夜の天使は眠りを抱いて
黒井羊太さま主催の擬人化企画「ヤオヨロズ企画」への参加作品。
前回につづき、変化球です。
“夜”が、“眠り”を抱いてやってきた。
喉には酒の気が残り、薄暗い部屋のランプのなかで、彼は焦燥にかられていた。
右手の中指には、血がにじんでいた。ぼやけた視界にくっきりと、彼自身の傷がうつる。左手の指でそっと触れる……つもりが、彼は傷をえぐっていた。いらだちにいらだち、おびえ……、心の震えを抑えるように、彼の指には力が入った。……洗面へはいきたくない。恐ろしい顔は、みたくない……。
息苦しくなって、彼は窓を開けた。冴えた星空が風を招きいれた。
外気が沁みる……こころに、罪におびえた、彼の心臓に……。それは静かに包みこみ、焔を焔のまま、凍結していく……。
天使のような面持ちで、夜は彼へと吹きこんだ。柔らかい羽毛で包みこみ、彼の脳から思考をはらった。
白い羽が舞い散るように、彼はベッドへ、沈んでいった……。
“夜”が、“眠り”を抱いてやってきた。
「抱く」や「招きいれる」などの動詞を使って、「夜(/星空)」を擬人化しました。
「ヤオヨロズ企画」には珍しい、シンプルな擬人化ですが、たぶん学校で習った擬人化って、こんなものだったでしょう。
原点にかえりましょう、ということでひとつ。
……ちなみに、
「夜」と「眠り」といえば、ギリシャ神話ですでに神格化されていますね。
ニュクスとヒュプノス……、ええ、参考にしましたとも。