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この世界でいきていこう  作者: 三文茶筆
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挿話 レンはユウジと出会って

言葉にできない気持ちがレンの体の中をグルグルと回っている。


場所は孤児院の一室。二段ベッドが二台詰め込められていて、レンはその一つ、ドアに近い方のベッドの下段で使い込まれて薄くなった毛布にくるまって横になっていた。ただ、横になっていても眠気はまだこない。


荷物持ちの仕事で体も心もくたくただし、久しぶりに、本当に久しぶりにもう入らないと思うぐらいにご飯も食べた。普通なら目をつぶった瞬間に寝てしまうような状態だがグルグル回るものでなかなか眠りに落ちない。


(ユウジ……か……)


思い浮かぶのは今日の雇い主の冒険者。初めて見る顔だったが冒険者どころか一般人以上の穏やかな雰囲気だったのでレンは声をかけた。


一人でレベルが低いことに不安はあったが、条件は良かったし持っていた剣と盾はしっかりしていたので雇って貰った。この判断が幸運だったとレンは思う。


戦果はお昼前に終わって一角ウサギが三匹。同レベル帯のパーティーが5人で丸一日かかって10匹程度なのを考えるとかなり良い。


レンが考えるに効率がいい理由は第一に装備がいい。一角ウサギの攻撃に耐え、取り回しやすそうな正規品の盾にたやすく肉を切る鋼の剣。普通の低レベル冒険者の装備は木製のこん棒に盾なども戸板を持てるようにしたものがせいぜいで持ってるだけマシなのだ。


ただ、それだけでは勿論ない。レンが印象に残ったのは確実に一角ウサギに止めを刺すためにその一角ウサギの一番攻撃力の高い攻撃をあえて受けることだ。これをすることによって戦闘時間が驚くほど短い。


多分だが安全な戦い方でもあると思う。


理屈としては攻撃を当てることを念頭にしていて突進されるよりは攻撃を捨てて、突進攻撃を受けることに専念した方が危険度は下がる。それでも、ちょっとした失敗が起きる可能性もあるのだから出来る限り攻撃される前に敵を倒したいと思うのは人として当たり前だと思う。……少なくともレンはそう思う。


ユウジはそんな当たり前をぐっと我慢している。


小さいころ母親が語ってくれた物語の主人公が示した勇気。


レンはその勇気を初めて物語の外に見た。


(俺に足りなかったのは勇気……だったんだろうな。冒険者になるって決めたのは自分なのに魔物にびびってずっと荷物持ちして……)


レンは息苦しくなるのも構わずに頭まで毛布の中に潜り込む。


(明日からまた頑張らないとダメなんだ!ユウジからいい話が聞けたんだから俺でも出来るように考えないといけないし、同じくらいの奴で討伐に行ける仲間も探さないと。あと、武器も何使うか考えないと……)


思考を無理やり切り替えたレンはしばらくすると小さな寝息を立て始めた。

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