不死の少女
とくに何も考えないで夜中に殴り書きした物語?です。
自己満足だけど、せっかく投稿してみたので最後まで読んでもらえたら嬉しいです。
あの海には不死身の少女が沈んでいる。
崖から落ちたのに、死にぞこなったあの日から、ひとりぼっちで…………
獣も寝静まる夜。森の奥深くの祠に一人の少女は閉じ込められた。
「さよなら……穢らわしい化け物」
母親の呟きを最後に、光も音も何もかもが閉ざされた。
「だれか…………だれか!!!!」
幼い顔と小さな手で、嘆き、扉を叩くが、誰もこない。
大好きな母親の声を思い出そうとした。
『ご飯できたわよ、早くおいで』
ご飯ができた時はいつもこうやって呼んでくれた。少し高めの落ち着いた優しい声で。
ほら、だからあの時もあの声で────
『早く────×××──化け物』
違う……!!!!だれ……私のお母さんは?どこ?
『化け物』
いやだ……!!頭から離れてくれない!!なんで……その声でそんなこと言うの…………
何も考えさせないで……もう、いつまでも寂しいのがこわい……
『✕✕✕……お母さんは、✕✕✕が大好────』
私が怯えるのはきっと、心に感情が残ってるから、寂しい以外の感情を知ってるから。
『ごめんなさい……た……叩かないで……』
そうだ……何もかも忘れてしまえ。
そう、私は、化け物だ。
毎日一回、砕けた石で作ったナイフで自分を切る。
死に方が分からない少女は、何度も試した。
心臓、首、腹、右手、左手。
よく血が出る箇所を、何度も、何度も、何度も、刺して、刺して、刺して、深く刺した。
でもいくら傷をつけても、どこからか黒い靄湧き出てき、傷口に触れると同時に傷をけしてしまう。
床に敷かれた蓙と、少女の心に赤黒い染みが増えるだけだった。
何も食べていないのに、全く眠らない時もあったのに、少女の雪色の肌と、艶やかな唇の赤が陰ることはなかった。
心だけが欠けていく。
ひどく虚しかった。
でもこの感情すらいつの間にか忘れた。
だけど心を忘れて何日目、突如地面が波打った。
今までビクともしなかった石の祠が、がたがたと音をたてる。
地面に合わせて少女の鼓動も大きく波打つ。
思わず、持っていたナイフから手を離した。
音だ……!!自分じゃない、外の音!!
必死に助けを求めて走りだした。だけど目の前に広がっていたのは崖だった。
「えっ……」
気づいた時にはもう遅く、体が宙に浮いていた。
そのまま考える暇もなくはるか下の地面に叩きつけられた。
頭が潰されているのか目が見えなかった。足も手も動かせなかった。
だけど音だけがよく聞こえた。
『おい!!お、お、女の子が……女の子が崖から落ちたぞ!!』
『おわぁ!!な、なんだこの黒い霧は……』
『見ろ!!傷がどんどん塞がっていく』
『ば、化け物だ!!早く今のうちに海神様のところへ流すぞ!!』
それから数時間後、ようやく目が見えるようになると、目の前に海が広がっていることに気づいた。
「人間としての理から外れたお前は、この世界にいてはいけないのだ。」
「お前みたいな化け物は二度と海から出るな!!」
「××××××××××××!!!!」
最後になんて言われたのか分からなかった。だけどその恐ろしい声にはどこか聞き覚えがあった。
どんっと勢いよく背中を押され、自分の体が宙に浮いた。
そのまま考える暇もなく海面に強く叩きつけられる。
「やっぱりこうなるんだ……」
死なないのだ、重りを繋がなくてはすぐに海面に戻れるだろう。
ただ、小さい心に負った、あまりにも深い傷では、外の空気には耐えられるはずがない。
少女には、心の傷を癒してくれる時が流れない。
「あぁ…………この世界にお前はいないはずなのに……どうして生きたいと思ったのだろう。どうして許されると思ったのだろう。」
泡の音が老婆のしゃがれた声に変わる。
「恐ろしい子、化け物、穢らわしい、死んでしまえ」
しばらくして、少女は底についた。
足元に散らばっている貝殻の残片が、まるで打ち壊された少女の心のようだった。
少女は静かに割れた貝をひとつ手に取り、力の限り自分を刺した。
恐怖なんてわすれた。だって少女は死ねない。だっ少女は化け物だから…………痛みだってすぐに消える。
死に方が分からない少女は、何度も試した。
心臓、首、腹、右手、左手。
刺して、深く刺した。
赤い靄が海に咲く。
あと数百年、少女がもう一度心を失くすまで、海を赤黒く染あげるまで、少女は海から上がれない。