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この世界でいきていこう  作者: 三文茶筆
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13-2

「こっちにもありました」

「ありがとうルーテア。魔石は合計三つか。二体で一個出ると考えると……上の階より一個当たりの買い取り値段が下がるらしいけど合計では上より儲かりそうだな」


ゴブリンを倒した後、俺が警戒を行い、ルーテアが魔石の回収を行ってくれた。


「初のゴブリン戦だったけどどうだった?」

「余裕、余裕!一角ウサギの方が怖い」

「僕も問題ないです」


自分の盾と剣をチェックしているレンが答えて、同じく装備のチェックを始めようとしていたルーテアも返答する。戦闘後には、装備の点検、ドロップの回収を交互に行うことにしている。警戒はスカウトのクラスをすでに取得しているルーテアと取得希望の俺で行っている。


いろいろ考えたがスカウトのクラスを俺も取ることに決まったのだ。そのため、戦闘後の警戒だけでなく斥候のように二人より先に進んで偵察なども行っている。パーティーの危機はレベル不足を除けば、奇襲を食らった時なども思い当たる。強さの上限が落ちる可能性もあるが安全第一だ。


「最弱の魔物って評価だからな。とは言っても折角だからもうちょっといろいろ感想を聞きたい訳だよ。……レンは最初、やりにくそうだったけど何かあったのか?」

「いつもと違う感じ……間合いがいつもと違ってやりにくかったんだよ。いつもは俺が攻撃するために飛び込む感じだけど、ゴブリン相手だと飛び込まなくてもいいからな」

「なるほど」


レンは俺たちのパーティーの中では一番小さい。模擬戦は俺かルーテアのパーティー内でしかやっていないから若干ではあるがどうしても間合いが一番狭い。結果として、レンが攻撃範囲内に相手を捉えるには相手の攻撃範囲に飛び込まなくてはならない。


「でも、結局は圧倒してたな。間合いで有利を取れた相手との戦闘はどうだった?」

「すっごい楽だった!ユウジはだからズルいと思った!」

「だったら、たくさん食べて、たくさん訓練して、たくさん寝て俺より大きくなればいいだろ?あとは槍をもう少し練習するか?」

「大きくなるのは分かった。槍はちょっと考えてみる」

「今回の戦い安定していて見ていても安心していられた。レンはもっと強くなれるよ」


レンも一応は槍での訓練を行っていてスキル『槍技術』を取得しているのだがしっくりこないと言っていた。最近は剣と盾がメイン装備となっている。レン本人が言ってるように攻撃範囲が長いのはそれだけでズルいぐらい有利だ。ただ、魔法があり、人が強くなり続ける世界では何が正解か分からない。レンの思うままにさせている。


「で、ルーテアの方だが……」


こちらをワクワクとした表情で見上げてくるルーテア。レンの戦い方は間合いを意識した防御的な戦い方だったのに対してルーテアの戦い方は素早さをいかした超攻撃的な戦いだった。ゴブリンがこん棒を振り上げる動きに合わせてその傍らを駆け抜け様に脇腹を切り裂いていたのだ。


普段の模擬戦ではレンがガンガン攻めてきて、ルーテアが慎重に一手一手考えながらのスタイルなのが面白くて、心強くも感じる。


「ルーテアも完璧だったな。素早い身のこなしもそうだが、特に最後まで気を抜かなかったのは良かった」


笑顔がまぶしい。本当は犬の獣人なのではないのかと思うぐらいの喜びようである。ルーテアはゴブリンの脇腹を切り裂いた後、十分に距離を取って振り返りゴブリンが完全に消失するまで構えを解かなかった。個人的にそこは非常に評価したい。


「で、すこし思ったんだがルーテアに盾はあんまり合ってないかもしれないな。素早さが強みなのに盾が邪魔になってるように見える」

「ルーテアは盾で受けないで避けるしな」

「確かにそうですね」

「でも、身を守るために近接戦闘の訓練をしているのに盾無しの形ってのもどうかとは思うんだが」

「うーん」


三人で頭を悩ませる。


「まぁ、これからのクラス構成も関係してるから地下11階に行く前までに考えれば大丈夫」

「なんで11階?」

「地下10階まではゴブリンだからな。今の感じだとこのままで問題は無いだろう。ただ、地下11階以降は敵がかなり強くなって、環境自体も変わるらしいんだ」

「環境がですか?」

「地下10階までは洞窟というか坑道みたいな感じだが11階からは森になるらしい」

「森!?」

「森って大きな木がたくさん生えてる所ですよね?」

「その森であってると思う」


ほとんどの人間が秘密主義なので情報取集も悪戦苦闘しているが冒険者組合の書籍や漏れ聞こえる話から推察するにフィールド自体が様変わりして森になるらしい。現在の坑道フィールドなら前後を警戒すればそれなりに安全が保たれるが森になれば前後に加え左右への警戒、敵によっては上にも気を付けなくてはいけないだろう。


(敵に関しても確度が高い情報を集めないといけないんだがな)


知識の伝達を国の支配者層が押さえていると考えていたが実際にはそれに加えて知識を求めれば、手に入ること自体が異常な世界だったのかもしれない。


地下11階から20階までがここイエンの冒険者のほとんど全てが狩場にしている階層である。その狩場が

飯のタネなのだからその情報を他人に教えないのは同然だ。その情報で狩場に人が増えれば組合に持ち込まれるドロップ品は増え、買い取り値段が下がるかもしれない。買い取り値段が下がれば自分の収入にダイレクトに反映されてしまう。自分の収入が減って喜ぶ人間など俺は見たことがない。


そこまで複雑に考えずに単純に自分が死ぬ気で得た知識を他人に教えるのは真っ平ごめんだと言う感情論の結果なのかもしれない。情報を得るには多大な労力が必要で、命をチップにして手に入れたものなのだから。


(感情が原因だったら……)


「それよりもユウジはゴブリン二匹をどうやってあっさり倒したんだよ。俺どころかルーテアより早かっただろ!」

「僕も気になります!」

「いや、どうやってて言っても……」


並びがいい感じだったので、上手くいけばさっさと倒して、レン達を見守りつつフォロー出来るように待機できると思って試したのが運よく決まっただけなのだ。どうやってっと言われると困るが……。


レンとルーテアの顔を見ていると運が良かったと言うのは気が引ける。大人として立派に見えるように振舞うのも先達の役目かもしれない。さて、どうやってさっきの戦闘をもっともらしく語ればいいだろうかと考える。

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