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「それじゃあ、クラスの話に移ろう。誰からやる?」
レンとルーテアからの反応がない。クラスに関しての報告会はそれぞれがそれぞれのクラスやジョブの変化を説明することになっている。なので、初の報告会となる今回は二人とも勝手が分からず尻込みしているのだろう。
「じゃあ、俺からだな」
そう言って、二人に自分のステータスを記載した紙を渡す。報告会ではステータスの記載と話し合った中で気になったことや気づいた事は積極的に記述するように言っている。書くことによって考えをまとめたり、後から読み返すことも当然だが字を書く経験を二人には積んで欲しいと思っている。二人に渡した分はローマ字表記だ。いずれは平仮名、片仮名、漢字で記載された物を読めるようになって欲しいと考えているがまだまだ先のことではある。
「で、前にも言ったがこの紙は部屋から持ち出し禁止だ。レン、理由は?」
「クラスのことを知ってるのがばれるのがダメだから」
「正解。何度も繰り返して悪いな」
「いいよ。ユウジがそれくらいやっちゃダメだと思ってるんだなって分かるし」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かる。それで紙の内容に関してだが」
手元の紙に目を落とす。内容は二人と同じく現在のステータス画面のまとめだが二人の物とは異なり平仮名、片仮名、漢字で記載している。ローマ字表記はどうしても目が滑ってしまう。
総合LV7
ソルジャー LV2
→ 槍技術、盾技術、片手剣技術
スカウト LV2
→ 警戒
コマンダー LV2
→ 前線指揮
高密度魔素体質 LV1
「ソルジャーと高密度魔素体質のレベルは同じまま。スカウトとコマンダーが増えて総合レベルが上がった感じだな……スカウトはルーテアと同じで、警戒のスキルも取得できた。コマンダーは指揮する人って意味で、戦闘するときにレンやルーテアにあれこれ指示を出してたから取得したと思う。これは前線指揮のスキルからも間違いない。ただ、スキルの前線指揮がどういう効果を持つかは分からない。……俺のクラスとスキルはこんな感じだな。何か聞きたいことや気づいたことはあるかな?」
渡した紙を目を落としている二人に長々と話す。ルーテアはいつもの勉強会と同じように真剣な顔で取り組んでくれているが同じようにレンも真剣に取り組んでくれている。あまり勉強が好きではないレンではあるが興味のあることが絡んでいるので真剣度が段違いである。教師という職業はこういうことに喜びを見出すのかもしれない。
「ソルジャーも魔素なんちゃらもレベルは上がってないんだな」
「いい指摘だ。これの理由は二通りの可能性を思いついたんだが、一つ目はレベル3に必要な魔物の討伐がかなり必要な場合。この場合、ソルジャーのレベルが3に上がるにはスカウトやコマンダーが2まで育つ以上の経験が必要なのが分かる。そこから更に予想するとレベルが上がれば上がるほどレベルを上げるには倍々で魔物を狩る必要数が多くなるな。……もう一つが強い魔物を倒さないとレベルが上がらない可能性だ」
「どういうことですか?」
「例えばこのままゴブリンを倒していてもソルジャーのレベルは3にならない」
「3に上げるには灰色狼を倒さないといけないってこと?」
「そうだな。そして、更にソルジャーのレベルを上げるならいずれ灰色狼以上の魔物を倒さないといけなくなる」
「……ユウジさんはどちらが当たっていると考えてるんですか?」
「どちらが当たっているかというより二つ目の強い魔物を倒さないと上がらないと考えた方がいいと思ってる。一応、どっちも間違ってる可能性、どっちも正解の可能性もあるけどな」
「そっちで考えた方がいいって意味は?」
「数を倒せばいいならこのままでもレベルは上がっていくけど強い魔物を倒さないといけないならこのままイエンのダンジョンだけで活動してたらレベルが上がらなくなるだろ?それなら最初から強い魔物を倒さないとレベルが上がらなくなるって考えて行動した方がいいと思うんだ」
「どっちも正解?」
「魔物の種類ごとにレベルが上がるための倒す数が変わる可能性だな。ソルジャーのレベルが3になるためにはゴブリンだったら1000体倒さないといけないけど、灰色狼だったら100体で済むとかだな」
「ふーん」
怒涛の説明だったが気になったことは二人とも即座に質問してくれているのはこちらとしてもありがたい。二人の質問が尽きるまで答え続け、ミーティングは順調に進んでいった。