5-1 ダンジョン探索だ
イエンの街について40日目。
ダンジョンの情報収集はイヴさんのまとめていた資料ですぐに終わった。
ダンジョン共通の特性としてダンジョンはこちらの世界とは違う異世界であるということだ。
異世界の根拠としてあげられる一つが出入り口以外からの侵入や脱出が出来ないという。例えば、地下に広がるタイプのダンジョンを地上から土を掘って侵入しようとしても掘っても掘ってもダンジョンには突き当らない。逆にダンジョンに入って、壁を破壊して脱出しようとしてもどんな方法をとっても傷一つつかないそうだ。
ダンジョンの自由な出入りや移動は可能ならばダンジョン攻略の大きなメリットになるため大規模に何度も行われたそうだが現在まで成果は上がっていない。
その他にもダンジョン毎に独自のルールが存在したり、建物の中に青空が広がる場所があったり、常に雪が積もっているダンジョンがあったり『異世界だから仕方がない』とまともに考えることを放棄したくなる事柄が普通にあるそうだ。
そのような様々なダンジョンの中イエンのダンジョンは独立型に分類されるダンジョンである。独立型は入り口からパーティー毎に転移する。転移した先のダンジョンには転移したパーティーのみで先に入ったパーティーとはや後から入るパーティーとは遭遇できず、『同じ構造の別のダンジョン』に転移していると考えられている。
独立型のメリットとしてはダンジョン内で冒険者同士のいざこざが発生しないこと。デメリットとしては、ダンジョン内でトラブルが発生しても外からの救援は絶対にないことなどが挙げられる。
他パーティーを気にしないでいいことから冒険者レベルに関係なく独立型は人気がそこそこあるらしい。自分も実情や性格的な面も含めて独立型はかなり助かる。
ただし、問題点もある。
それは魔物の素材が収集できない。死体が2,3分程度で消えてなくなるのである。急いで解体してもすぐに消えてしまうし、人間でもダンジョン内で死ぬと分解されてしまう。これはダンジョンに吸収されているという説が主流であり、基本的には他のダンジョンもこのようなところが多いらしい。
代わりと言っていいのか分からないが、そんなダンジョンではたまに魔石が落ちるらしい。
魔石は倒した魔物に対応していて、それを冒険者組合の独自の技術で食料やら資材やらに変換するらしい。ただ、お金にはなるがどうしてもドロップ率が安定しておらず収入が不安定となる。
野外とダンジョンだけでなくダンジョンとダンジョンでも一長一短がある。そうは言っても選択肢はあまりないし、目標を考えると少しづつでもダンジョンに挑戦したい。
妥協案として、ダンジョンを探索してお金が基準値を下回りそうになったら街の外へ出てウサギ狩りをすることにした。
そして、ダンジョンアタック記念する一回目。
大きな建物の中にイエンのダンジョンの入り口はある。建物はダンジョンということではなく入り口を管理するためにこの街の領主が建てたものだ。建物の中には入退の管理をしている兵士が配置されているがダンジョンへの入場料の類はとっていないそうだ。ダンジョンから得た物品の強制買い取りや税金等もないらしいのでどうやって運営しているか疑問だったがイヴさん曰く、冒険者組合からはそれなりに徴収しているらしい。
そういうわけでを駐在している兵士に入場の希望を報告する。二人分の名前を受付表に記入してもらう。
「ここが入口だ」
初回ということで案内で兵士が入口まで案内してくれた。受付を行ったカウンターの反対側の壁に鉄格子が一つ。鉄格子の向こうには四角柱にくり抜かれた空間に鉄格子と金網の箱。エレベーターが出入口となるらしい。
普通のエレベーターではなく建設中の建物の中にあるような見た目を配慮していないエレベーターなのである程度、整った室内には若干浮いている。そもそも、頑丈そうに見えない上に荷物もかなり持ち込むのでかなり怖い。
「中に入ったら鉄格子の扉が閉まる。その後、部屋が動き出して下に降りていく。その時、暴れるなよ。しばらくしたら止まって扉が開くからすぐに降りろ。ぐずぐずしていたらまた扉が閉まってここに戻って来るからな」
その言葉に頷き、エレベーターに乗り込む。思っていたより中は広く、重装備の男が5人ぐらいなら乗れそうである。ただ、側面どころか上も下も金網で出来ているので重さで底が抜けたり、エレベーター自体が壊れそうなので重装備の男達との相乗りは勘弁願いたいではある。
「ユウジ。これ大丈夫だよな?」
「ダンジョンは壊れない、というか壊せないらしいから大丈夫だ」
後ろからついて来ていたレンが不安の為か聞いてきたので出来る限り軽い感じで返答しておく。レンは結構、慎重……というかビビりというかそういう所がある。
「ダンジョンから出るときはまたこの部屋を使うんだ。扉の横に押すとへっこむでっぱりがあるからそれを押して、部屋が下りてくるのを待って乗り込めばここに戻ってこれる。他に使ってる人間がいると降りてくるのに時間がかかるがじっと待っとけ」
「分かった」
兵士に頷くと、金網の扉がしまる。
いよいよ、ダンジョン探索だ。