神判【前編】
どうも蒼乃 睦月です。
意外に早く本編3話投稿です!
どぞ!
最初に、ユウの目に映ったのは、大きな広間だった。全体は、左右にある高い仕切りのせいで見えないが、それでもかなり広いことが分かった。
彼は、ゆっくり歩みを進めて仕切りを抜け、視線だけで周囲を見渡す。
広間の造りは、野球のスタジアムに似ていた。全体的に白を基調とし、数十階建ての高層マンションくらいはある高い天井。広間の中心を取り囲むように作られた壁には、テラス状の座席があり、部屋の高さの半分程にまで設けられている。そこには、若い男性や女性、老人。中には子供のような姿も見えた。ざっと見ても数百人程度はいるだろう。
その全員が、こちらに好奇の眼差しを向けているのを感じ、宛ら、法廷に入った罪人の気分を味わっているようだった。
そして、一歩も止まることなく、部屋の中心に辿り着いた。だが、
・・・ホントに、何なんだよ。これ・・・。
広間に入ってから、妙に体が重く感じていた。きっと、この視線のせいだろう。
そう考えたユウは、自身の状態を確認すると、視線を正面に向ける。
その先には壇があり、壇上には、背後に二人の若い男を控えた、座席に座る一人の老人がいた。
獅子の鬣のような灰色の長髪。もみあげと繋がった同色の髭と、鮮やかな黄色の瞳を持った男性。この中でも、飛び抜けて強い存在感を放ち、それだけ高い地位にいる人物であることが分かった。その彼が、真剣な目つきで、こちらを見据えている。
「気分はどうかね?」
「・・・え?」
「顔色が悪いように見えたのでな。少しばかり、気になったのだ」
壇上の男が、こちらの体調を確認してきた。ここに来てから感じていた不快感が、顔に出ていたのか、気を遣ってくれた。だが、最初の一言が予想外の質問に驚いてしまった。
「い、いや。ちょっと、体が怠いだけで。特には何もない、です」
「そうか。・・・では、これより神判を執り行う!」
体調に問題がないことを伝えると、男は声を張り上げ、神判の開始を宣言した。
待ち望んでいたことが始まり、ユウは再度、気持ちを引き締める。
「まずは自己紹介をしよう。私はゼウス。そなた達、人間が神話に聞く『神』であり、ここ『神界』に座す神の一人だ。では、転生者よ。そなたの名は?」
「凰神ユウ・・・って、え?」
自分の名前を言った後に、ゼウスと名乗った老人の口から聞こえた言葉に、疑問を持った。
「では、ユウ。これから・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「ん? なにか不可解な点でもあったか?」
「いや、その『神』って・・・」
開始早々、落ち着いていた思考が、再び迷宮に入りしそうになる。流れで名前を言ったが、冷静に捉えると、聞いた瞬間に聞き返すべきことだった。
人の一般知識からすれば、神とは、宗教信仰が対象とする存在。目には見えない神秘であり、その存在の真偽は曖昧だ。神界も同じく、それ自体を信じている人は世界的に見ても、そう多くない。
ユウが住んでいた国、日本でも、お寺や神社で、仏やら勉学の神様や、恋愛の神様などが祀られている所もある。だが、日本人からすれば、それは一時の願掛けをしたい時の対象に他ならない。
だが、目の前の男。ゼウスは、自分がその神だと言った。
・・・それに、『ゼウス』って確か・・・
ゼウスという名前は、ギリシャ神話に登場する最高神のことだ。その神話に登場する多くの神の父にあたり、全宇宙を破壊するほど強力な雷を操る、全知全能の神。
ユウにとって、それが目の前にいるとは、到底思えない。いくら転生などという事象が起きたことを、辛うじて理解できた今の状態では、無理がある。
「・・・そういうことか。すまない。人間にとっては、荒唐無稽な話にも程があったな。そなたに起きた転生についても、一から話そう」
早速の事態を整理しようとしていると、こちらの様子を察したのか、ゼウスが詳しく話してくれた。
まず、この世界について。『神界』と呼ばれるこの世界は、文字通り、神が住む世界。人間の住む世界とは切り離された、別次元にあると言う。そして、人間が住む世界の他にも、多くの世界が存在するらしく、それらの中心に存在するのが、この世界だそうだ。
そして、そこに住む『神』と言うのは、人間の持つ見解と大して変わりはなかった。人の目には見えない、霊的存在。人智を超えた力を持ち、森羅万象、人の営み、心理など多くの事象の原点になっているらしい。
加えて、彼だけでなく、ここまで連れてきてくれたパンドラや、こちらに視線を向けている、周りの人全員も神だという。
「一先ずは、こんな所だろうか。どうだね? 少しは理解できたかね?」
「・・・まだ、はっきりとは、言えない。でも、この世界が全くの別物ってことは、前にいた部屋で見た景色から、何となく分かった。でも・・・」
「『神』という存在は、まだ、受け入れられない、と?」
その通りだ。ここが、自分が見てきた世界と違うことは理解できた。だが、やはり『神』という者が実在するというのは、どうしても信じられない。
今、目の前にいる『神』と名乗る存在は、確かに目に見えている。人の姿をしていて、人の言葉を話し、会話ができている。こうして、コミュニケーションが取れる相手を『神』という超常の存在と思うのは・・・
「・・・・・・」
「・・・では、この話は後回しにしよう」
「え?」
「理解し難いことを押し付けられても、受け入れられないだろう? それならば、分かるものから、理解した方がよい。そう思わないかね?」
それは、尤もな意見だった。学校のテストと同じで、分からない問題ばかりに気を取られては、時間が無駄になる。なら、自分が解ける問題から取り組み、余った時間を使って、後回しにした問題について考える。それが、効率のいいやり方だ。
その意見に納得したユウは、首を縦に振る。それを見たゼウスは、満足気に頷き、話題を切り替える。
「では、次だ。おそらく、一番気になっているだろう、そなたの『転生』についてだ」
本編3話終了です!
もしかしたら、後編も同じくらいの期間で書けそうです。え?見切り発車?いえいえ、概要に肉付けしているから時間がかかるんです。
そんなわけで、次回をお楽しみに!




