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この世界でいきていこう  作者: 三文茶筆
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3-2

「まずは仲間になったんだからいろいろ決めていこう。まず、一日の過ごし方だが朝に街の外に出て魔物退治」

「俺も一緒に行っていいの?」

「ああ、少しづつでもいいから戦闘に慣れないとダメだからな。まずは、俺が転がした一角ウサギにレンが攻撃をするとかはどうだ?」

「頑張る。……あ、その前にこれで武器を買おうと思ったんだ」


レンが首から下げた財布を取り出し、中身を全てテーブルの上に出す。以前に報酬として渡した銅貨を考えるとかなり多い。衣食住をかなり切り詰めているのかもしれない。こんな子供がここまでやっていると思うと形容しがたい気持ちがこみあげてくる。


「レン。人前で硬貨を広げるのはやるんじゃないぞ」

「わかってるよ。ユウジだから大丈夫だと思ったんだよ」


露骨に機嫌をそこなったのが分かるレン。


「そうだな。レンと俺は仲間だからな。……ただ、年長者としてレンが危ない事をやろうとしたら注意するからそれは我慢しろ」

「……うん。わかった」


思いのほか素直に聞き入れてくる。自分が子供のころはここまで素直だっただろうかと思いを馳せるとレンはやはりいい子だと思う。いや、間違いなくいい子だ。


「じゃあ、俺がこの硬貨を数えるから手に取っていいか?」

「うん。数えてくれ」


一枚一枚、丁寧に数えたが今日、自分が買った槍には残念ながら届かない。

ただ、それを言える心の強さが自分には無い。


「レン。まずはこの硬貨ですねあてと籠手を買おう」

「え?すねあて?」

「ああ、すねあてと籠手だ。まず、すねあてだが足を怪我すると踏ん張ることが出来ないから攻撃も防御もほとんど出来なくなる。その上、逃げることも出来ないから死ぬ」

「うん」

「人間はとっさに攻撃されると腕で守ろうとする。そこで腕に籠手をしていたら生身じゃなくて防具で受けるんだから大きな怪我も腕自体を怪我することも減る」

「凄い大事なんだな!でも、武器はどうしよう」


素直で凄い助かる。


「ちょうど今日、槍を買ったからそれを使おう」


あー、すねあてと籠手が揃うまでは戦闘は出来ないか……。いっそ街で留守番か?


「おおー。それが今日買ったやつか?」

「あとで使わせてやるからもうちょい我慢しろ。話しを続けるぞ?」

「おう!」

「魔物退治は昼までだな。で、昼飯とったらレンは勉強とか訓練だな……不満そうな顔だな」

「勉強じゃなくて魔物と戦ってレベル上げたい」

「レン、勉強は生きていくのに必要だ。読み書きと簡単な計算が出来ないと強くなるのに余計に時間がかかるぞ」

「どういう意味だよ。それに字ぐらい読めるし」

「読み書き両方だな。あとで確認する。で、強くなるにはお金が必要だな?計算できないと依頼料とか誤魔化される。俺もここに来るとき護衛依頼もついでに受けて来たが依頼料誤魔化されそうになったぞ」

「……数ぐらい数えられるし」

「じゃあ、レンが一日30銅貨の仕事を11日やったとしたら報酬は280銅貨でいいか?」

「……ダメだ」

「じゃあ、いくらだ?」

「……」

「答えは330銅貨だ。50銅貨損したな」

「勉強する」

「レン。この話は50銅貨損しただけじゃ終わらない。お金を誤魔化して得した奴はまたレンを誤魔化して得をしようと近づいてくる。どんなに力が強くてもそんな奴しか周りにいない人間は長くは生きていけない。……よくも生きていけない」

「……難しくてわかんない」

「……これから長い付き合いになるんだからゆっくりでいいさ」


「お金に関してだが……レンは今どこに住んでる?」

「一応、孤児院……寝るところだけ世話になってる」

「なら、生活費……住む場所、食事、服や装備、他にも生活や仕事に必要なもののお金は俺が出そう」

「そんなに出してくれるのか!?」

「まぁ、レンがしっかり俺を養ってくれるために出してると思ってくれ。お金を出せない場合ははっきり無理と言うからあまり遠慮はするなよ?」

「うん……ありがとう!」

「まずは住む場所の移動だな。孤児院に荷物があるなら取ってきて……孤児院から引っ越すなら俺もあいさつしに行った方がいいか?」

「うーん。そういうのはやらない方がいいと思う。寝場所の礼と引っ越しの話は一人で大丈夫」

「そっか。なら、俺も一人部屋から二人部屋に移動をしとこう」

「二人部屋?」

「流石に一人部屋を二つ借りるのはお金が辛いからな」

「二人部屋ってことは俺とユウジが一緒の部屋で寝るってことか?……そういうことじゃないよな?俺にはまだまだ早いよな?」


レンが急に赤くなり始め、もごもごを独り言を呟き始める。


「レン?」

「……ユウジ!!信じてるからな!!」

「あぁ、うん」


レンはそれを聞き終わると椅子を飛び降り、宿屋の出入り口へと足早に向かう。


「孤児院に行ってくる。すぐ戻るからここにいろよ!」


振り向いてそう言うと扉から外に飛び出して行った。

何が何やらと呆然としていると台所にいた店の主人が一言。


「あの子は女の子だぞ」




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