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「えーっと、クラスのレベルが全部2まで上がってレベル6になった……なりました。スキルで徒労軽減……疲れにくくなるのを覚えました」
ミーティングの経験がほとんどないのに加え丁寧語で話そうとしているためたどたどしいがレンが自分のステータスの変化個所を説明する。ルーテアから聞いた話。わざわざ丁寧語を使っているのはミーティングなどではルーテアの話し方があっていると話していたのを聞いていたかららしい。
現在は丁寧に話す機会はないが出来ないより出来た方がいいのは間違いない。時間をとって礼儀作法の勉強も取り入れた方がいいかもしれない……よく考えれば俺もやった方がいいな。イヴさんに相談してみよう。
ついつい思考がずれてしまったので、手元の紙に意識を向ける。
総合LV6
ソルジャー LV2
→ 槍技術、盾技術、片手剣技術
マジシャン LV2
→ 魔法習得技術
ポーター LV2
→ 運搬技術、徒労軽減
レンの発言通り新しいクラスの取得は無く、全てのクラスがレベル2まで上昇している。スキルの徒労軽減はステータス画面の表示に気づいたレンが喜び勇んで聞きに来たので名称と推察される影響を伝えてあったのだが……。説明を受けてがっかりしているレンを思い出す。その場でフォローをしたのだが今でもあまり気にいっていないようだ。
「レン。繰り返しになるが徒労軽減のスキルはいいものだぞ。正直、俺も取得しようかどうか迷ってる」
「でも、ユウジはとってないじゃん」
「俺が取ろうとするとポーターのクラスまで取らないといけなくなるからだよ。他のクラスで似たようなの取れる可能性もあるしな」
レンの顔には大きく不満です!と書かれている。俺が適当なことを言ってはずれスキルを取得したレンを慰めている……と感じて、慰められるのも適当にあしらわれていることも子ども扱いされているように感じて気に食わないってところだろうか?
そう言う所が子供っぽいというか年上から見ると微笑ましい。苦労して顔に出ないように注意しながら言葉を続ける。
「繰り返しになるけど疲れにくいってのは凄いアドバンテージ……有利だぞ。冒険に出て疲れにくいから通常より一回戦闘を多くこなせるようになったらどうなる?」
「……お金が儲かる?」
「そうだな。魔石が出ればその分は儲けだし、その戦闘の分だけ強くなれる。一日だったら一回の戦闘分だけどこれが10日、20日、100日って積み重なればレンはそれだけ早く、高く強くなれる」
「おお!」
感嘆の声にレンが納得してくれたことが分かる。隣のルーテアは何かを考えてるようだが発言はなかった。ここはもう少し聞きたいことをレンに聞こう。
「それで徒労軽減のスキルを取って実際に疲れにくくなってるはいるか?」
「えーっと、……分かんない」
「まぁ、普通は分からないよな。俺からもレンがタフになってるか気にしてみるから、レンも意識して
みてくれ」
「おっけ」
「最後にレンに試練を課す!」
「試練?」
「そうだ。この課題を乗り越えたときレンは新しい力を得ることになる!」
「おお!新しい力!!やるやる!どんなことだ?」
「一つ目は『ファイア・アロー』の威力を上げること」
「どういうこと?そんな事出来るの?」
「威力を上げるっていうのは『ファイア・アロー』の一撃で倒せなかった敵を一撃で倒せるようにすることだな」
「それをどうやってやるんだよ」
「まずはいろいろ考えていろいろやって欲しい。相談には必ず乗る」
俺が何かを企んでいるのかと真っすぐ目を見てくるが無言を貫く。レンは孤児であったためか人への警戒心が強い。一瞬前の喜びからの落差に悲しくなるが仕方ない。
先入観を与えたくないのだ。威力を上げるから俺が考えるのは魔法の矢を大きくするとか温度を上げるなどだ。魔法はイメージと密接につながっているというのは創作物のお約束。俺のイメージがレンの自由な想像の足かせになりかねない。発想に制限の無いこのチャンスを俺の言葉で潰す訳にはいかない。
「ユウジが悪いこと考えてないのは分かるけど……俺もいろいろ考えたり、試したりするから相談は絶対に聞けよ」
「おう、助かるよ。で、二つ目は『コレクト・アクア』の水を指先以外の場所に発生させることだな」
「それも自分でいろいろ考えろってことだろ?……そうだな。試練なんだから難しいのは当たり前だよな。頑張ってみる!」
更に一転して力強く宣言してくれるレン。ほっとすると同時にレンの心遣いに感謝する。