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淵源の神造武装士〜アーティファクター〜  作者: 蒼乃 睦月
転生編
4/7

「意志」と「意思」

四日ぶりの更新です。

いや〜今回もかなり文字打ちました。

ホント、地の文多いな〜

 ユウが目覚める数十分前。

 同じ建物のとある一室。書斎なのか、室内には高価そうな木造の机と椅子。その後ろは壁一面のガラス窓。左右の壁には数多くの本がびっしりと詰まった本棚が並んでいる。そこに、椅子に座りながら資料のようなものを見る一人の老年の男がいた。

 その瞳には、手元にある資料の他に『憂い』が映っていた。それには、彼の顔を曇らせるようなことが記されているのか。それは本人だけが分かること。

 徐ろに立ち上がり、心に落ちた影を晴らすかのように窓の外を眺め始める。そこに広がるのは、綿のような雲の野原の上に、広大な大地。そこに建つ白亜の都市。天と地が逆転しているその景色は、まさに異郷。明らかに地上ではないことを顕著に物語る。

 そんな所に、何故この男はいるのか。それは、彼が人間ではない《・・・・・・》事に他ならない。人間が辿り着くことができない領域。そこに彼は存在する。

 『神』。人の姿をしていながら、人ならざる者。人知など及びもしない異次元の存在。それが、この男の正体。

 そして、その彼がいるこの世界は、悠久の時間を過ごす彼、いや、彼ら(・・)が存在する領域。その名を『神界』。この部屋は、そこにある彼の『神殿』の中にある自室だ。

 今見ている景色は、神である彼にとってはもう見慣れ過ぎたもので、どれほどの時が経とうとも変わりのない光景に、少しだけ気持ちが楽になる。


「・・・入れ」


「失礼します」


 部屋の外に気配を感じ、外を観たまま入室を許可する。すると、若い男が挨拶と共に入り、数歩歩いた所でその場に跪いた。ここにいる以上、彼もまた人ならざる者である。しかし、神である老年の男に跪いたことから、彼の存在は、神よりも低い位置にあり、仕えている側の者だということが分かる。


「何かあったのか?」


「はい。先程、パンドラ様からの報せがありました。彼が目を覚めた、と」


「そうか・・・」


「どうか、なさいましたか?」


 彼の報告に、老年の男はそれだけを答える。その様子を見た若い男は、その身を案じるが、彼は「大丈夫だ」と首を横に振った。


「それでは、如何なさいますか?」


「・・・神都にいる他の神達に召集をかけてくれ。三十分後、神判の間にて、彼に全てを伝える」


「よろしいのですか?」


「伝えるべきことは、伝えなければならない。それに、彼も知りたがっているはずだ」


そういう彼の顔は、若い男には見えない。ただ、命令が下った。仕える側の彼としては拒否する理由はない。


「承知致しました。ゼウス(・・・)様。御身の御意志の赴くままに」


 ゼウスと呼ばれた男から指示を出された若い男は、部屋を後にした。それを見送った彼は、真剣な面持ちで、再び外に顔を向ける。

 眼下にある光景を眺めながら、自身に言い聞かせるように、胸中で本心を語る。彼には、知ってもらわなければならないことがある。自身のこと、この世界のこと。そして何が起きたのかを。

 再び机の上に置いた資料に視線を移す。

 同時に、彼は思い出していた。自身の前に現れた三人の人間。彼等は願いを叶えて欲しいと言った。それをゼウスは聞き入れた。その願いに見合った対価をもらう事を条件に。彼等はそれを惜しむことなく受け入れた。

 あの時、ゼウスは少なからず驚愕していた。ただ同時に、呆れてもいた。自らの魂を差し出して(・・・・・・・・・・)も叶えたい願い。そんなものが有るのかと。だが実際、人間はそれを望み、ゼウスはそれを叶えた。


 ーー本当に、よかったのか・・・。


 過ぎた事は変えられない。それを分かっていても否定したくなる。人であろうと、神であろうとそれは変わらないようだ。


「いかんな。私も覚悟の上で彼等の願いを聞き届けのだ。こんな事では、彼等に申し訳が立たん」


 いつの間にか沈んでいた心に呆れながら、それを自制する。


「これは、誓いだ。人の持つ意志。それが自身の生よりも強く、尊いものだということを見せてくれた、彼等との」


 自分を鼓舞するように、それを思い出す。

 あの時、初めて感じた人の持つ力。何かを破壊し、争いを招く武力でも、他の誰かを貶めるような知力でもない。「『命』を。『魂』を残したい」という、人として、生きる者として純粋な願い(ちから)。あの輝きを。


「だが、これから先を選ぶのは『彼』だ。新たな生をどう生きるか。もしそれが・・・」


 そこまで口にして、ゼウスは何かに気づいたような表情をすると、微かに笑みを零した。


「いや、愚問であったな。彼が選んだ道を、そなた達は快く受け入れ、背中を押すのだろうな」


 彼以外いない部屋で、ここに居ない誰かの思いを悟ったように口にする。そんな彼の顔に既に後悔の色はない。生の輝きを改めて感じた彼には、そんなものはない。あるのは、覚悟を決めたような、迷う事などない強い意志を感じさせる、光を灯した瞳だけだった。




 ユウが目覚めて、パンドラと対面していた頃。

 ゼウスの命令によって遣わされた男は、神殿を後にし、辺り一面の雲海に浮かぶ都市に向かい、各地に存在する神々の元に赴いていた。

 その都市というのは、ゼウスが自室から眺めていた都市。木々の緑と、湖や川などの青、汚れを知らない白で統一された多くの建物がある、神界の都『神都』。

 そこにいた神々は報せを受けて、ゼウスの神殿にある、神判の間に続々と集まって来ていた。


「くあぁ・・・」


 その中に、これから向かう場所で始まる事が重要に感じないのか、怠けた声を出しながら神殿内の廊下を歩く黄髪の和装の男がいた。ただ眠気がするのか。それとも、その両方か。どちらであっても、彼の心持ちが緩いのは間違いないだろう。


「今日は、随分と気怠そうですね」


 すると、後ろから声を掛けられる。

 男が振り向くと、そこには袖丈と裾の長い着物を着て、笑顔を向けてくる黒髪の女の子、否、女性がいた。


「ん・・・?あぁ、アマちゃんか」


「『アマちゃん』・・・?」


「ごめんなさい。アマテラス様」


 アマちゃん。もとい、アマテラスと呼ばれたその女性が自身の呼び名に対して、目が一切笑っていない笑みで異議を唱える。おそらく、子供のように背格好が低いことが災いし、からかわれるのが、とても気に食わないようだ。しかし、着ている着物と彼女が放つ柔らかな雰囲気によって、大人の女性としての風格は何とか保たれている。

 だが、その女性のあまりの迫力に、和装の男の男はすぐに謝罪をした。


「まったく貴方という人は・・・。それにしても、タケミカヅチ。珍しくお早いご到着ですね?」


「まあね。ようやく気になってた『彼』をお目にかかれる訳だし。そりゃ早くも来るよ」


「それでは、先程の欠伸は?」


 そう言われ、タケミカヅチと呼ばれた男は素直に、先程まで寝ていたと話した。それを聞いたアマテラスは、まるで子供のようだと思い、小さく笑った。笑われた当人も同じように思ったのか、恥ずかしそうに笑みを零していた。

 互いの子供っぽさに、表現を綻ばせながら廊下を進んでいると、いつの間にか神判の間に着いていた。中に入ると、そこには既に他の神々が集まっており、大広間に各々当てがわれた席についていたり、周りの神達と会話をしたり、自由に過ごしながら事が始まるのを待っていた。二人も同じように席に着く。

 すると、タケミカヅチの隣の席にいた赤髪の女性が声をかけてきた。


「お!来たね、アマテラス。今日もちっこいな〜。それに、タケミカヅチも一緒か。いつもはゆっくりなのに。珍しいな」


 いきなりアマテラスに向けて爆弾を投下。恐る恐るタケミカヅチは反対側を見ると、


「こんにちは、ヘファイストス。それと、会って早々のその発言は失礼極まりないですよ?」


 ヘファイストスと呼ばれた女性に、笑顔で挨拶をするアマテラス。だが、案の定、彼女の逆鱗に触れたようだ。目が笑っていない。加えて、彼女の背中には怒りの炎が実際に燃えていた。隣で見ていたタケミカヅチは、自分ごと燃やされるのではないかと冷や汗を流していたが、当のヘファイストス本人はあっけらかんとしている。


「ごめんごめん。そんなに怒んないでよ。もう、冗談通じないなあ、アマちゃんは」


 まったく反省していない。立て続けに彼女が嫌う呼び名を口にする。彼女の笑みの深さが増し、それに比例するように炎が増す。


「ねぇ、ヘファイストス。頼むからもう刺激しないであげて?隣の僕まで燃やされちゃうから」


 そんな事をしていると、大広間の奥の方から人影が見えた。それはすぐに姿を現し、大扉の先にある壇上の席に着いた。その姿を確認すると、さっきまで焼却寸前だったアマテラスやヘファイストス、他の神々も席に着いた。


「皆、揃っているな?」


 壇上から荘厳な声が響いた瞬間、大広間の空気が一変する。先程までの和やかさなどない。ここの場にいる全ての神の視線が、壇上に向けられる。そこにいるのは、この神界を統べる神の一人。中でも、ここに集まった神々の中でも、最上位の存在。


「集まってくれたことに感謝する、神々よ。では改めて、このゼウスから、これから始める神判について話しておこう」




 ゼウスの話した内容はこうだ。

 数十分前、彼が転生させた人間が目を覚ました。その人間が、今、ここに向かっている。その人間に話せる範囲の全ての事を話し、その上で、今後をどうするか選択させるというもの。

 ゼウスが人間を救うと決めた、あの時。ここにいる誰もが驚愕し、彼を糾弾し、正気を疑った。

 何故なら、転生そのものを行うのは簡単だが、それ自体が禁忌(・・)であるからだ。加えて、その人間の魂は呪われていた(・・・・・・)。転生させたとしても、救いようがない事は分かっていたはずだ。

 だが、彼は譲らなかった。


『これは、私たちの責任であり、命の輝きを見せてくれた、私と彼等の約束なのだ』


 その時のゼウスの顔を、おそらく、この場にいる全員が覚えている。人間という小さないのちの輝きに魅せられ、一点の曇りがない表情。あの様な顔を見せられては、他の者も覚悟を決めるしかなかった。その事を、思い出している者も多いようだ。

 もう、引き返す事はできない。

 そう再確認した矢先、神判の間の大扉が開かれる。そこにいる全員が、真剣な目つきで視線を向ける。ゼウスが入れ込む人間とは、一体どんな者なのか、気になっている神も多い。タケミカヅチもその一人。

 次第に扉の隙間が大きくなる。そして、それは姿を見せた。

 そこに居たのは、一人の男。黒髪と青い瞳。その瞳には、困惑と何かを心に決めたような強い意思が宿っている。あどけなさを残しながらも、大人としての雰囲気を醸し出す顔は、緊張で強張っていた。だが、足取りはしっかりしており、ゆっくりとだが、大広間を進んでいく。

 中心にまで辿り着くと、男は立ち止まり、壇上に入るゼウスをその青い瞳で見据える。

 遂に、神界の神々と一人の人間、凰神(おおがみ)ユウによる、過去に実例のない、転生者の『運命』を決める神判が、始まる。

本編第二話終了です

次回の更新も似たような日取りになるかと。

あと、もっと会話文増やせるように頑張ります

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