─74─頭の中を埋める彼
こんにちは!本久禅です!
この作品を手に取っていただきありがとうございます!この話が初めてだよーって方は是非1話から読んでみてください!そっちの方がより楽しめます!
そして、1話から読んでくださっている方、読み続けて下さっている方々!本当にありがとうございます!
では本編どうぞ!
「なんでそんなにニヤニヤしてるんだい?昨日、俊樹くんとなにかいい事あった? 」
「いやいや!昨日の体育大会で結構満足のいく成績が上げられたので……」
というのはもちろん嘘で、考えていたのはやはり俊樹のことだった。
あの後、「女子達がいる中に夜遅くまで男がいるのもなんだから」という理由で、女子寮をあとにした俊樹は、そのままアレスの地へと戻り、再び回復魔法を会得するための修行に出るそうだ。
頭の中にあるのは、魔王討伐後のお花畑のような妄想と、それとは裏腹な、現実的にどれほどの努力を重ねれば魔王を討伐できるのかという試算であった。
過去に、『勇者』といわれる存在が、魔王に深手を負わせることに成功して、ようやく光と闇の世界に分断されたこの世界。
して、その勇者は歴史上で最も強いと言われる人だった。
1太刀で大地を穿ち、放つ覇気は魔物達を震え上がらせたという。
伝承の段階でどれほどの尾ひれが付けられているかは分からないが、それを除いても、余程の人物だったのであろう。
しかし、そんな人がようやっと深手を負わせることしかできずそれで光側の生物達は歓喜したのだ。
そんな魔王を死に追いやるためには、一体どれほどの『力』が必要なのであろうか?
想像すればするほど頭がクラクラして、霞んでしまう。そんな人に俊樹はなれるのだろうか?
そしてなれたとして、そんな人に私は相応しいのだろうか?
「大丈夫?ソフィー?さっきまでニヤニヤしてたのに今は顔色が悪いよ? 」
「は、はい。大丈夫です」
「今日は、学校で表彰があるみたいだよ!3種目で優勝してるソフィーには何としてでも参加してもらわなくちゃ!A組優勝の立役者だからね! 」
「いやいや、ペトラ先輩も大活躍だったって聞きましたよ? 」
「いや~っは~! 」
これは、昨日の晩酌会でマーシィから聞いたことだが、1年の長剣の競技を終えたあと、A組とB組の差は物の見事に全くなかった。
そんな中、体育大会の大トリとして行われたのが2年生による長剣の競技だった。
ここでは、2-Aの生徒が大活躍し、1位がユリアーノ先輩、2位がパトラ先輩、3位がペトラ先輩と、ワンツースリーフィニッシュで、結局今年はA組の圧倒的優勝で幕を閉じた。
「まぁでも、体調が悪いなら私が先生に言っといてあげようか? 」
「いえいえ!本当に大丈夫ですから!さっ!ちゃっちゃと表彰受けに行きましょ? 」
「そうだね!じゃあ行こうか! 」
その後、全校生徒は体育館に集合し、前日の体育大会で活躍した生徒達は表彰された。
私は光栄なことに、「1年MVP」を頂き、各々の種目での優勝についても表彰された。
1年準MVPとしてはマーシィが表彰された。「ひえぇ!?」という悲鳴に近い驚嘆の声が響き渡った時には、会場中にどっと笑い声が広がったのは印象的だった。
大会MVPは、生徒会長のユリアーノ先輩、準MVPはペトラ先輩で2人の感謝の演説は目頭が熱くなるものがあった。
そんな中、私の頭の中はずっと俊樹のことでいっぱいだった。
多分、今どれだけ悩んでも答えは出ないのに、考えずにはいられなかった。
それほど、彼の存在は私にとって大きいものだったのだ。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
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