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この世界でいきていこう  作者: 三文茶筆
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休日後の夜明け

いつもは賑やかな音が聞こえる食堂部分も日が昇る前の時間帯では静まり返っている。そんな静寂に包まれた食堂で一人、椅子に腰かけていた。いつもより若干、早く起きてしまったのだ。原因は昨日の出来事での興奮のため。


昨日の出来事の一つ目はルーテアが一日で魔道具の使用に成功したこと。最初は発光する予兆も無かったのだがレンがお手本に魔道具を起動して、アドバイスをするとすんなりと成功させた。天才肌なのは分かっていたがここまで習得が速いとは予想できなかった。


習得後にステータスを確認したところドルイドのクラススキルに魔法取得技術と魔法薬作成が追加されていた。魔法取得技術はレンがマジシャンのクラスで覚えているものと一言一句同じだったのだが差があるのかは分からない。


差があるとしたら取得できる魔法の系統が違うケースなど想像できるが差があろうがなかろうが有効利用できそうな案は浮かばないので現状ではルーテアの意思を優先して回復魔法を覚えて貰うだけにしようと思う。


魔法薬作成に関してはポーションなどの魔法的な薬品を調合できるようになったと考えられる。ルーテアにポーションをいろいろ聞いたが作るにはどうすればいいかは分からないことが分かった。スキルを覚えたからといって即作成が出来るようになるではなくポーションの作成手順を知らなければ無理なのだろう。


ルーテアの師匠に直接教えて貰うのが最善だとは思うが彼女の反応を見るにそれは出来そうになかった。彼女がイエンのダンジョン地下30階を目指していることと関係しているのだろう。


ポーションがあれば心強いのだが11階に挑戦する前に自前で用意するのは諦めた方がいいかもしれない。ただ、魔法の取得と同じで何らかのアイテムで作れるようになる可能性も無いわけではないのでイヴさんにそれとなく話を聞くことになった。ステータスのクラスやスキルに関して秘密にしている状態で情報だけ得ようとするのはなかなか心苦しい。早めに話せる日が来ることを願う。


あとは、図書整理の日に調合手順書がないか探してみようと思う。ポーション作成に関して事前に情報取集を行っていればと思う。最年長として視野を広く持たなければ。


なかなかハードな課題が増えてしまったが魔道具に光が灯ったとき、ステータス画面に追加された二つのスキルが増えたのに気付いた時。そして、スキルの説明したときの表情を思い出すと少しでも早く課題をクリアしないといけないなと思わされる。




二つ目はレンの課題クリア。想像力が大事になることを前提にレンの持っている想像力を損なわないようにアドバイス無しで行っていたのだが結局は取り越し苦労で終わってくれた。


想像力を引き出すような言葉でアドバイスを行ったら初回からファイア・アローは文字通り火の矢となった。それに比べれば初期のファイア・アローは松明を投擲していたような物で、改良版のファイア・アローは中空を真っすぐに飛び、鋭さまでもを予感させる武器へと進化していた。


宿屋の自室でステータスを確認したところマジシャンのクラススキルに魔法強化が追加されていた。それはそれでレンは喜んでいたのだが同時にルーテアが二つのスキルを覚えてしまったので悔しそうにしていたのはレンらしくて個人的には好ましい。


ただ、俺はレンの進歩にこそ衝撃を受けた。表面的に見れば魔法の使い勝手が向上しただけだがこの結果は恐ろしいほどの意味を持っていると俺は考えている。


魔法は想像力で強化することが可能である。


俺の身体能力の向上は何が原因なのか?


ステータスの「高密度魔素体質」と表記されたクラスから考えるに魔素なる物と推測できる。


この世界では魔法の元は魔力と呼ばれている。


魔素と魔力は近しい、もしくは同一の物なのではないのか?


体外へと力を行使した結果が魔法であり、自分の体内へ力を行使した結果が俺の身体能力向上。


もし、同じようなら。想像力によって成長していけるのなら……それは、限界が無いと同意なのではないだろうか。現状でも人間という枠組みからは逸脱していると思う。才能という言葉では決して収まらないほどの身体能力へと成長している。


前のめりになっていた体に気づき、意識して椅子の背もたれに体を預ける。興奮して視野が狭くなっているかもしれない。息を大きく吸ってマイナスな要因を考える。調子に乗って失敗するのはよくやるミスだ。


限界が無いと言っても、それを満たすエネルギーのような物は必要だろう。今まで出会ってきた人のほとんど全てが人間としての範疇に収まっている。もちろん、その人の戦っている姿を見ているわけではないので実際には飛び出している人もいたかもしれないがそれでも過半数が常識的な範囲内に収まってるはずだ。そうでなければ低下層のダンジョンでここまで儲かる冒険者が溢れているはずだ。それに俺自身が枠内に収まっていた時期もある。


そして、枠内から枠外へと進み始めたのは魔物と戦い始めてから、もしくはダンジョンに入り始めてからだ。そう考えると魔物を倒すことによって経験値を得て強くなるというよりは魔素や魔力を吸収して強くなっているのだろうか。……いや、冒険者を引退したことによってレベルが下がるということは聞いたことがないのでそれそのものを吸収するというよりも魔素や魔力を蓄えられる量が増えているとかそれを生み出す何かを吸収していると考える方が筋が通っているかもしれない。


マイナス要因を考えて興奮を抑えようと思ったのだが全然意味が無かったことに少しだけ自分自身を笑ってしまう。


ただ、これは仕方がないかと同時に思う。努力しただけ努力が報われる可能性があるのだ。それが強さだと言うのも実に強く心に響く。ここで奮起してしまう程には摩耗していなかったようだ。


日が昇るまでにはもう少し時間がかかりそうだ。今日のダンジョン探索も安全第一で頑張ろう。

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