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1 どんなことでも最初はある
「1日銅貨30枚で11日だと銀貨33枚ですよ」
「お、そうだったかね?」
悪びれもしない行商人の曖昧な返事。
嘆息をつきそうな内心を抑えてにこやかなまま手を突き出し催促する。
行商人の男はのろのろと革袋を取り出し、
差し出した手のひらに小さな銀貨を乗せていく。
枚数を誤魔化されるのも面倒なので、
男の乗せる銀貨を声を出してカウントする。
銀貨33枚きっちり受け取った後、
男に軽くあいさつをして街の中心へと振り返る。
ここはダンジョンを有する街、イエン。
今日から生活をする街。そのまま一歩を踏み出す。
街の中心にあると教えられた冒険者組合に向かって。