その53
どうするべきかなと、思考がフリーズした。
「とりあえず、やぐらの方に行こうか。大野さんが何をしにいったのかわからないし、案外すぐに帰ってくるかもしれないよ」
「そ、それもそうだな。大野さんがあんなに急いでるなんてどうしたんだろうな」
「そうだね。もしかしたら、宮本さんを迎えに行ったのかもしれないし」
「確かにな。んじゃ、やぐらで待ってるのが無難か」
そう言って俺たちはやぐらの方へ向かった。
やぐらの近くには、もうすでにある程度の人だかりができている。
やぐらでの盆踊りまではまだ少し時間があるが、太鼓はすでにセッティングされていて、最後の打ち合わせをしているような大人が上にいるのが見える。
俺たちはアバウトにやぐらで合流を計画していたので、まだみんなを視認できていない。
「人ごみに紛れて、互いに迷子になっても嫌だよな」
「確かに。どっかで待機して連絡を待った方がいいだろうな」
「あそこのたこ焼き屋の横とかどうだ? 大きい木が近くてわかりやすいし」
「いいな、そうしよう」
そうして俺たちは二人で、大きな木の近くにあるたこ焼き屋の付近で待つことにした。
まずはみんなにメッセージを送信して、どこにいるのかを聞いた。
ついでに俺たちの場所も伝えておく。
「これでとりあえずは待ちかあ」
「これはこれで暇だな」
「確かに。あ、返事きたな」
「なんて?」
「ちょっと遅れるかもだって。なんかどっちのグループも遠くにいるらしい」
「へえ。こういうイベントで時間があやふやになるのはよくあることだからね」
「そうだな。確かにそんなに気ならないけど、暇は暇なんだよな。タッキー、なんか面白い話してよ」
「いや、それ、一番やっちゃいけないむちゃぶりでしょ」
タッキーをこうやってからかうのは、俺以外あんまりしないんだろうなとおもいつつ、適当な話を続ける。
「そういえば、話さないといけないと思ったことがあったんだった」
「ん?」
「ほら、文化祭準備会で話すっていった話のことだよ」
「ああ、でも、今日でいいのか?」
「うん、別に、俺としてはタイミングについてはどうでもいいんだ」
「そうなのか」
それだけ言葉を返して、反応を待つ。
タッキーはなんとなく思案しながらこちらに視線を向ける。
「それが、その、実は、俺の恋の話なんだ」
「こ、こ、こ、恋!?!?」
俺はもう驚きと驚きと驚きでどうしようもないほどパニックになっていた。
いや、うん、そりゃあね、タッキーだって男だから、そう言うこともあるだろうけど。
高校生男子だから、恋愛に彩られた青春とか普通だと思うけど。
でも、俺は、なんとなくショックだよ!
俺の、俺の推しが、恋をしているなんて!
というのは冗談としても、なんだか意外だったんだよな。
タッキーってそんな青春してるってかんじでもないし。
「って、え、恋? 付き合ってるとかではなくて?」
「ああ、うん、そうだよ。まだ、恋してるだけ」
「恋、してるだけ。お前が?」
「イケメンなのに?」
「イケメンではないと思うけど」
「行動力あるのに?」
「それは、なんというか、関係ある?」
「サッカー部なのに?」
「サッカーやってるかどうかって関係ある?」
困惑が口から次々に出てきてしまっている。
いやいや、とりあえずここは話を聞こう。
「うん、まあ、続きを聞こう」
「ありがと。んで、その恋の相手っていうのが、片倉先輩なんだよね」
「うぇぇぇぇ!?!?!?」
マジ?
あいちゃん?
マジ?
「マジ!? あいちゃん!? マジ!?」
思わず思ったことがそのまま声に出てしまった。
「そうだよ。そう。いや、ホントに驚きすぎだから」
「だって、いや、驚くでしょ。そりゃあさ」
そりゃあって言ってるけど何に驚いているのかは自分自身でもよくわかってないんだよな。
いや、昔からの知り合いが今の友達の近くにいて、しかも恋愛対象だと知ったら普通にびっくりするよな、うん。
一人で納得した。
うん、まあ、だからってその先の話聞かないとどうしようもないだろう。
「まあ、驚いてくれてもいいんだけどさ」
「でも、どうしてそんな話を俺に?」
「いや、まあ、ちょっと協力してほしくてさ」
「協力?」
「そう、俺の告白の協力」
「お前……」
お前、そんなものに気を遣わなくてもいいタイプの人間だろう。
という言葉はぐっと飲みこんだ。
その代わり、目線で話をつづけるようにタッキーを促す。
「いや、あのね、俺、これまで恋とかしたことなくて、正直、告白とかどうしたらいいのかわかんなくてさ。それで、ちょっと聞きたかったんだよ、色々と」
「色々とって言われても、俺もそんなに恋愛わかんないよ」
タッキーから恋愛の、しかも告白の仕方みたいなことを聞かれるとは思ってなかったからバグった頭で適当なことを返してしまった。
いや、頭バグるよね。
だって、このイケメンが告白わからんみたいなこと言っても説得力なさすぎるんだよな。
「一応さ、俺も勉強してみて……って言っても恋愛系の漫画をいっぱい見てみただけなんだけど」
「なんか、わかったのか?」
「うん、多分、ロマンチックな雰囲気が必要なんだと思うんだよね」
「なるほど」
まあ、確かに大体において間違っていない気がするが、それはお互いに気になっている男女がそういう雰囲気にのまれて一気に……みたいなそういう奴じゃないのか?
中学のとき、友だちが似たようなこと考えて、夕暮れのいい感じの噴水近くで告白してたけど玉砕してたしな。
いや、でもあれは、あいつが雰囲気にのまれまくって痛いセリフで告白したのが原因だった気もする。
うーん、わからん。
「そもそも、あいちゃんと仲はいいのか?」
「多分、仲良くさせてもらってる方だと思うけど」
「ほお、どんな感じで?」
「どんなって、買い出しのときについていって二人で作業したりとか、部室の整理を手伝ったりとかは、去年からずっとしてたかな」
「ふむ、プライベートで会ったりとかは?」
「え? ないけど? そういうのって、恋人になったら誘ったりする奴じゃないの?」
こ、こいつ……。
ぴゅあっぴゅあだ……!!




