくなって、ひとりで悩んでるだけなんだから。真里ちゃんに言ったところで、何も変わらないわよ」


どうしようもない拒絶。

どうしたら私の言葉が届くの?


「私の方がわからないわ。どうして、お祭りを切り上げてこっちに来たの? 私と話したところで、なんの意味もない。早く戻ってよ。きっと、ギリギリ間に合うんじゃない?」


あぁ、そうか。

届いてないんじゃないんだ。

無視してるんだね。


私をお祭りに戻そうとしてる。


だったら、無視できないようにしてあげる。


私は、席を立った。

そして、座っている優香ちゃんの元に行き、後ろから抱きしめた。


「何してるの?」


「ん、ちょっと無理してそうだったから。私は、戻る気はないよっていう証明」


「証明って……本当にいいの? お祭り、楽しかったでしょう?」


「楽しかったけど、優香ちゃんがいないのはやっぱり嫌だよ」


「どうして……」


「どうしても何も、私にとって優香ちゃんは大事な友達だから。暗い顔しないで欲しいだけなんだよ」


腕の中の優香ちゃんが、小刻みに震えているのを感じる。


「ね、教えてよ。優香ちゃんのこと」


「……聞いても、何にもならないわよ」


「いいよ。私が聞きたいんだから」


優香ちゃんの顔が、見上げるようにこちらを向いた。

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