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淵源の神造武装士〜アーティファクター〜  作者: 蒼乃 睦月
転生編
3/7

転生

ようやくの更新、そして本編第一話です。

お楽しみいただけたらと思います。

では、どうぞ!

 『転生』それは、死んだ人間が新たに肉体を得ることを指す。『生き返る』とはまた違うそれが、自分の身に起こったと、このパンドラという女性は口にした。


ーーは?何、転生?本当にそんなことがあり得んのか?!


 今いるこの部屋から、外に嫌でも聞こえる程大きな驚愕の声を上げたユウは、頭の中で混乱の嵐が吹いていた。高校の授業で習ったのを覚えているが、そんなのは概念だけだと思っていた。

 夢でも見ているのかと、試しに頬を強めにつねってみる。しかし、当然だとばかりに痛みを感じただけで、他は何も変わっていない。


「無理もありません。貴方の身に起こったことは、人間の常識からすれば非現実的でしょう。ですが、これは・・・」


 夢であると疑わないユウは、パンドラの話を他所に、もう一度寝れば、気がついた時には現実に戻っていると考えた。さっきまで寝ていたベッドに横になり、目を閉じる。

 数分後、再び目を開ける。だが視界に映ったのは、最初に目覚めた時と同じ白い天井。周りを見渡してみても、同じものが目に映る。試しに、また自分の体を触ってみる。やはり、何処にも穴なんて存在しない。


「・・・お分かり頂けましたか?これは夢ではありません。貴方は、生きている(・・・・・)


 信じられない。だが、冗談を言っている様には見えない。確かに、心臓は鼓動を刻んでいたのを確認した。

 しかし時に、夢は五感を伴うと聞いたことがある。なら今見ている景色も、目の前にいるパンドラという女性も、生きているという今の自分も全てが、やはり夢。

 それでも、醒めない夢があるだろうか。

 なら、あれは現実なのか。目の前に現れたあの黒い影も、体を貫かれ、流れ出る大量の血も、焼けるような痛みと、対照的に冷えていく体も。全てが本当なら、自分は死んでいるはずだ。そもそも夢を見る事はない。「目覚める」という行動自体できない。なら、今の俺は・・・


「・・・・・・」


 思考が出口の見えない迷路に迷い込んだような不安、焦り、困惑。これまで見聞きしてきたもの、感じてきたもの、自分自身の存在すら疑い、頭の中をかき乱す。それらが恐怖となり、今にも吐きそうなほどに、胸が苦しい。

 あまりの恐怖に今にも狂い出しそうになっていると、突然、左手に温もりを感じた。


「大丈夫」


 こちらの様子を察したのか、今まで真剣な面持ちだった表情を緩め、パンドラが手を優しく握っていた。

 不思議だ。初対面の筈なのに、こうされるていると、妙に落ち着く。小さい頃に、母や父に抱きかかえられた時のような安らぎを感じた。混沌としていた思考が、荒波を立てていた心が、静まっていく。


「混乱するのは仕方ありません。ですが、敢えてもう一度、言わせて下さい。貴方は、『生きている』。目覚める前に見たもの、感じたもの、今目にし、感じているもの全てが、現実なのです」


 子供をあやすような、柔らかい口調でパンドラはそう言うと、懐から何かを取り出し、握っていたユウの手に渡した。


「これ・・・」


 渡されたのは、幾つもの綺麗な蒼い石が連なったブレスレット。それを目にした瞬間に理解した。あれは夢じゃない。自分は一度死んだ。夢の物は現実には出てこない。妹から貰ったこのブレスレットが、それを物語っている。同時に、この心臓の鼓動も嘘じゃない。


 俺は、生きている。


「本当に転生したんだな、俺」


「実感、湧いてきました?」


「まぁ、まだ完全に信じられないのは変わらないけど・・・」


 両手を開いたり閉じたりしながら、心境を語る。疑わしいことに変わりないのだが、自分が飲み込見たいところは理解した。

 すると、ドアが再び開き、新たに女性が一人部屋の中に入ってきた。すぐに此方に気づくと、恭しくお辞儀をした。ここのメイドのような人なのだろうか。今まで見たことのないような丁寧な動作で、思わず見入る。


「パンドラ様、そろそろ」


「分かりました。それではユウ、行きましょうか?」


 入ってきた女性の言葉を聞いたパンドラはゆっくりと立ち上がり、ユウを何処かに連れて行こうと声をかけてきた。


「え、どこに?」


「貴方はまだ、現状を全て把握できていない。なので、それが嫌でも分かる場所に」


 たった今、目の前の現実を受けれたところだ。だというのに休む間もなく、更に現実を理解させようと笑顔で誘ってくる。なんか鬼畜じゃね、と思いながら、知りたいのは本当だった。ずっと乗っていたベッドから立ち上がろうと体を横にずらす。だが、左足を床につけたところで動きが止まる。


「あの・・・」


こちらに背を向け、外に出ようとしていたパンドラに声をかける。その声に振り返った彼女は、何か、といったような顔だった。


「服、ないっすか?」




 持ってきてもらった服を着て、部屋を出たユウ。彼は現在、先ほどの女性とパンドラの背後についていく形で廊下を歩いていた。


 ーー随分と広いな、この建物。さっきの窓から見た景色からすると、結構高いところにあるみたいだけど。しかも、雲海まで見えたし。空の上か?でもそこに建物があるってのはどうも・・・駄目だ、やめとこ。もう頭痛いわ・・・。


 部屋を出てから、正確な距離は分からないが、既にかなり歩いている。だが、一向に目的の場所に着いていない。というか、向かっている場所も漠然としか教えられていない。この場所について思考を巡らせてもかなり高所、それも空の上ということぐらいしか分からない。先程、かなりカオスな事態を受け入れるために、散々使った脳で抱える問題ではないと考え、放置する。


 ーーそれに、この空気は・・・


 部屋を出てからここまで、一言も言葉を交わしていない。只々、目の前を歩く二人の女性について行くだけ。正直、気まずくて仕方がない。この状況を少しでも変えようと、ユウが口を開く。


「あの・・・パンドラ、さん?」


「はい、何でしょうか?」


「さっきの事ですけど、俺に起こった『転生』?について聞いてもいいですか?」


 「はい。構いませんよ。あと、そう硬くならず、普段通りでいいですよ?」


 話題を切り出せたはいいが、敬語になっていたユウ。パンドラはそんな彼に、質問について答える前に、気を遣わなくていいと微笑みながら言った。


「『転生』という事象は、肉体が滅びた生あるものの『魂』が霊界へと還り、輪廻の環に従い、また新たに生を授かる。俗に言う『生まれ変わり』と同義です。しかし、貴方の場合は少し違います」


 輪廻の環。輪廻転生という言葉を思い出すが、それとは違うらしい。


「貴方の身に起きたものは、所謂『魂の救済』と呼ばれるものです」


 ーーおっと。またとんでもない単語が出てきた・・・


「『肉体』が滅びても『魂』だけは滅びない。ですが今回、貴方の魂は、ある理由(・・・・)によって輪廻の環に還る事ができなくなり、この地に住まう『神』によって救われて新たな肉体を得た。これに関しては、今向かっている場所で詳細が伝えられますので、ここまでにしておきますね」


「あーそういや、今、俺たちが向かってる場所ってどこなの?」


 パンドラに言われた通り、砕けた口調に変えて目的地がどこか質問する。ずっと気になっていたことが聞けた事に、少し安堵する。


「私たちが向かっているのは『神判の間』と呼ばれる場所です」


「『神判の間』?」


「そこで貴方は、今回起きたことの原因、経緯。その真相が伝えられます。心の準備を済ませていた方が、後にまた、混乱せずに済むかと」


 そう言われた数分後、先頭を歩いていたメイドのような女性が立ち止まった。


「こちらです」


「ユウ。ここが『神判の間』です」


 示された方向を見ると、そこには自分の身長の何倍もある巨大な扉があった。ただの扉なのに、それを見ただけで、そこから放たれる謎の重圧に押しつぶされそうになる。


 ーーここに、全部がある。


 そう思うと、いつの間にか早まっていた心臓の鼓動。緊張で息が苦しい。恐怖で手足が震える。頭のどこかにあった『知りたくない』という思いが強まる。知ってしまえば、後戻りはできない。だが、立ち止まってはいられない。『転生』という事象をこの身を以て体験している以上、この先に待つのは『人智を超えた真実』。それでも、自分は知りたい。知らなければならない。事の発端を、経緯を。あの異形のことも。その『全て』がこの先に待っている。


「・・・・・・よし」


 覚悟を決めたユウは、震える両手を扉に押し当てる。すると、最初力を入れただけで、ひとりでに開き始める。それは、これから知る事実の重さを助長するかのように、重厚な音をたてながら開かれ、中の空間にむけて足を踏み入れた。

第一話終了です。

いかがだったでしょうか?

初回投稿から5日?過ぎでかなり時間がかかりましたが、皆さんにお楽しみ頂けていたら幸いです!

それでは次回、お楽しみに!

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