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この世界でいきていこう  作者: 三文茶筆
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14-2

二人の表情に安堵と満足を覚え、話を続ける。


「敵を知り己を知れば百戦あやうからずって、言葉があってな敵の事、自分の事を理解して戦えば100回戦っても1回も負けないって意味だ」

「……かっこいい」


二人ともこういう蘊蓄とか小ネタに素直に感心してくれるので結構、嬉しい。俺の考えた言葉じゃないのは脇に置いておくとして。


「で、新しい敵となる灰色狼はどの程度か分からないが基本的なオオカミは知ってる?」

「四本足で耳がとがっていて口が大きくて尖った歯のやつだろ?」

「僕は一応、実物をみたことあります」

「二人とも外見は知ってると判断するが……」


そこから三人でオオカミについて話す。結論としては、噛みつき攻撃を警戒して防具の更新と噛みつきを想定した模擬戦を行うということになった。


防具の更新は腕や足などを優先して行い、噛まれると一番リスクの高い首部分はマフラーのように布を巻くということに決まった。普通に無謀か無知である判断に見えるが世知辛い話、首を守る防具、手足を守る防具を両方、全員分揃える金銭的余裕がなかったことが原因である。


それを踏まえて噛みつかれる可能性が首より高い手足の防具を優先しようとなった。手足を噛んで振り回すなり、押し倒して急所を狙う起点にするのは容易に想像できる。それならば、噛みつきに対応する立ち回りを練習する必要があるとなり、俺がオオカミ役になって模擬戦をすることになった。


オオカミ役ってなんだよって感じではあるが、俺の右手をオオカミの口と見立てて、右手で掴まれないように戦うことだ。結果として、素手対武器有の模擬戦になってしまうがお金を貯めて、首防具まで揃えてから進むという安全策を選択しなかったのでこれくらいは受け入れる。


敵を知るという名目での話し合いではあったが、結局はこの程度で終わりにした。灰色狼の確実な情報がないことから具体的に対策が立てられないことと想像ばかりで対策を立てたつもりになって予想外のことが発生した場合、より危険性が増えるだけだと判断したためだ。


「それで少し話はずれるけど地下11階からは薬草やら果実やらきのこやらいろいろ採取できるらしい。で、これがイヴさんから聞いてきた採取できる物をまとめて書いたものだ」


一つ目の話題がひと段落したのでテーブルの上……には、置けなかったので紙に書いた採取できる物リストをルーテアに手渡す。


地下11階は森のフィールドが広がっているだけではなく、森の恵みと言える有用な植物が存在しているらしい。そして、10階より上では道に沿って配置されていた松明や壁につるはしを打ち込んでの採掘など出来なかったが、その有用植物の採取が行えるとのことである。


イヴさんの話によるとこの有用植物の売値が良いらしくイエンの街を拠点としている冒険者は採取をメインとしているため平均レベルが他のダンジョン街に比べて低く、冒険者組合イエン支部とイエンの冒険者は低く見られている。ただ、彼女自身は傲慢、強引な冒険者が少なく過ごしやすいと言っていたのが彼女らしくて面白かった。


「で、前は材料のせいで作れなかった薬とかも作れるようにならない?」

「……いろいろな種類が採れるんですね。これならいろいろ調合できると思います」

「お、それならこれも渡しておくから作れそうなのはあとで教えてくれ」


真剣な顔で採取リストを読んでいるルーテアに追加で紙のリストを手渡す。


「これは?」

「作ってもらいたい物をまとめて書いてみた。作れないものは作れないで構わないから作れそうな物とそれの材料を教えてくれ。材料の値段を踏まえて実際に作成するかは考えたいから」


手渡されたリストに目を通しながら真剣な顔が少し崩れるルーテア。多分だがにやける顔を必死に引き締めようとしている。


作ってもらいたい物リストは切り傷用の薬やら火傷用、化膿止め、解熱剤など回復薬とひとまとめにはせず用途ごとに書いた。さらに、目潰しやら匂い消し、痺れ薬などあったら便利な物も思いつく限り書いた。


結果としてかなりの量になってしまった。もちろん、ルーテアに面倒をかけている自覚はあるがそれでも日常的に使う使わないを問わずにいざという時に保険として用意しておきたい物も書いた。なので、面倒が多くて不機嫌になるのは分かるのだが……普段から難儀を厭わないのは知っているが笑顔になる理由は思い当たらない。


レンに目配せすると、こちらも首を横に振って分からないとの返答。分からないなら本人に聞くのが一番間違いがない。


「えっと、ルーテア?」

「あ、ごめんなさい。少し嬉しくて」

「嬉しい?」

「はい。何だか、色々な人から頼られてた師匠に思い出して……こんなに色々な物を調合できるようになったら少しは師匠に近づけるかもしれません。もしかしたら師匠が知らない物だって有るかもしれません。それを私が調合できるようになったら師匠に教えてあげれるかもしれません」

「すまないが俺も調合方法とかは知らないんだが」

「でも、どういうものかはもちろん知ってるんですよね?それなら、そこからは私のお仕事です!」


表情に負けず劣らずその性根も輝いてると思う。

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