表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界でいきていこう  作者: 三文茶筆
51/60

15-3

森の中は想像していたよりも広々としている場所であった。理由としては巨木と巨木の間が広いことと枝が高い位置からしか伸びていないことが大きい点だろう。


あとは背の低い雑草がぽつぽつとしか生えておらず、向こう側が見えない茂みが視界内には数える程度しかないこと。秋から冬の様な気候がより視界の確保に影響している。


ただし、足場に関しては巨木の付近は根っこのせいで凹凸が出来ている部分がある。安全を取るなら巨木からある程度離れて戦闘した方が良さそうだが、今後を考えると足場の悪い場所での戦闘も経験していた方がいいのではないかとも思ってしまう。


ただ、今回は初回なのだから安全優先で行こう。


「ユウジ。目印の棒刺したけどこれでいいのか?」

「ああ。これぐらい刺せば倒れないだろう」

「まずは生えてる草を調べてみないですか?」

「了解」


迷子防止用に使っている棒をレンが差し終わると待ちきれないとそわそわしながらルーテアが発言する。地下11階に行くと決まったときからルーテアはわくわくしていたから仕方ないと小さく笑う。


なので、ルーテアの警戒が緩んでいてもカバーできるようにスキル警戒を更に意識する。頭の中に正方形のマスが整列するイメージを思い浮かる。そこに見えている巨木、背後にあった今は見えない巨木を思い出しながら黒い円で配置していく。見えない部分は配置せずマス目のままにする。


魔法の威力がイメージで上がるならスキルもイメージで強化できるだろうという考えから始めたスキル強化練習。低階層で練習してきたそれは実を結び敵を察知すると想像のマス目に白の点が現れる形に強化された。以前の警戒ではある程度の方向が分かるくらいだったがこれはより正確に方向が分かり、ある程度の距離が分かるようになった。その結果、ステータス画面にスキル『索敵網』が追加されていた。


ただ、まだまだ練習が足りないのかある程度時間をかけ意識しないとイメージ出来ないし、戦闘などしようものなら一瞬でイメージが消える。あと、精神的に疲れるため長時間使うのが厳しい。


魔法のMP的な物ではなく、普段は使っていない脳の部分を使う疲れだと思う。なので、慣れれば長時間使用や戦闘中でも維持できるのではと予想をつけている。これを強化していけばゲームで見たことがある敵の位置が分かる全体マップが脳内で作れるのではないかと期待している。いや、イメージが大事なのだから目標がはっきり思い浮かべられるのならば努力で出来るようになるに違いない。


探索網を維持しながらある程度進み、目印の棒が見える間に新しい棒を刺す。これを繰り返し、五本目になったら回収しながら一本目に戻ることを繰り返しながら探索を行った。初回探索なので森の浅い部分でこの階層に慣れることが主目的だ。


途中で一角ウサギとゴブリンとの戦闘があったが問題なく戦うことができた。ぽつぽつと生えている雑草をルーテアが調べた結果、いろいろな種類の結構な量の薬草を採集することが出来た。この量なら全てを組合で売却しないでいくらかを自家消費してもばれないかもしれない。


そう考えていた時に『探索網』の端っこに白点が発生する。


「2時方向。白点3」


小声で『探索網』の状況を伝える。二人は即座に反応して俺を頂点とした二等辺三角形の陣形を取る。情報を伝えている間にもこっちに向かって白点は素早く移動している。俺たちが敵を補足するより先に補足されていたこと。白点の移動速度を考えるに灰色狼で間違いない。


「敵襲確定。遠距離攻撃許可。12時方向の茂み。三角配置。先頭レン。3……2……1……」

「ファィア……」

「0」

「アロー!」


俺のカウント終了と同時に茂みを突き破って飛び出す狼。即座にレンの声とともに魔法が打ち出される。狼も予想外の速攻だと思うのだが反応して身を捩ろうとしている。しかし、レンの火の矢は初めて強化が成功したあの時よりも速度を増している。


先頭の狼に火の矢がヒットした瞬間に続けて風切り音が鳴る。ルーテアの放った矢の先に飛び出すように二匹目の狼。その二匹目の顔面に確実に刺さったのが分かる。魔法の修練をしながら、それでも弓を鍛え続けたルーテアが取得したスキル『精密射撃』。警戒のスキルで敵をより正確に捉え、狙った場所に当てる技量を要求するスキルはどうしても威力が劣る弓矢の攻撃を急所に当てることで補う強スキルである。


一匹は炎に纏われ地面を転げまわり、もう一匹は地面に倒れ伏している。それにも関わらず茂みを抜け出した三匹目がこちらに向かってかなりの速度で駆けてくる。ただし、こちらが意識を集中するには十分過ぎるほどの時間がある。


剣を上段に構えて狼を見据える。狼を見ることに集中力すると同時に視界が狭くなり始める。だが、狭くなる視界の中の狼の速度も同様に落ちていく。


3メートルのイメージ円内に入った灰色狼に対して狼を見つめ、上段に剣を構えたまま待ち受ける。


こちらの無反応に警戒することなく大口を開け更に駆け寄る。


走っていたときは一定だった狼の肩の位置が一定以上を超えて上がり始め……俺は構えていた剣を振り下ろし始める。


ゆっくりとした世界の中で狼が前足を上げ始めるのを眺める。


予想通りこちらの首を狙った噛みつきであることが分かる。


その数舜あとの狼に向けて剣を動かし続ける。


上体が持ち上がった狼の肩口に剣が当たるのを見届け……


その直後、世界が加速して剣から重い手ごたえを感じたがそのまま振りぬく。狼が地面へと叩きつけられ転がる。ピクリとも動かないまま少しづつ煙となって消えていく。


スキル名『高速思考』。俺の戦闘スキル、切り札一枚目である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ